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「はじまりへの旅」(原題:Captain Fantastic)は、2016年のアメリカのコメディ&ヒューマン・ドラマ映画です。 マット・ロス監督・脚本、ヴィゴ・モーテンセンら出演で、アメリカ北西部の山奥で自給自足の暮らしをする一家が、母親の死を弔うため、2400キロ離れたニューメキシコを目指す旅を描いています。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞、第89回アカデミー賞で主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)にノミネートされた作品です。
「はじまりへの旅」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:マット・ロス 脚本:マット・ロス 出演:ヴィゴ・モーテンセン(ベン・キャッシュ) ジョージ・マッケイ(ボゥドヴァン「ボゥ」キャッシュ) サマンサ・アイラー(キーラー・キャッシュ) アナリース・バッソ(ヴェスパー・キャッシュ) ニコラス・ハミルトン(レリアン・キャッシュ) シュリー・クルックス(ザジャ・キャッシュ) チャーリー・ショットウェル(ナイ・キャッシュ) キャスリン・ハーン(ハーパー) トリン・ミラー(レスリー・アビゲイル・キャッシュ) スティーヴ・ザーン(デイブ) イライジャ・スティーブンソン(ジャスティン) テディ・ヴァン・イー(ジャクソン) エリン・モリアーティ(クレア) ミッシー・パイル(エレン) フランク・ランジェラ(ジャック) アン・ダウド(アビゲイル) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 アメリカ北西部の美しい大自然とワイルドなライフスタイル、示唆に富んだテーマ、ヴィゴ・モーテンセンと子役たちのコミカルなパフォーマンスを通じて、知的な触発と笑いと感動がツボにはまる、愉快なヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。 ワイルドなライフスタイルとホーム・スクーリング ワシントン州立大学が保護しているアメリカ北西部の森林で撮影されていますが、取り巻く大自然が美しく、その中で暮らすキャッシュ一家の自給自足のワイルドなライフスタイルが魅力的です。実は、母親が1980年代のオレゴン州で小規模なコミューン(共同生活体)を始めたことから、マット・ロス監督自身も一番近い民家まで90分もかかるような人里離れた森の奥深くで暮らしていました。ここで描かれているライフスタイルは、そんな彼の経験を反映した、リアルでヴィヴィッドなものです。 大自然の中でワイルドな生活を送るキャッシュ一家 主人公のベンは、自らの哲学に従い子供たちを自分で教育していますが、アメリカではそういう人たちが少なからずおり、必ずしも非現実的なキャラクターではありません。日本では学校教育法の規定により、義務教育を家庭で行うことが認められていませんが、米国では学校に通学せず、家庭に拠点を置いて学習することが認められています。一般に、家庭で教育を行う理由には、
自分がなりたい父親を描いたファンタジー アメリカの子どもたちは、多くの場合、大学進学を機に親元を離れていきます。子供と過ごす時間が、とても短いことに気づいたマット・ロス監督は、自分がどんな父親になりたいのか、どんな子育てをしたいのかを考え、ちゃんと子供と向き合える、きちんと「存在する」父親でありたいと思うようになりました。これが、この作品を作るきっかけになったと言います。 「はじまりへの旅」は、アメリカのライフスタイルや子育て、親であることなど、多くのことを描いていますが、その核となるのは我々の選択とそれが周囲に与える影響についてです。この作品は私が書いた中で最も私的な作品です。私には二人の子供がいますが、彼らが生まれるまでこれほど深く他の人間を愛することができることを知りませんでした。ロマンティックな愛、兄弟愛、親族への愛、親への愛、友人への愛は知っていました。でも、私自身が子供を持つまで、これほど深い、無私の、深遠な愛を知らなかったのです。本作の原題は「Captain Fantastic」ですが、そこには子供たちの人生を父親が船長として案内するという、マット・ロス監督の夢が込めらていることがわかります。 見事にコメディを演じたヴィゴ・モーテンセン ヴィゴ・モーテンセンというと、
ヴィゴはベン・キャッシュ役の第一選択で、私と一緒に泥の中で映画を作ることに彼が合意してくれたのは、私には過分の幸運でした。表面的なことはさておき、彼は相応の年齢で、例えば実直さ、知性、感情表現を兼ね備えた稀な俳優です。彼は並々ならぬ知性を持ち、読書家で、生来の多才な芸術家(写真家、詩人、画家、作家)です。そんな芸術家としての能力を持つ彼と一緒に仕事をしたいと、私は思っていました。もちろん、彼は自身の解釈で役を演じますが、そこには彼のテイスト、ウィット、魂、深遠な職業倫理、感受性といったものがにじみ出て来るのです。(マット・ロス監督) 子役のパフォーマンスを引き出し方 ベンには6人の子供がいて、この子供たちのコミカルな言動が本作の大きな面白さになっています。演技経験の乏しい子供もいる中、この6人をフレームの中に収めて撮影していくのは大変なことですが、マット・ロス監督はヴィゴとキャッシュ家の子供たちを演じる子役を集めて、撮影の何週間も前からワシントン州でブートキャンプをやり、また、火の起こし方、動物の捕まえ方、寝るためのシェルターの作り方といったサバイバル術など、映画の中で彼らにやってもらうことを事前に体験させました。子役の出演契約の中には、撮影期間は砂糖とジャンクフードを採らないという一項もあったようですが、彼らはこのワイルドな体験をこの上なく楽しんだようです。 