2016/01/14(木)21:34
【ツォツィ(TSOTSI)】 2005年 無垢な魂がくれたもの
南アフリカのスラム街で暴力と犯罪にまみれた無軌道な人生を送る一人の黒人青年が、思いがけず生まれたばかりの赤ん坊を拾ってしまったことで、人間的な感情に目覚めていく姿を、南アフリカの過酷な現状と共に力強く描き出していく―――。
アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品。今回偶然観るまで存在の知らない作品だった。
感想はまずまず、可もなく不可もなく。映画製作の歴史の浅い国は、ぎこちない作品になっても、味や個性があっていい。だからこそ、無意識にでも模倣を感じてしまうと、素直に評価できなくなってしまうときがある。本作もそんな作品のひとつだった。
ツォツィには過去にトラウマがある。病身の母と、暴力を振るう父親の三人で暮らしていた家から、ある日飛び出したきり戻らなかったのだ。空き地の土管の中で大きくなった彼は、以後犯罪を繰り返し生きてきた。
ある時、高級住宅街で銃を発砲し自動車を強盗したツォツィは、直後に後部座席に赤ん坊が乗っていることに気づく。なぜか、捨てておけない気持ちに襲われた彼は、赤ん坊を紙袋に入れて連れ帰るのだった。
赤ん坊を育て始めるなんて、自分自身さえ理解できない感情で、ひどくとまどいながらも・・・。
これが更正のきっかけとなるのは、安直でありきたりといえるのかもしれないけど、丁寧に綴られていく。
赤ん坊と過ごした数日は、怪我をさせた赤ん坊の母親のことを考え、心痛める父親のことを考え、今まで犯したすべての罪をも考える。
赤ん坊の家に仲間と再び押し入って、その気持ちを確かめるような行動に出る姿が印象的だった。
綺麗事では終わらせず、心に響かせるには、なにが必要なんだろう。
私はこの作品をありがちなものとしか評価できなかった。受賞暦を知っても同じ。
必要なのは心に切り込んでくるなにか、なんだとおもうけれど。
ツォツィの仲間や、赤ん坊を通じて知り合う女性など、脇役の存在は良かった。ほとんどが素人の役者さん。オーソドックスな演技に安心して観られた。
監督・脚本 ギャヴィン・フッド
原作 アソル・フガード 『ツォツィ』
音楽 マーク・キリアン ポール・ヘプカー
出演 プレスリー・チュエニヤハエ テリー・フェト ケネス・ンコースィ
(カラー/95分/南アフリカ=イギリス)