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「幸せなひとりぼっち」(原題:En man som heter Ove、英題:A Man Called Ove)は、2015年公開のスウェーデンのコメディ&ドラマ映画です。フレドリック・バックマンの同名小説を原作に、ハンネス・ホルム監督・脚本、ロルフ・ラスゴード、イーダ・エングボルら出演で、愛する妻に先立たれた悲しみに暮れる偏屈で頑固な老人が、近所に越してきた隣人一家の母親が持ち込んでくる問題にうんざりしつつも、次第に心を開くようになり、やがて妻との思い出を隣人に語り始める様を描いています。第89回アカデミー賞で、外国語映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた作品です。
「幸せなひとりぼっち」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ハンネス・ホルム 脚本:ハンネス・ホルム 原作:フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」 出演:ロルフ・ラスゴード(オーヴェ、孤独で偏屈で頑固な老人) イーダ・エングヴォル(ソーニャ、オーヴェの亡き妻) バハー・パール(パルヴァネ、オーヴェの向かいの家に越して来た移民一家の母) フィリップ・バーグ(若い頃のオーヴェ) カタリナ・ラッソン(アニタ、オーヴェの古くからの隣人の妻) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 偏屈で頑固な時代錯誤的老人のラブ・ストーリーを核に、近隣の人々との関わりを絶妙なシリアス vs ユーモラスのバランスで描き、幅広い層に支持されたスウェーデンのコメディ&ドラマ映画です。 地域のコミュニティや隣人とのつきあいの中で、偏屈で頑固な時代錯誤的老人をユーモラスに描く話はよくありますが、何を隠そう、本作はそんな老人が愛する妻と一生、添い遂げるというラブ・ストーリーが核になっており、忘れていた大事なことを思い出させてくれます。さりげなく織り込まれた移民、高齢者介護、性的少数派といった社会問題に物語の深みを感じられ、シリアスになりすぎず、悪ふざけにもならないドラマとコメディのバランスが絶妙で、一種独特のリアリティを醸し出しています。老人が主人公である為、40代〜50代とその上の世代が主な観客とハンネス・ホルム監督は予想していましたが、蓋を開けてみると、主人公が若い時代の妻とのシンプルで美しいラブストリーが若い世代にも受け入れられ、幅広い層に支持されたといいます。 少子化、非婚化、離婚、不倫・・・と、人間不信、恋愛不信、結婚不信に陥りがちな昨今です。私自身もこうした風潮を、
「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年)、「グラン・トリノ」(2008年)、「ヴィンセントが教えてくれたこと」(2014年)など、偏屈で頑固な老人が登場する映画は少なくありません。彼らは決まって、若い人や子供たちに何かしら伝えたり、教えたり、残したりします。いわば、目に見えない形で命をつないでいるわけですが、これは年老いていく人間にとってひとつの希望かもしれません。ホルム監督は「もしスウェーデンの首相になったら、老人ホームと幼稚園を一緒にして触れ合う機会を増やす」などと言っていますが、本作のエンディングには粋なシーンが登場します。ところで、本作を観る人は主人公が若い頃からのラブ・ストーリーを知ることで親近感を覚えていきますが、周囲に心を開くようになるものの、偏屈で頑固な老人の性格が変わることはありません。先に挙げた映画に登場する老人たちは、若い頃にそれぞれ中東の戦争(フランスの外人部隊)や朝鮮戦争、ベトナム戦争に参加、それが物語のひとつの鍵になっています。これはちょっと面白いと思います。つまり、人はある日、突然、老人になるのではなくて、若い頃から自分の「老人」を(恐らくは無意識のうちに)作り込んでいることになります。スウェーデンは250年以上も戦争をしていない為、本作では戦争ではなく、ラブ・ストーリーが鍵になったのかもしれませんが、戦争やラブ・ストーリーに限らず、その時代、その時代を一生懸命に生きることが、将来の素敵な老人を作り上げるのかもしれませんね。 ホルム監督はコメディを得意とするスウェーデンの映画監督・脚本家で、200万部も売れた原作の映画化を持ち込まれた際、人々の間にイメージができてしまったベストセラー本の映画化は難しいと一旦は断りましたが、原作を読んでラブ・ストーリーに心を動かされ、引き受けたと言います。