舞台劇の原稿をplay(戯曲)と言いますが、これは明らかに動詞の play(遊ぶ)から来たものです。子供たちは遊びにやってくるのです。本当に遊ぶのです。彼らはこれをキャリアだとか、仕事だとか、重要な何かとは考えていません。彼らはやって来て、話を聞いて、その場で起こっていることや、他の人達がやっていることを一緒にやるのです。ですから、(彼らを演出することは)多くの人が考えるよりは、ずっと簡単です。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのアラゴルン役のヴィゴ・モーテンセンを子供たちがよく知っていたことも、ヴィゴが子供たちを惹きつける理由のひとつだったのではないかと思います。なお、大人は血糖値の低下など体調の変化を自覚しますが、子供は気がづかない為、突然体調を崩したりすることもあったそうで、演技指導より子供たちの体調管理が大変だったそうです。 アメリカの文化や子育てへのマット・ロス監督の強い思い、アメリカ北西部の美しい大自然とワイルドなライフスタイル、ヴィゴ・モーテンセンと子役たちのコミカルなパフォーマンスに恵まれて素晴らしい作品となった本作ですが、実は本作には独自の5つのチャレンジがあったと言います。
ヴィゴ・モーテンセン(ベン・キャッシュ) ヴィゴ・モーテンセン(1958年〜)は、マンハッタン出身の俳優、詩人、写真家。「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(2001年〜2003年)のアラゴルン役で世界的な名声を得、「イースタン・プロミス」(2008年)と本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。日本版ではぼかしが入るが、いずれもフルヌードのシーンがある。本人の入れ込み様を反映していると言えるかもしれない。 左から、シュリー・クルックス(ザジャ・キャッシュ) チャーリー・ショットウェル(ナイ・キャッシュ) ジョージ・マッケイ(ボゥドヴァン「ボゥ」キャッシュ) ニコラス・ハミルトン(レリアン・キャッシュ) サマンサ・アイラー(キーラー・キャッシュ) アナリース・バッソ(ヴェスパー・キャッシュ) トリン・ミラー(レスリー・キャッシュ) エリン・モリアーティ(クレア) エリン・モリアーティ(1994年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの女優。テレビドラマシリーズに出演する他、「キングス・オブ・サマー」(2013年)、「ブラッド・ファーザー」(2016年)などの映画に出演している。 キャスリン・ハーン(左、ハーパー)とスティーヴ・ザーン(右、デイブ) キャスリン・ハーン(1973年〜)は、イリノイ州出身のアメリカの女優。「10日間で男を上手にフル方法」(2003年)、「俺たちニュースキャスター」(2004年)などに出演している。役柄と同じ二児の母親でもあり、キャッシュ一家を迎えてのディナーシーンはなかなかの名演である。 スティーヴ・ザーン(1967年〜)は、ミネソタ州出身のアメリカのコメディアン、俳優。「リアリティ・バイツ」(1994年)で映画デビュー、「すべてをあなたに」(1996年)、「ニュースの天才」(2003年)、「戦場からの脱出」(2007年)、「ダラス・バイヤーズクラブ」(2013年)、「猿の惑星: 聖戦記」(2017年)などに出演しています。 フランク・ランジェラ(ジャック)とアン・ダウド(アビゲイル) フランク・ランジェラ(1938年〜)は、ニュージャージー州出身のアメリカの舞台・映画俳優。大学卒業後から舞台に立ち、1975年の舞台「海の風景」を皮切りに、これまでに4度トニー賞を受賞している。映画では、「デーヴ」(1993年)、「グッドナイト&グッドラック」(2005年)、「フロスト×ニクソン」(2008年)、「素敵な相棒 〜フランクじいさんとロボットヘルパー〜」(2012年)、「オール・ザ・ウェイ JFKを継いだ男」(2016年)などに出演、「フロスト×ニクソン」でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。本作の出演時間は限られるが、非常に説得力のある演技を見せている。 アン・ダウド(1956年〜)は、マサチューセッツ州出身のアメリカの女優。「ロレンツォのオイル」(1992年)、「終わりで始まりの4日間」(2004年)、「クライシス・オブ・アメリカ」(2004年)、「コンプライアンス 服従の心理」(2012年)、「サイド・エフェクト」(2013年)などに出演、助演を務めることが多い。「コンプライアンス 服従の心理」で演じたマクドナルドの責任者が強く印象に残っているが、どこにでもいるような普通の人を、存在感たっぷりに、印象深く演ずることができる女優で、本作でも短い出演時間でレスリーの母のキャラクターを見事に印象づけている。
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【撮影地(グーグルマップ)】
「はじまりへの旅」のDVD(楽天市場) 【関連作品】 ヴィゴ・モーテンセン出演作品のDVD(楽天市場) 「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(2001年〜2003年) 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005年) 「イースタン・プロミス」(2007年) 「ギリシャに消えた嘘」(2014年) 「約束の地」(2014年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018年03月19日 00時00分22秒
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