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可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

2017.04.27
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↓前回♪
第百三十五段~バグ~

★☆★☆
第百三十六段

ホワイトは叩き上げの武骨な軍人たちの中で育ってきた。

ほとんどは船の中で。

彼の両親は彼が物心つくより早くに戦死していたから

後の面倒は彼等の戦友たちがみてきた。

戦争孤児は大勢いて

子供を失った大人たちもまた大勢いたので

彼等は悲しんだり寂しがっている暇はなかった。

つまり、赤子が立って歩けるようになると皆で

寄ってたかって戦い方を教えるのだった。

おしゃぶりより先に銃を持つ。

生き方も死に方も全て兵士たちに教えられた。

ずっとホワイトは

人生とは、人の一生とはそういうものだと思っていた。

そんな彼が変わったのは

兄弟の契りを交わしていた少年ジョッシュが戦死した時からだ。

ジョッシュの性格は穏やかで繊細だった。

詩人と皆から呼ばれていた。からかわれていたのだ。

マイノリティー。

変人とも呼ばれていた。

だが可愛がられてもいた。

頭がよくて夢みがち。

戦争のない世界に行きたい、、、といつも言っていた。

そんな世界、あるはずがないね。

皆で大笑いして、彼は悲しそうにただ笑った。

そのこが死んだ。

十四歳だった。

分かっていたのに。

ジョッシュが長生きすることを誰も期待していなかった。

こんな世界で彼のような子供が

人並みに生き延びることなんて到底無理。

弱い子だったのだ。

だからこそホワイトは

彼の身内になって常に側に居るようにしていたのだ。

ちょっとの油断だった。

ホワイトは少年兵の中で抜きん出て出世が早く

その頃、少年部隊のリーダー百人を束ねる階級になったばかりだった。

彼は年上の者たちにも命令を下す立場になっていて

ストレスがかかっていた。

突然大勢の仲間たちの生命に対する責任を担わなければ

ならなくなったのだ。

彼はしゃかりきに働いていた。

そのような最中のことだ。

それが言いわけになるだろうか?

