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可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

2017.02.07
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第百二十七段 ~花の壺~

★☆★☆

第百二十八段

ジョンは今眠っている。こんこんと。

彼にはたっぷり睡眠が必要だ。いろいろな意味で。

シアンはこっそりとジョンの飲み物に薬を入れた。

精神安定剤の類だ。

パラノイアについても気にかかっていた。

とにかく今はノックアウトされたように深い眠りに落ちている。


もっと強烈なやつをジョーとユーリにも飲ませた。

アルコールも麻酔薬も切れる頃あいを見計らって。

あのふたりがしらふに戻り本気を出して暴れ出したら

事態はいっそう複雑になってしまう。

今だって充分に複雑で大変なのだ。

怪物たちには、当分前後不覚で寝ていてもらいたい。

シアン自身にだって睡眠は必要だったが、

彼には仕事が山のように残っていた。

シアンはドクターにねだって、特別の薬を処方してもらった。

何度も使えない薬だ。

しばらくはのんびり寝てなどいられないから、

本格的な分化に入るのをできるだけ遅らさなければならない。


彼は寝室の隣の作業部屋に籠もり

念の為に誰も入って来られないように

シアン以外はドアの開閉が出来ないようにした。

彼はロバート・スティールの贈り物を操作して

あらかじめ決めておいた時間になるのを数分待ってから

最後のキーをそっと叩いた。

ぼーっと大きな人影が現れた。

次第に鮮明さを増し、機械が繋いだ相手が誰であるか

ハッキリとさせた。。

『僕です』

実寸大でありながらも

大きなホログラムの男に向かってシアンは話しかけた。

その言葉を聞き終わらぬうちに映像は性急に両腕を伸ばして

黒いドールを抱き寄せた。

先程、ホワイトがスティールの手を握ったその場所だ。


ホワイトとシアンとの間で、作戦は立てられていて

シアンが傍の寝室でジョンとよろしくやっている間に

ホワイトはスティール相手に堅苦しい会話をしていたのだった。

シアンのヴィジョンに沿って、ふたりが長い間かけて

練りに練ったプランは佳境に入ろうとしていた。

いくつもの針の穴に糸を通すような綿密さ。

彼等は何度もシミュレートしていたが、

それでもハプニングは避けられない。

それが人生というものだ。

ユーリたちがこれから数日間大人しく眠っているとしても

別の何かが起きる可能性は多分にあった。


長い時間をかけて、父親は息子の肩を抱き続けた。

あらゆる大小の星々、あらゆる船籍の船々を巧妙に経由して、

そして刻々とその中継ポイントを変化させながら

ようやく届く電子の王子。

辿ろうとしてもいつも時間が足りない。行方知れずの息子。

シアンの頭がよすぎるのか、あるいはホワイトか、、、

ああ、ニール・ホワイトめ。

あの男はいつか消してやる。

愛し子の友人は選びたい。


『王子。おお、シアン。お父さまと呼ぶのだ、シアン。』

大男は頬を擦り寄せた。

『お父さま』

シアンは声を潜めた。子供時代の呼び方が恥ずかしかった。

どうして父上はいつまでも『お父さま』などと呼ばせるのだろうか?

だが確かにまだ生まれて十年目の自分が

親から幼子のように扱われても仕方の無いことではある。

『それにしても、何故いつも朕が髪を染めている時なのだ?』

アレクは不満を漏らした。

『その時はいつもお人ばらいをなさっておられるからですよ。』

シアンは応えた。

髪染めの時アレクは、

アズールを忍びながらの特別の時間をひとりで過ごす。

シアンは彼が一生その習慣を改めることは無いだろうことも

分かっていた。

『なぜ今日のこの時間と分かるのだ?』

さらにアレクは問うた。

シアンは笑顔になった。

『僕はネクストでした。まだそうですよ。お分かりでしょう?

