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人生には「もっと凄いこと」がいつも待ち受けているものだ。あの『アリー my ラブ』第4シーズン最終話で役者デビューを飾ったティーンのテナー歌手、ジョシュ・グローバンにはこれ以上の凄いことは当分おこらなさそうではあるが…。 彼が演じたのは、例によってロマンス運の悪いアリーを高校のダンスパーティに誘うさえない高校生の依頼人役で、ドラマではこのデビューアルバムに収録されている「You're Still You」をあの美しい歌声で本業さながらに披露し、パーティ会場にいた全員の心をぐっと惹きつけるというストーリーになっていた。この曲はエンリオ・モリコーネの手による、アカデミー賞ノミネートの『マレーナ』の楽曲からとったもので、リンダ・トンプソンが詞をつけている。 このすばらしい才能の持ち主は若干17歳にして、ベテランプロデューサーであり作曲家でもあるデビッド・フォスターに見出され、1999年のグラミー賞リハーサルでアンドレア・ボチェッリの代役として舞台に立ち、たちまちセリーヌ・ディオンとデュエットする栄誉を得た。その後プロとしての活動(このアルバムの制作も含めて)の比重が増えてきたとき、この歳若いフォスターの弟子が名門カーネギー・メロン大学を中退したのも当然の成り行きだったのだ。 このアルバムで、フォスターのイージーリスニング路線とはちょっと趣を異にするところがあるとすれば、それはグローバンの才能と、情感あふれる成熟した歌声への潜在性がはっきりと表れているところだと言えるだろう。たとえば、情緒的に歌い上げたモリコーネのもうひとつの代表作である「Cinema Paradiso」(「ニュー・シネマ・パラダイス」)、哀愁を込めて解釈したドン・マクリーンの「Starry, Starry Night」とアルバート・ハモンドの「Alejate」、見事に劇的な変化をつけたナポリ楽派の曲「Alla Luca Del Sole」と「Canto Alla Vita」などを聴けばわかるように。ちなみに「Canto Alla Vita」ではザ・コアーズをフィーチャーしている。ネオ・プログレロックオペラ調に歌ったバッハの「Jesu, Joy of Man's Desiring」(リリ・ハイドンと共演)も含めて、このアルバムではグローバンのパフォーマンスの多くが、従来の音楽的構造の枠を超えて、より大きくかつ大胆になっているようだ。ということはつまり、グランドオペラもかなり視野に入れているということではないだろうか。はじめに言ったように、人生にはもっと凄いことがいつも待っているのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年02月11日 15時13分34秒
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