ホワイトは自分を責めた。

そして寂しかった。

ジョッシュはたったひとりの家族だったのだ。



その時からホワイトは時間を見つけては熱心に

母艦内の図書室に通うようになった。

死に物狂いで本を読み漁った。

特にジョッシュの既読マークが入っている本を。

それがすんだら政治、経済、哲学、宗教と咀嚼もできないまま

古典をただひたすら手当たり次第に読んだ。

図書室には

軍規に関するものや、戦記、英雄伝、戦略・戦術などの実用書、

船や武器のマニュアルなどと並んで

地球から誰かれが持ち出した古書のコピーが圧縮され

大量に保存されていた。

とにかくジョッシュを理解してやりたかった。

図書室の中にはいつもジョッシュが居るような気がした。

誰にも理解されずに死んだ孤独な詩人。

彼の魂を一人ぽっちにしたくなかった。

そしていつしか軍人ホワイトは変貌した。

この世のちっぽけな、

ある一面しか知らなかったのだと気がついたのだ。

狭い船の中で、生まれて戦って、そして死ぬ。

人生がそんなあっさりとした単純なものではないことを知った。

だがしかし、その思いはしばらくは秘められた。

生きることの奥深さを知ったところで

一兵卒の自分に何ができるだろう。

むしろ知るべきではなかったとさえ思えた。

そのような中、

図書室通いは続けており

古書ばかりでなく、数は少ないものの新刊も手あたり次第に

読むようになっていた。

その内には

同じような習慣を持つ高位の人間たちの目に留まるようになってきた。

その上、彼の戦績は相変わらず優秀で、

昇任試験も常にトップの成績をおさめていたので、

長老たちの雑談の席に招かれるようになるまでに

さほど時間はかからなかった。



さて、

他の軍人たちに比べれば大変な物知りとなったホワイトだったが

世界のおおかたの人間たちと同じく

彼もまたシアンに出会うまで

図書室の資料と巷の噂でしかドールを知らなかった。

彼の身近な人間には大金持ちはいなかったから。

また居たとしても多分、反政府側の人間は質実剛健を好む。

購入する者が居るとは考えられない。

ドールを所有することは贅沢の極み。

導入コストも維持コストも目玉が飛び出すと言うような

生易しい形容では全く足りないレベルだ。

そういうことで、合理主義者のホワイトは

ドールにうつつを抜かす人間は大馬鹿者だと思っていたし

彼だけでなく反政府側の誰もが

世界政府の総帥の息子がドールだという話を

奇異というより噴飯もの

軽蔑すべきこととして受け止めていた。

謂わばロボットだ。

しかもセックスのための道具。

その道具が王子なのだ。

邪悪な王にまったくもって相応しい家族ではないか。

ところがその道具がネクストとして次々に戦功を上げ始めた。

そのころから皆の認識が変わってきた。

ドールは幻視能力者なのだ。

反政府側だけではなく世界中が

ドールは確かにクローンを原型とした人造人間ではあるけれども

製造の過程でどのようないたずらな奇跡がもたらされたのか

スピリチュアルなものに変質したのだと考えるようになった。

それは何か世の中全体に向けた天変地異、

災厄の予兆だろうか、とか

彼等は人類より優れているかも知れないから

世界を乗っ取っていずれ人類を滅ぼすのだ、とか

人々はそんな根拠を持たない恐れを抱くようになってきた。

ネクストが次々と狂い始める、その少し前あたりのことだ。

ホワイトはシアンに出会った。



シアンは少年の見かけを持っていたが、その外見は

実は着ぐるみだった。

彼の脱皮を初めて手伝った時の驚きを生涯忘れることはないだろう。

これは確かに霊的なものであるに違いないと思わずには

いられなかった。

透きとおった皮膚。見たことも無い煌めく宝石のような瞳のブルー。

彼はゲンジョウ・サンゾウの転生者。

シアン・コーネリアス。

男でもあり女でもある。

幼児でもあり老人でもある。

愚者でもあり賢者でもある。

穢れたものでもあり清らかなものでもある。

このいくつもの相反する要素をオーラのように纏い持つ

青白く輝くミステリアスな存在。

現人神。


ホワイト、

ハクリュウは二千年の後ようやく自分の全てを捧げるべき相手に

再び巡り会えたのだった。


そしてまた彼にとってシアンは

ジョッシュの生まれ変わりの様でもあった。

その妖精のような佇まいをもって。



『殿下。死なないでください。』

ホワイトは心を込めて言った。

心の底からシアンが心配だった。

『何があっても』

それを聞くとシアンはくすりと小さく笑った。

そしてすぐに真顔になった。

『それは僕も言いたい。

ニール、君こそ生命を大切にしてくれ』

と言った。

ホワイトは心の中では思った。

サンゾウに比べれば自分の生命など塵にも等しい、と。

あの日、彼が我々の手から永遠に失われた。

その時の絶望を二度と味わいたくなかった。

彼に生き延びてもらいたかった。

ゲンジョウ・サンゾウには千回だって万回だって

生命を掛ける価値がある。

シアンの方も同時にやはり心の中で考えていた。

ホワイトの決心は多分堅く

彼を誰も止めることは出来ないのだろう、あの時のように。

だがあの悲劇を再び繰り返えすのは嫌だ。

この展開には何か意味があるはずだった。

こんなに重要なことなのに

何のヴィジョンもないと言うことは

ないということそのものが何かの兆なのかもしれない?

