テーマ:最近観た映画。(38556)
カテゴリ:映画
「パリ警視庁:未成年保護部隊」(原題:Polisse)は2011年のフランスの社会派ドラマ映画です。マイウェン監督、マイウェン/エマニュエル・ベルコ共同脚本、カリン・ヴィアールらの出演で、パリ警視庁で様々な犯罪から未成年を守る未成年保護班の警官たちの姿を公私に渡ってリアルに描いています。第64回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、第37回セザール賞で作品賞をはじめとする13部門でノミネートされ、有望女優賞(ネドラ・アヤディ)と編集賞を受賞した作品です。日本では劇場未公開ですが、ソフトで視聴できます。
「パリ警視庁:未成年保護部隊」のDVD(楽天市場) 脚本:マイウェン/エマニュエル・ベルコ 出演:カリン・ヴィアール(ナディーヌ・デル、警部補、夫と離婚) ジョーイ・スタール(フレッド、熱血漢の刑事、妻子と別居中) マリーナ・フォイス(イリス・ラングロワ、警部補、ナディーヌの相棒、潔癖、摂食障害) ニコラ・デュヴォシェル(マチュー、若手刑事、プレイボーイ) カロル・ロシェール(クリス、女性刑事、マチューの相棒、他課の刑事が夫、妊娠中 ) エマニュエル・ベルコ(スー・エレン、女性刑事) フレデリック・ピエロ(バルー 、未成年保護班リーダー、部下からは「パパ」と呼ばれる) アルノー・アンリエ(バマコ、中堅刑事) ネドラ・アヤディ(ノラ、イスラム系の女性刑事) ジェレミー・エルカイム(ガブリエル、若手刑事、少々理屈っぽい) ウラディミール・ヨルダノフ(ボーシャール、バルーの上司、未成年保護班を少々軽視) アラン・アタル(マルク、ベテラン刑事、髭面、自分のヌード動画を撮った少女を尋問) マイウェン(メリッサ・ザイア、未成年保護班に同行するカメラマン、フレッドと恋仲に) リッカルド・スカマルチョ(フランチェスコ 、メリッサの双子の娘の父親、イタリア人) サンドリーヌ・キベルラン(フーブレイス夫人、夫の娘への性的虐待を告発する女性) ルー・ドワイヨン(メリッサの妹) ほか 【あらすじ】 未成年保護部隊の毎日は、児童性虐待者を連行、未成年のスリを逮捕、昼食時の男女問題の話し合い、虐待する親の尋問、子供達からの事情聴取、ティーンエイジャーの過度な性への直面、仲間との連帯の確かめ合い、考えもつかぬことに大笑いするような生活です。最悪の部分を見ながら、それとともに生きる彼らは、仕事で毎日直面する生々しい現実と私生活のバランスをどうとるのか?内務省から命を受けたカメラマン、メリッサの記録撮影に、グループの切り札、熱血漢のフレッドは苦々しい時を過ごすことになります・・・。 「パリ警視庁:未成年保護部隊」は、真実と犯罪に向けたシャープな眼差しと実力派俳優による素晴らしい演技に満ちた、ユニークでパワフルな警察官たちのフランス流の群像劇です。 未成年保護部隊が扱うのは虐待など、未成年がらみの犯罪です。麻薬犯罪の捜査など他の部署に比べて冷遇されていますが、業務は過酷で私生活とのバランスがとれず、離婚してしまう警察官も少なくありません。業務は欧米では珍しいことではないほとんど私服で行われていますが、真実と犯罪を追求する眼差しは真剣です。そしてこの映画をユニークで素晴らしいものにしているのは、すべて実際にあったものという多くのケースを扱うことにより青少年を取り囲む環境を浮かび上がらせるとともに、関わる警察官たちをいかにもフランス流に感情豊かに表現していることです。 特に圧巻は、序盤の友人を三人の男に襲わせた不良少女の警察官たちの言葉の応酬や、終盤の女性を軽く見るイスラム教の男に同じくイスラム教の女性警官が怒りをぶちまけるシーンです。これらのシーンに登場する女性警官を演じたネドラ・アヤディは、本作で第37回セザール賞有望女優賞を受賞しています。また、シリアスなシーンだけではなく、奪われた携帯電話を取り戻す為にフェ○○○をしたという少女を尋問する際に警官たちが笑いこけるというユーモラスなものもあります。少女は至って真剣なのですが、この平和なケースに笑いこける警察官たちは、彼らが普段、如何に悲惨なケースを扱っているのかも同時に暗示しています。 監督、共同脚本、出演の三役を務めたマイウェンは、フランスの女優、映画監督、脚本家で、本作が監督3作目です。女優の母を持つ彼女は、3才から子役として活動、5才で映画デビュー、以後人気子役・若手女優として活躍します。1991年にリュック・ベッソンと出会い、1女をもうけます。「レオン」(1994年)、「フィフス・エレメント」(1997年)に出演、ベッソンとの破局後はフランスに戻り女優活動を再開するとともに、映画監督や制作も手がけています。