特にお父さまのことは分かるのです。』

そして『それより、今日は大切なお話しがあります。』

と、きっぱりとシアンは言って、映像から離れた。

『うーむ、、』アレクは少し呻いた。

『その話し、聞きたくないぞ』彼は呟いた。

彼には何か嫌な予感がするようだった。

そして『そんなことより、いつものように証を見せるのだ、シアン。

本物のお前であるか証するのだ』と言った。

『ええ』

シアンはヘッドスカーフとゴーグルを外し、

顔のベールもとって、素顔を晒した。

左右を向いて顔の模様を見せてから腰の紐をほどき、

ローブを床にすとんと落とした。

前と後ろを向いて、身体全体の模様もくまなく見せた。

次にシアンは左脚を高く上げ足裏を向けた。

踊り子のようにバランスよいポーズでじっとした。

アレクが大時代的に大きな虫眼鏡でシアンの脚先を眺めた。

あの虫眼鏡は思い出のもの。

シアンが宮殿に迎えられたばかりの頃

そもそもはアズールのためにだったが

ドール用にしつらえられた庭園で

アレクと虫を捕って遊んだ。

子供用の顕微鏡もあったが

手っ取り早く使える虫眼鏡がシアンのお気に入りだった。

ちいさな手と大きな手。

彼等は一緒に驚きの声を上げ、一緒に笑いあった。

アレクはその時のふたりの間に通い合っていた感情を

シアンに思い出させたくてそれを使っているに違いなかった。

シアンの喉の奥に何かが現れ、彼の呼吸を苦しくさせた。

部屋の隅の暗がりでおんぼろロボットが

シアンにだけ聞こえる声でぶるるるるると切なく鳴いた。


最近アレクはシアンの身体検査にこだわるようになった。

前は声だけでシアンだと認めたのに、

いつか彼は疑うようになってきた。

おそらく、拉致したシアン型たちを見た時に恐れを抱いたのだ。

一見しただけでは彼らとシアンを見分けられない。そして

牧場から入手した資料にある登録数と、捕獲した数が

まだ一致していない。

用心深いアレクは

自分のシアンがいつか偽物と入れ変わるのではないかと

気にかけ始めたのだ。


シアンは帰ってくるつもりはないのかもしれない。

いつか偽ものを宮廷に戻し、自身は永遠に逃げ続けるのだ。

何故だ?

そんなドールが何故この世に存在するのだ。

恐るべきことに自壊すら望むセックスマシーン。

不具合だらけのドール。

シアンは不良品の最たるものだ。

アレクは理由もわからずただひたすらに

壊れた人形を愛する自分の心を恐れていた。

その上、

その自分をどう制御することもできないでいるのだ。

これほどの恐怖があるだろうか。

そもそもアズールが知能型で誕生した、

そのエラーこそが運命だった。

彼女は、冷酷非情ないくさ神の心を

いとも容易く手折った。


ますます疑り深くなった父親だが、

当然のことだとシアンは思った。

それにシアンは証を見せることは全く構わない。

アレクはシアンが小さいころからずっと

彼の身の回りの世話をしてきた。

着せ替え人形機能も、ドールの欠かせないアプリのひとつだ。

ドールは脱ぎ着を人に手伝ってもらうのが好きだ。

そして、特にそれを主人にしてもらうことが。

ドール・シアンの主である父親に身体を見られることに

何の抵抗もない。

それは愛の証。



『おお、シアン』

アレクは顔を覆って泣き声を洩らした。

『帰って来ておくれ、シアン』

父親の泣き落としには慣れている。

一顧だもせずシアンは脚を降ろし、

屈むとローブを拾い上げて羽織った。

そしてローブの前を合わせて紐を結んだ。

ここに自分専用の服は少ないがそれにはボタンがない。

ボタンは苦手だ。

ベールはしなかった。ドールの部屋では必要ない。

見た感じひどく質素ではあっても

ドールの部屋が準備されていることはアレクを安心させる。

そしてシアンのアバヤが宝石で飾られていることも、

彼の神経を安定させる材料のひとつになってはいた。

少なくとも、ホワイトは

シアンに必要なものをケチるつもりはないようだ、と。


シアンは言った。

『父上。僕は結婚します。』

彼はミルク色の霧に似てけぶる白髪を両手で後ろに払い、

堅い決意の表情を父親に見せた。

父親がべそべそ泣いて見せるのに付き合うつもりはなかった。

『シアン。何も言うな。その話しを朕は聞くつもりはない』

アレクは顔を覆った両手の指の隙間から目だけを出していた。

『僕は結婚して、ジョン・キューザックと共に宮殿に戻ります。』

シアンはそれには構わずに続けた。

『彼と契りました。

僕は分化が始まっています。

もちろん相手はジョンです』

一気に言った。

『なんということだ。』

アレクは情けないほどの狼狽を見せた。

『許さないぞ、シアン。あの男はだめだと申したはずだ』

『そうですか。そうであるなら父上の許しは要りません。

僕は宮殿には戻りませんし、父上とはもうこれ限りです』

シアンの冷たい言葉にアレクは一層涙に咽んだ。

『どうかシアン、そのような惨いことを言うでない。

朕の懐にまた戻っておくれ。"お父さま"が恋しくはないのか?』

『恋しいですとも』

シアンは率直に言った。

その言葉に嘘はない。

『僕だって直接お会いしとうございます。でも僕には伴侶が必要です。

どうかお認めください。ジョンは名にし負う特殊部隊の大尉であり

義理とはいえアンナ叔母上の息子、キューザック家の三男ですよ。

僕の伴侶として不足がありましょうか?』

『だめなのだ、あの男だけは』

アレクは情けなくも泣き声のままに叫んだ。

『あの男が、どのような男か、お前は知らないのだ。』

それを聞くとシアンは溜息とともに首を振った。

自分ほど、彼を知る者がこの世にいるだろうか?



つづく


↓次回です♪
第百二十九段 ~王と王子~


最初からお読みになりたいごキトクな方は
下記の


『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表


からどうぞ♪




モロー作




ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン William Feng 以上全部同じ人(笑)

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

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Last updated  2017.02.14 10:01:28
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