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「リトル・チルドレン」(原題: Little Children)は、2006年公開のアメリカのヒューマン・ドラマ映画です。2004年の発表されたトム・ペロッタの同名小説を原作に、トッド・フィールド監督・共同脚本、ケイト・ウィンスレット、パトリック・ウィルソンら出演で、ボストン郊外の住宅地を舞台に、大人になれない大人たちに起こる日常を描いています。第79回アカデミー賞で、主演女優賞(ケイト・ウィンスレット)、助演男優賞(ジャッキー・アール・ヘイリー)、脚色賞の三賞にノミネートされた作品です。
「リトル・チルドレン」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:トッド・フィールド 脚本:トッド・フィールド/トム・ペロッタ 出演:ケイト・ウィンスレット(サラ・ピアース) パトリック・ウィルソン(ブラッド・アダムソン) ジェニファー・コネリー(キャシー・アダムソン) ジャッキー・アール・ヘイリー(ロニー・マゴーヴィー) ノア・エメリッヒ(ラリー・ヘッジス) グレッグ・エデルマン(リチャード・ピアース) フィリス・サマーヴィル(メイ・マゴーヴィー) セイディー・ゴールドスタイン(ルーシー・ピアース) タイ・シンプキンス(アーロン・アダムソン) レイモンド・J・バリー(ブルホーン・ボブ ) メアリー・B・マッキャン(メアリー・アン) トリニ・アルヴァラード(テレサ) ジェーン・アダムス(シェイラ) サラ・バクストン(ケイ) ほか 【あらすじ】 成功したビジネスマンの夫リチャードと3歳になる娘をとともに、ボストン郊外の閑静な住宅街ウッドワード・コートに引っ越してまだ間もない主婦サラ・ピアース(ケイト・ウィンスレット)は、近所の公園でいわゆる「公園デビュー」をしますが、郊外の典型的な主婦の集団に肌が合いません。そんな主婦たちが関心を寄せ、「プロム・キング」と呼ぶ若い父親が、子供を連れて公園へやってきます。彼はブラッド・アダムソン(パトリック・ウィルソン)といい、ドキュメンタリー作家として成功した妻を持ち、司法試験合格を目指している主夫です。サラは公園の主婦たちをからかうつもりで、初対面のブラッドとハグをしてキスを交わします。ほんのイタズラのつもりが、このことをきっかけに、ふたりはお互いの存在に興味を抱きはじめます。子供をダシにして毎日のように市民プールで落ち合うようになり、ある日の午後、ついにサラの家でふたりは関係を持ってしまいます。そんな中、子供への性犯罪で服役していたロニー・マゴーヴィー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が帰ってきたことで街は騒然となっていきます。ブラッドの友人で元警官のラリー(ノア・エメリッヒ)は、ロニーを糾弾するビラを街中に貼るなど、ロニーと母親のメイ(フィリス・サマーヴィル)に対しての執拗な嫌がらせを始めますが、母親はロニーを暖かく見守り続けようとします・・・。 【レビュー・解説】 ボストン郊外の閑静な住宅街に住む、あけすけでストレートな主婦たち、社会的に成功した夫と大きな家と幼い娘に恵まれながら幸せを実感できないかつてのフェミスト、ハンサムでスポーツが得意だが司法試験を突破できない主夫とその美しい妻、心に傷を追う元警官、性衝動のコントロールに苦しむ前科者とその母に起こる出来事の悲喜劇を群像劇風に描き、人間味のある人物描写で暖かな眼差しが感じられる独特なトーンを持った秀作です。 冒頭、未成年への公然わいせつ罪で2年間服役した48歳の男が仮釈放され、地域に波紋を投げかけている様子が報道されます。続いて、カメラは公園で子どもたちを遊ばせるママ友たちの会話にカットインします。
サラ:「彼女には選択肢があった。不幸を受け入れるか、もがいて戦うか。彼女は戦いを選んだ。結局は敗れるけれど、彼女の戦いは美しく、勇ましいわ。こんな言い方をしたら教授に怒られるけれど、 独自の生き方をした彼女はフェミニストだった。夫への裏切りではない、渇望、渇望よ。別の人生への渇望、不幸な生き方への拒絶なのよ。」 と答えます。これは、幸福を感じていない現在の彼女自身を語る言葉でもあります。 一方、公園に子供を連れて現れ、ママ友たちに密かに「プロム・キング」と呼ばれる、美男子のブラッドは、無名ながらもディレクターとして成功している美しい妻の夫で、司法試験を受ける為に勉強中の主夫です。仕事を持つ妻の代わって、日中は子供のお守りをしていますが、妻が帰ると子供は妻の元に飛んで行ってしまいます。しっかり者の妻は、彼が子供に日焼け止めを塗るのを忘れたことに気づき、やりくりの為に彼が購読する雑誌をチェックし、彼が携帯電話を使用することもなかなか許してくれません。