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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
売春禁止法成立の直前の特飲店・夢の里を舞台に、多彩な登場人物が織り成す人間絵巻。溝口監督の遺作。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 女性を描いた作品が多い溝口監督。 次作を構想中に骨髄性白血病に倒れ、こちらが遺作となってしまいました。 それぞれの理由で遊郭で働く女性たちの人間模様を、売春禁止法成立に揺れる時代を背景にして描いた秀作。 赤線地帯とは、警察が立ち入るときに使った地図上に赤く引かれた線のこと。その地区を差すそうです。 ジェンダーについて考えさせられる今の時代では、受け止める側も痛い気持ちになりますが、努めて明るく振舞う半ば諦めた彼女たちの毎日を見ていると、同情ではない思いも湧いてきます。 結核の夫と幼子を抱え我身一つで生計を立てるハナエ(木暮実千代)、客を騙して金を溜め込むヤスミ(若尾文子)、田舎にいる息子を女手ひとつで育てるゆめ子(三益愛子)・・・ ミッキー(京マチ子)は不貞を働いてきた父親への反抗心から、迎えに来た父親を追い返してここに留まることを決めたのでした。 擦れていようと惨めだろうと辛かろうと、生きるためにはどうしようもない…とにかく暮らしがかかっています。 それでも、一度身を固めると決めて夜逃げした仲間が、結局はこの仕事に戻ってきてしまうあたり、国が救いの手を差し伸べてくれるわけではない辛い時代背景を感じずにいれません。 そこで、彼女たちの雇い主が、ここぞとばかり、 「お前たちを救えるのは私だけだ。政治の手が行き届かないところを私が補っているのだ」 そう高々と述べるシーンは印象に残ります。 結局は物としてしか見ていないことが窺えるシーンでもありました。 彼女たちの意思でここにいる。 ここで働かねば生きていけないからここにいる。 でも、そればかりでもないことが分かってくると複雑・・・ 客を騙し金を溜め込み、遂には殺されかけるヤスミとか、反抗心から留まるミッキーとか、自分の生き方としてしゃっきりと生きてる姿も印象に残りました。 本作の音楽では特徴ある電子音が使われています。 それがかなり不評らしく、いざ聴いてみると「!」という感じ。 どうしたかと思うくらい突然で、映画の雰囲気にも似合っていないのですが、これが懲りずに何度も投入されています。 もったいないといえばそうですが、作品自体がとてもよかったので、最終的に気にならなくはなりました。 知らぬ間に上京していた愛する一人息子から、 「もう会いません!汚い!」 そう言い放たれ、遂に発狂してしまう・ゆめ子。 演じた三益愛子さんの演技も素晴らしかったです。 この頃の銀幕女優たちの圧倒されるような存在感に酔うのも醍醐味なのかもしれませんね。 若尾文子、京マチ子の両者は今観てもとても美しいです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 溝口健二 製作 永田雅一 原作 芝木好子 脚本 成沢昌茂 音楽 黛敏郎 出演 京マチ子 、若尾文子 、木暮実千代 三益愛子 、町田博子 、川上康子 モノクロ(86分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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この映画は未見です。
また感想を読んで観たくなりました。 ところで全く個人的な意見ですが、俺的にはキャバクラとかで働く女性より、ソープで働く女性のほうが心情的に好きです。全力で生きている感じがします。 レオ (2007.01.04 19:44:33)
わかるわかる、この頃の俳優さんってほんと綺麗ですよね
赤線悲しいですよね~現代は生きるためだけに働いてる人は少ないですもんね こういうのもしっかり見るオコジョーさんはすごいですよぉ~~偉いなぁ~ (2007.01.04 20:26:32)
巨匠溝口もこんな映画撮ってたんですね。
昔の日本の俳優は、男は軍人が、女は遊女が似合うと言われたものです。 「幕末太陽伝」のように結構好印象を抱くものもあるし、「あゝ野麦峠」みたく悲惨な映画は見たくないし(もっともこれは遊女とは関係ありませんが。虐げられる女性という点では一致してるかな)、ちょっと興味を魅かれる映画です。 (2007.01.04 21:58:48)
こんばんは。
>これってDVDあるんかな? 上の写真DVDボックス2に収録されているみたいです。 >キャバクラとかで働く女性より、ソープで働く女性のほうが心情的に好きです そうですね。 でもキャバクラって微妙に職種が分からないかも。 (2007.01.04 22:39:05)
こんばんは。
>現代は生きるためだけに働いてる人は少ないですもんね そう思います。 古い映画は余計に説得力があったりするのはそのせいもあるんでしょうか。 女優さんも素敵な方ばかりで見ごたえあるドラマでした。 (2007.01.04 22:44:24)
こんばんは。
>巨匠溝口もこんな映画撮ってたんですね。 撮ってたんですね~ もし長生きされていたら、もう少しは身近な監督になっていたのかも知れないと思うと残念です。 「幕末太陽伝」「あゝ野麦峠」 どちらも観たことありませんが、虐げられる女性があたり前のように出てくることで時代を意識したり考えたりしますね~ 「現在では表現内容が不適切な部分がありますが…ご了承ください…」というテロップ、最近よく観ている気がします。 (2007.01.04 22:49:14)
溝口監督の遺作であり、名作なのですが、意外に知られていないのですね。やはりテ-マ性が原因かも?小生は
流石に赤線の時代は知りませんので、その風俗そのものに興味は引かれました。ただ、溝口監督は赤線を通じて当時の日本の社会の縮図を描いたというのがオ-ソドックスな評論なのでしょうが、小生は赤線に生きる女性の逞しさが特に印象に残りました。 (2007.01.06 00:41:05)
こんにちは。
>赤線に生きる女性の逞しさ そうですね。わたしも感じました。 ミッキーや若尾さんのヤスミ。 そして意外にもぽきりと折れてしまった三益さんのゆめ子が印象深いです。 (2007.01.06 08:46:05) |