『早まらないでくれよ、ニール』

シアンは言った。

『きっと僕たちではどうにもできなくとも

定められた特別な何かがあるような気がする。

潔(いさぎ)がよすぎるのが君の欠点だ。

火星、冥王星のためにも短気を起こさないで生きて還るんだ。』

『ええ。もちろんそのつもりです。』

ホワイトは内心をおくびにも出さず応えた。

それもまた正直な気持ちだった。

シアンの役に立つためにならギリギリまで生き抜いてやる。

ただいつだって捨て駒になる覚悟は出来ていた。

火星や冥王星については、ご老人がたが何とかしてくれるだろう。

今だって政務はほとんどまかせっきりだ。

時々は必要に迫られて仕方なく、若輩者のホワイトは

大先輩たち相手に気が引けながらも指示を出し、

そして大いに感謝しながら結果を見せてもらう。

進捗状況によってはマフィアまがいのことをして手助けする。

ほのめかしやはったりで中央政府の腹黒役人たちを操るのだ。

天才ネクスト、天才ハッカーが側に居ればこそできたことではあるが。

そのシアンさえ生きていてくれれば

世界を今程度の状態には保っておけるだろう。

ジョンのサポート次第とも言えるが、きっと大丈夫のはず。



そしてふたりは話を戻した。

ホワイトは続けた。

『ですが、虎穴に入らずんば、、ですよ。

私が自分の心配をしていては物事は進んで行きませんからね。

それに、殿下がご自害なさるつもりはなくても

私の部下が手を下すおそれは充分にあると考えるのが普通でしょう。

私たちの手中にいらっしゃる限りは

陛下もめったなことはなさらないに違いない』

それを聞いてシアンは首を振った。

『そうかもしれない。

だけど、ひょっとすると父は任命式はしないで

僕と君とを交換しようと言い出すかもしれない。』

あらたな不安をシアンは口にした。

火星長官を殺すよりは生かして有効に利用する、

その可能性も高い。

ホワイトは嘆息し自嘲するような笑顔を見せた。

『もしそうなったら、殿下はジョンとすぐに逃げて下さい。』

と言った。

『君をほっといて逃げられない』

シアンは大声を出した。

ホワイトは真面目な顔つきになり冷静に言った。

『逃げるんですよ、殿下。

陛下がその条件を持ち出した時には

私はもう生きてはいません。

だからためらう必要はないのです。』

シアンは震え上がった。

『やっぱり君は死ぬつもりなんじゃないか』

唇がわなないた。

『駄目だよ、ニール。そんなことはさせられない』

シアンの記憶のスクリーンに

彼が一気に自分の首を切り落とした場面が

閃光を放つように現れた。

噴水のようにまき散らされた大量の鮮血。

その時のシアンにはなす術はなかった。

死にかけていたから。


『駄目だ、ニール。許さない』

シアンは感情のたかぶりを抑えることは出来なかった。

ホワイトは、自分がシアンの死を心配する気持ちを

今ようやく彼が真に理解したのかもしれないと、

嬉しくも無く、考えた。

『殿下がお許しにならなくとも、私は気にしません。

生命など惜しくはありません。』

『ううん。絶対に駄目だ。

全員が生き残って幸せになる。

その道は必ずあるはずだ。』

『ええ、もちろんです。

ただ、陛下は殿下を取り戻すことができれば

後は私をいつでも殺すことがおできになる。

自然死に見せかける事など容易いことでしょう。

それをくよくよ気にしていたら

これから先、私はなにもできない。』

ホワイトはあっけらかんと微笑み、椅子の背に上体をドンと

倒した。



ニールの死。そんな犠牲を払ってまで

ジョンとの正式な結婚にこだわるべきだろうか。

シアンは頭を悩ませた。

シアンのヴィジョンによれば

これからの世界にジョンが総帥に就任する要素は欠かせない。

革命ではなくジョンを玉座に座らせたい。

そして無血でこの世を変えるのだ。

だがそのためにホワイトは生贄として魔王に捧げられるのか。

もし世界のことは忘れて

シアンの個人的な望みを叶える為だけを考えれば

ホワイトを危険にさらす必要はないのに。

そして僕ら皆で長い旅に出る。

それはすごく幸せなことじゃないか。






つづく










↓次回です♪
第百三十七段~神仏の領域~




最初からお読みになりたいごキトクな方は
下記の


『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表


からどうぞ♪




ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン William Feng 以上全部同じ人(笑)

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

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Last updated  2017.05.12 17:00:30
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