夜になるとブラッドは勉強する為に図書館に外出しますが、かつてスポーツマンだった彼は図書館に行かず、若者たちがスケートボードをするのを漫然と眺めるような生活を送っています。 他にも、誤って無実の少年を撃ってしまったことが心の傷になっている元警官、うまくコントロールできない性衝動に苦しむ前科者とその母などが登場します。一見、幸せそうな中流家庭の住宅街ですが、蓋を開けてみると、人生に渇きを覚えている人、心に傷を負う人、病的性癖に苦しむ人などが暮らしています。例え不幸だとしても、それを受け入れて周囲とうまくやっていくことが「大人」なのでしょうが、不器用でうまくやれず、「過ち」を犯してしまう人もいます。本作は、そんな「過ち」が引き起こす悲喜劇を群像劇風に描いています。原作者と監督が共同執筆した脚本を元に、全ての登場人物に人間味をもたせており、悲喜劇を描きながらも人間への暖かな眼差しが感じられる、独特のトーンを持った作品です。 一種、喜劇的な語り口も、本作の大きな魅力です。例えば、サラとその夫を食事に招待したブラッドの妻キャシーは、夫とサラの会話から浮気を確信、二人がテーブルの下で足を絡ませているのではないかと妄想し、わざとフォークを落としてテーブルの下に潜って確かめたりします。また、浮気対策として実母を呼び寄せ、お目付け役として常時、夫に貼りつかせます。いずれも現実にありそうなことでもありますが、喜劇的な語り口が秀逸です。「不幸」や「過ち」と必ずしも無縁ではない人生、いたずらにシリアスに捉えるよりも、喜劇的に捉えた方が良いのかなとさえ思わせる、ユニークな作品です。 ケイト・ウィンスレット(サラ・ピアース) ケイト・ウィンスレットは、7度のアカデミー賞ノミネート経験を持つイギリスの実力派女優で、「愛を読むひと」(2008年)で主演女優賞を受賞しています。本作では、社会的に成功した夫と大きな家と幼い娘に恵まれ、英文学の修士号と自分だけの時間と部屋を持ちながらも幸せを感じられず、典型的な主婦であるママ友たちにも馴染めず、不倫に走るサラを熱演しています。怖かったという全裸のラブシーンにも果敢に挑戦し、サラでキャラクターになりきって全編を自然に演じきっているのは、さすが大女優です。本作でも、アカデミー主演女優賞にノミネートされています。 グレッグ・エデルマン(リチャード・ピアース) グレッグ・エデルマンは、舞台、映画、テレビで活躍する、シカゴ出身のアメリカの俳優です。本作では、サラの夫で、ブランディング担当重役と社会的に成功しているが、オンラインポルノに耽る、風変わりな男を演じています。 パトリック・ウィルソン(ブラッド・アダムソン) パトリック・ウィルソンは、ヴァージニア州出身のアメリカの俳優です。本作では、「プロム・キング」とあだ名されるスポーツ好きの美男子で、しっかり者の妻とは対象的にどこかしら甘いところのあるおおらかな性格で目指す司法試験の為の勉強に身が入らない主夫、ブラッドを好演しています。 ジェニファー・コネリー(キャシー・アダムソン) ジェニファー・コネリーは、「ビューティフル・マインド」(2001年)でアカデミー助演女優賞を受賞しているアメリカの女優です。本作では、ブラッドの妻で、無名ながらもドキュメンタリーのディレクターとして成功している、美しくしっかり者のキャシーを演じています。 ノア・エメリッヒ(ラリー・ヘッジス) ノア・エメリッヒは、ニューヨーク出身のアメリカの俳優です。本作では、心に傷を負った元警官という、まさに彼のはまり役を演じています。 ジャッキー・アール・ヘイリー(ロニー・マゴーヴィー) ジャッキー・アール・ヘイリーは、ロサンゼルス出身のアメリカの俳優です。本作では、未成年への公然わいせつ罪で2年間服役し仮釈放されたアブナイ48歳の男を好演、13年のブランクをものともせず、アカデミー助演男優賞にノミネートされています。 フィリス・サマーヴィル(メイ・マゴーヴィー) フィリス・サマーヴィルは、アイオワ州出身のアメリカの女優です。舞台、映画、テレビと幅広く活躍し、本作では、公然わいせつ罪の前科を持つ息子をなんとかまともにしようとする、老いた母を好演しています。 サラとブラッドはママ友が集う公園で知り合う 二人は、子供を連れて同じプールに通うようになる 【撮影地(YouTube)】 設定はマサチューセッツ州ですが、撮影は主にニューヨーク州で行われています。
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2017年01月30日 05時00分04秒
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