若手を中心とする笑いとエスプリを効かす流れの演劇で、才人揃い、俳優、監督、脚本家など映画界へ多く輩出する「カフェテアトル」の流れを汲む彼女は、伝統的なプロシーデュアル・ドラマに、ヴィヴィドな脚本で俳優の多様な個性を引き出すことに成功しています。 カリン・ヴィアール、マリーナ・フォイスなど実力派女優はもとより、ジョーイ・スタールやネドラ・アヤディなど、光る俳優には見せ場が与えられているのも本作の特徴です。ジョーイ・スタールはもともとラッパーなのですが、映画の為に曲を作るうちに2008年頃から出演もするようになり、セザール賞にノミネートされるなど俳優としても才能を開花しています。本作ではカメラマンのメリッサとロマンスが芽生えますが、実生活でもメリッサを演じたメイウェンとロマンスが生まれました(残念ながらその後、別れたようですが)。 本作の原題「Polisse」は一見、フランス語のようですが、実は警察はフランス語でも「Police」です。敢えてミススペルのタイトルを使用することにより、未成年を扱う映画であることを暗示しています。日本語にすると「警察」ではなく「ケーサツ」とでもいったニュアンスでしょうか?洒落たタイトルではないかと思います。 カリン・ヴィアール(ナディーヌ・デル、警部補、夫と離婚) ジョーイ・スタール(フレッド、熱血漢の刑事、妻子と別居中) マリーナ・フォイス(右、イリス・ラングロワ、警部補、ナディーヌの相棒、潔癖、摂食障害) ニコラ・デュヴォシェル(左、マチュー、若手刑事、プレイボーイ) カロル・ロシェール(左、クリス、女性刑事、マチューの相棒、他課の刑事が夫、妊娠中 )と ジェレミー・エルカイム(右、ガブリエル、若手刑事、少々理屈っぽい) エマニュエル・ベルコ(右、スー・エレン、女性刑事) フレデリック・ピエロ(バルー 、未成年保護班リーダー、部下からは「パパ」と呼ばれる) ネドラ・アヤディ(ノラ、イスラム系の女性刑事) ウラディミール・ヨルダノフ(ボーシャール、バルーの上司、未成年保護班を少々軽視) マイウェン(メリッサ・ザイア、未成年保護班に同行するカメラマン、フレッドと恋仲に) リッカルド・スカマルチョ(フランチェスコ 、メリッサの双子の娘の父親、イタリア人) メリッサが使用するライカM8 Leica M8.2 ブラック(楽天市場) 撮影地(グーグルマップ) 未成年保護部隊がある警察署 宝石強盗の取引現場(商業施設) 動画クリップ(YouTube) 怒り〜「パリ警視庁:未成年保護部隊」 笑い〜「パリ警視庁:未成年保護部隊」 警察官を描いた映画のDVD(楽天市場) 「ブリット」(1968年) 「ダーティハリー」(1971年) 「フレンチ・コネクション」(1971年) 「セルピコ」(1973年) 「ダイハード」(1988年) 「羊たちの沈黙」(1991年) 「ヒート」(1995年) 「セブン」(1995年) 「L.A.コンフィデンシャル」(1997年) 「ファーゴ」(1996年) 「ディパーテッド」(2006年) 「インサイド・マン」(2006年) 「ホットファズ」(2007年) 「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画] カテゴリの最新記事
お久しぶりです。
これはなかなか面白そうな作品ですね。 フランスの笑いはちょっとよく分かりませんが、携帯電話を取り返すためにフェ○した少女を笑うというところがフランスらしいのかなぁと思いました。 その辺は日本なら親身になって「もっと自分の事を大切にしなさい」と諭すところでしょうが、笑われた方が案外自分を大切にするようになるかもしれませんね。 バカな事をしたって恥ずかしくなりますもんね。 しかしこの重そうな作品のテーマに対して、ユーモアがあるというのは良い事だと思いますが、なぜ原題はミススペルなんですかね? ツルノカミさんも彼らの仕事は軽く見られがちと言ってますし、なんとなくそれが原題からも感じられますが、そうではなくフランス流ユーモアなのでしょうか? (2016年06月26日 14時21分15秒)
和希ちゃん8383さん
お久しぶりです。これはなかなか面白い作品ですよ。「やったーっ」と思いましたよ(笑) >この重そうな作品のテーマに対して、ユーモアがあるというのは良い事だと思いますが、なぜ原題はミススペルなんですかね? マイウェン監督の子供が書いたミススペルを題名にしたという説もあるのですが、監督はこの作品がシリアス一辺倒になるのを懸命に避けようとして、ユーモアやロマンスなど、様々な要素を盛り込んでいるんですね、見た後に、子供を大切にしようと思ってもらえればそれでいいと。なので、幼児虐待の悲惨さを訴える映画はゴメンという人も、この映画を見て面白かったと言うらしいです。軽視されているというニュアンスと裏表ではありますが、タイトルのミススペルもあまり深刻な映画と思われないような働きをしているのかもしれませんね。 (2016年06月26日 22時13分29秒) |
|