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行きかふ人も又

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2008.10.13
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 1956年に発表された、三島由紀夫の代表作。
日本近代文学の最高傑作だそう。
1950年に実際に起こった事件を題材に、三島由紀夫なりの解釈で、主人公の大学生、溝口に金閣寺に放火するにいたるまでの胸中を語らせていく物語。
人間観察の鋭さや、文章の流暢さに感嘆しながら興味深く読んだ。直感どおりとても好みな作品だった。

父親が死に、溝口は同寺の僧侶見習いになった。みすぼらしくなった母は、彼の将来に過度の期待をかける。
幼い頃から、父に金閣寺の美しさを聴かされて育った彼は、すべての美の対照を金閣寺へと求めた。
吃音で人とうまく話せないまま、美に対する疎外感を、成長と共に一層強めていく彼は、ある時から、金閣寺を燃やす想念に至るのだ―――。
その心の葛藤と行動を、緻密に丹念に描いた見事な作品だった。


吃音が及ぼす主人公の人格の歪みを描いた部分が素晴らしい。
吃音症の登場する作品は、感情をストレートに投げつけられない苦しみを、違った形で想像させてくれる。
誰でも相手の反応を窺い、言葉を言い留めるときがあるように、同じもどかしさは様々な形で会話の周りにもあるもの。彼の苦しさは理解できる。
主人公の重ねていく屈折と苦悩の数々も、自分とかけ離れたところにはなくて、どれも一歩間違えれば先に見えてくる、分かれ道の一端のようでこわい。
主人公が持っている悪に対する考えは『罪と罰』で主人公が抱いたものと似ていた。

悩みなどないような爽やかな鶴川、内反足の柏木といった友人たちが、とても印象に残る。
とくに足の不自由な柏木が、斜めに構えて掴んだ、生の真理や善悪や愛や認識についての答えは、否応無く読んでいる自分にも影響を及ぼしてくるみたい。
どの答えも、柏木に語らせた作家自身の言葉。
わかってはいたはずなんだけど、忘れていたようなそれらの言葉は、古風であってもそれこそ真実と思えるものばかりだった。

犯人(林承賢)への共感がなければこの小説はなかったのだろうな。甘美というのとは違うけれど、丹念な言葉の積み重ねが美しい
人間の感情がどう動くのか、知り尽くしたような三島作品は、想像していたとおり好み。
この抉られる感じは、ここ数ヶ月、映画でも小説でも遠ざかっていた、規則的に体感していたい種類のものだった。







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Last updated  2009.10.23 20:04:05
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