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今夜の私は幸せです。
主人といいことがあったとか、彼と会ったわけではありません。 彼からは夕方くだらないメールが来たので、それはそれで嬉しかったのですが、それ以上に嬉しいメールが夜、届いたのです。 この彼は、私が婚約中に婚約を破棄してでも一緒にいたかった人です。 当時私は留学中でした。 彼は、その当時失業中で、失業保険だけで生活していました。 彼は、私が初めて出会った、精神的な成熟度のきわめて高い人でした。 彼に出会って、私の世界観が変わりました。 彼は、フランス語の教師を目指していました。 彼のフランス語は、フランス人が聞いてもフランス人と間違うほど完璧でした。 彼は、私がリクエストすると、フランス語の詩を朗読してくれました。 意味はよくわからないけれど、それはそれは美しい響きでした。 彼は、言葉を愛していました。 彼は、大勢の中にいるときにはまったくわかりませんでしたが、とても繊細な人でした。 女心がよくわかるせいか、女友達が非常に多い人でした。 今でも、見つめていると本当に吸い込まれてしまいそうな彼の深い瞳のことをよく覚えています。 あるとき、彼のポンコツ車で、彼の両親が持つ田舎家に連れて行ってもらいました。 その家の屋根裏で、彼が子供のときに読んでいた本を見せてくれました。 その後、彼が私にくれた、少年少女向きの短編集数冊のそれぞれの中表紙には、丁寧に彼のフルネームと本の取得年月日が記入してありました。 私は、今でもその本を大切に持っています。 彼にダンスをしよう、と言われたとき、私は踊ることがめちゃめちゃ苦手なので、すごく躊躇しましたが、気がついたら自分では信じられないくらい自然に踊っていました。 よく一緒に歌を歌いました。 私の誕生日には、二人で飲みに行って私が死ぬほど飲んで酔っ払い、彼は通りのベンチで一晩中私の横に座っていてくれました。 あるとき、私は自分が婚約中であることを告げました。 それでもしばらくは楽しい日々を一緒に過ごしましたが、ある日、突然、私が彼の友人の家に遊びに行ったとき、彼が翌日から遠くへ行ってしまうことを知らされました。 突然、仕事が見つかったと聞きました。 私には、彼とさよならをする機会すら与えられませんでした。 しばらくして、彼が里帰りをしたとき、突然電話がかかってきたので、1時間ぐらい会いました。 たわいもない話をして別れました。 それが、私が彼に会った最後の日でした。 私は手紙に自分の日本の連絡先を書いて送りましたが、連絡は一度もありませんでした。 それから時が過ぎ、結婚していた私が大恋愛をして勝手に離婚を決意し、両親にその話をしに行ったとき、実家に一通の手紙が届いていました。 彼からでした。 その手紙の中で、初めて、彼が私のことを好きだったと知りました。 でも、私に婚約者を捨てさせてまで、自分の責任を果たす自信がなかった、と書いてありました。 そして、衝撃的な事実。 彼は、今、人生のパートナーに出会い、やっと心身ともに安定して幸せになったと。 彼は、人生のパートナーに男性を選んでいました。 その手紙に彼は自分の連絡先を記入してきて、私が望むときにはいつでも連絡してくれ、と言ってきました。 両親に離婚を反対され、思いとどまったものの身も心もぼろぼろだった私は、それから何度となく彼に連絡を試みましたが、返事はありませんでした。 ある年、一度だけメールが届きました。 返信したけれど、やっぱり返事はありませんでした。 昨年末、彼とパートナーが友人全員に宛てたクリスマスメールが届きました。 楽しそうな二人の写真付でした。 返信メールを送りましたが、やはり返事はありませんでした。 そして今日、彼からメールが届きました。 これまでにまるで何事もなかったかのような口調で、私がどうしているのか、知らせてほしい、と書いてありました。 今日のところは当たり障りのない自分の年譜のようなものを送っておきました。 彼のことももっと知らせてくれるようにと書いておきました。 返事がいつ来るのかこないのか、それはまたわかりません。 でも、今夜はなんだかとても嬉しくなってしまいました。 彼は、私が今までの人生の中で知り合えてよかった、と思う人物ベスト3に間違いなく入る人です。 これからまだまだ長い人生の間に、たとえもう二度と会うことがなくても、ずっとかかわっていきたい。 ************** 今晩夫が急に夕食をキャンセルして仕事仲間と外食に行ってしまったことを彼に愚痴っておいたら、その返事のメールが来ました。 家に食事の用意されていない彼は、空腹で一人でご飯を食べて帰ろうとしているところでした。 「ご馳走になりに行こうかな」と言ってみた後で、「しかしそう想像すると「間男」という言葉以上に的確な表現はないね。 かように需要と供給はかみ合わないものである。」だって。 あまりにおかしくて、一人で大笑いしてしまいました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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