原作に忠実になろうとすると失敗するので、原作を離れて自分の言葉で脚本を書いたそうです。フレドリック・バックマンの原作がコメディで、主演のロルフ・ラスゴードがシリアス系の俳優な為、「コメディにシリアス系の俳優を起用するのか?」と物議を醸したそうですが、コメディ系の監督とシリアス系の俳優が調和し、良い結果をもたらしています。イーダ・エングボルが演じるソーニャは、明るくポジティブで可愛らしく、本作をキュートに締めています。主人公の向かいの家に越して来る移民一家の母を演じるバハー・パールは、実際にイランからの移民です。イランではまだ、地域のコミュニティや隣人とのつきあいが色濃く残っており、監督はそんな彼女といろいろと議論したそうですが、こうしたキャスティングがうまく本作に生かされています。原作にも登場する猫はさして重要でないと、製作会社に削るように言われたとか。ホルム監督はこだわって猫を入れましたが、彼がこだわった理由は何か、考えてみると面白いかと思います(答:猫は、主人公と周囲の関係の変化を予兆する役割を担っているようです)。 エンディングも素敵です。 <ネタバレ> 周囲に心を開くようになったのも束の間、オーヴェは心臓麻痺で亡くなってしまします。これだけだと悲しいのですが、亡くなった彼は思い出の場所で愛する妻に再会します。 オーヴェにとってソーニャは人生の全て。物語を通してオーヴェはずっとソーニャに会いたがっているので、最後は会わせてあげたかったんだ。物語をどう終わらせるか、ものすごくディスカッションしたけど、原作とはまた違う結末を用意できたし、素晴らしいラストになったと思うよ。(ハンネス・ホルム監督)主人公が亡くなるのにハッピー・エンド?と感じさせるほど、素晴らしい演出がエンディングに待ち受けています。 <ネタバレ終わり> 父から初めての愛車を譲り受けて以来、オーヴェの愛車はスウェーデンの名車サーブ Saab 92 のミニカー (楽天市場) ロルフ・ラスゴード(オーヴェ、孤独で偏屈で頑固な老人) ロルフ・ラスゴード(1955年〜)は、スウェーデンの俳優。マルメ演劇アカデミーにて演技を学んだ後、劇団に参加、シェイクスピア劇に出演して評価される。その後、自身で劇団を設立、舞台俳優としてキャリアを重ねる。1990年代初頭に映画デビュー、第72回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた「太陽の誘い」(1998年)などに出演。スザネ・ビア監督の「アフター・ウェディング」(2006年)にも出演している。 イーダ・エングヴォル(ソーニャ、オーヴェの亡き妻) イーダ・エングヴォル(1985年〜)はスウェーデンの女優。2009年に女優としてデビュー、テレビや舞台で活躍するとともに、15本以上の映画に出演する実力派。 バハー・パール(パルヴァネ、オーヴェの向かいの家に越して来た移民一家の母親) バハー・パール(1979年〜)は、イラン出身のスウェーデンの女優。10歳の時にスウェーデンに移住、28歳で女優として本格的にデビュー、舞台と映画で活躍している。近年では、映画監督としても活躍、テレビ番組の脚本も書いている。 フィリップ・バーグ(若い頃のオーべ) フィリップ・バーグ(1986年〜)は、スウェーデンの俳優。 【撮影地(グーグルマップ)】
「幸せなひとりぼっち」のDVD(楽天市場) 【関連作品】 幸せなひとりぼっちの原作本(楽天市場) フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」 ロルフ・ラスゴード出演作品のDVD(楽天市場) 「アフター・ウェディング」(2006年) 老人と若い世代の関わりを描いた映画のDVD(楽天市場) 「アバウト・シュミット」(2002年) 「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年) 「グラン・トリノ」(2008年) 「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009年) 「ヴィンセントが教えてくれたこと」(2014年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年08月20日 05時00分06秒
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