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カテゴリ:樹木
☆7月18日から21日まで能登半島へ旅に出かけましたが、あちこちでクズが草木を覆っているのを見かけました。
![]() ☆クズの葉をよく見ると、光の強さに応じて葉の向きを変える調位運動をしているのを見つけました。そこで、詳しく観察してみることにしました。 ![]() ☆クズの葉は、三出複葉です。光が当たらない時は、3枚の小葉が同じ向きです。たちかわ市民交流大学の講座「散歩が楽しくなる植物観察入門」で学んだのですが、太陽の強い光を浴びると中央の小葉の向きを変えて葉を守るそうです。 ![]() ☆このクズの葉では、三出複葉の中央の小葉(頂小葉)の向きが変わり始めています。 ![]() ☆この写真では、日陰で日が当たらない右の葉は3枚の小葉が同じ向きですが、左上の葉は中央の小葉の向きが向かって左向きになっており、明らかに他の2枚の小葉(側小葉)とは向きが違っています。 ![]() ☆このクズの葉では、三出複葉の中央の小葉の向きが向かって左向きになっています。 ![]() ☆このクズの葉では、三出複葉の中央の小葉の向きが上向きになっています。 ![]() ☆このクズの葉では、三出複葉の中央の小葉の向きが右上向きです。 ![]() ☆このクズの葉では、三出複葉の中央の小葉の向きが右向きになっています。 ![]() ☆こちらのクズの葉でも、三出複葉の中央の小葉の向きが右向きになっており、他の2枚の小葉とは向きが違っています。 ![]() ☆3年前の秋に観察したクズの花です。このクズの木は日陰にあり、三出複葉の3枚の小葉は同じ向きの上向きです。(2013年9月8日撮影)。 ![]() ☆4年前の夏に観察したクズの花です。このクズの木は日向にあり、三出複葉のうちの2枚の小葉(側小葉)は太陽の方向を向いて光を浴びていますが、中央の小葉(頂小葉)の向きはこちら向きで太陽光線を避けているようです。(2012年8月27日撮影)。 ![]() ☆クズは秋の七草の一つで、日本全国の山野に生えるマメ科クズ属の多年草です。クズの花は華穂の下から上へと順に咲いていく印象深い花ですが、以上のような葉の仕組みも自然観察・植物観察の中では興味深いものです。(2013年9月8日撮影)。 ![]() ☆「葛の葉の昼寝」(『楽しい植物観察入門』、小・中学校理科教授用資料、大日本図書、21ページ)では、次のように説明されています。 ・「葛は他の植物を覆うように巻きつき、太陽の光を独り占めします。しかし、真夏の強い光が当たり過ぎると、薄い葉にダメージを受けてしまいます。そこで、三出複葉の中央の小葉を動かし光の当たる角度を調節して、葉を守っています。このような葉の状態を葛の葉の昼寝と呼んでいます。」 ☆「クズの葉の調位運動に関する研究(1)(2)」(九大演報、1997年)では、次のように報告されています。 ・「クズの葉の熱収支モデルから葉温の低下は蒸散量を低下させて水分利用効率を増大させるとともに、高温害や光合成の光阻害から葉を回避させている可能性も示唆している。」(「クズの葉の調位運動に関する研究(1)」) ・「調位運動によって高照射と高温から回避しているとは考えにくい。むしろ、調位運動を行うことによって葉温を低げ、しかも蒸散速度を低下させることによって水ストレスの発生を抑え、結果的に光合成速度の低下を防いでいると推察される。」(「クズの葉の調位運動に関する研究(2)」)
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はじめまして、私は能登半島に住む登美と申します。 2016年7月、こちらにお越しになった時の、クズの写真と解説から多く の事を教えていただきました。 私、先月(2020,10)、実家の里山散策をして、クズの葉の調位運動に 関心を持ち調べておりました。貴方様の自然観察日記を拝読し、自然へ の造詣の深さに敬服しております。 理科教授用資料や「クズの葉の調位運動に関する研究(1)(2)」(九大演報、1997年)の紹介は本当に有り難く、早速、読ませてもらいました。 ブログでの多大な記載は、これから拝読させていただきます。 私は、地元の子どもたちと自然観察をすることが好きで、今後は貴方様のブログを見させていただくことが楽しみとなりました。 まずは、自然観察日記の出会いに感謝し、お礼までと致します。 石川県七尾市在住 登美 鈴恵 (2020.11.20 14:31:52)
登美鈴恵さんへ
ご丁寧なコメントありがとうございます。 今年は、時々しか日記をアップしておりません。 しかし、過去の記事が植物図鑑的に利用できるようで、毎日5,000件を超えるアクセスがあります。 今後ともよろしくお願いいたします (2020.11.20 22:59:20) |