・詩歌&格言5
ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志(こころざし)にすぎなかった 駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 『茨木のり子さんの詩』 全編 八百屋お七が火をつけた お小姓吉三に逢ひたさに われとわが家に火をつけた あれは大事な気持です 忘れてならない気持です = 堀口大学「お七の火」 = 2006 7・15 汚れつちまつた悲しみに 中原中也 汚れつちまつた悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる 汚れつちまつた悲しみは たとへば狐の皮裘 汚れつちまつた悲しみは 小雪のかかつてちぢこまる 汚れつちまつた悲しみは なにのぞむなくねがふなく 汚れつちまつた悲しみは 倦怠のうちに死を夢む 汚れつちまつた悲しみに いたいたしくも怖気づき 汚れつちまつた悲しみに なすところなく日は暮れる・・・・・ 河上徹太郎編「中原中也詩集」より 2011・1・20 1・22
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