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カテゴリ:フランス映画
瑞々しくて、情感たっぷりな素敵な作品。 サイゴンを舞台に、ある資産家の家に奉公人としてやってきた10歳の少女ムイ。 彼女の目に映る一家の暮らしぶりと、柔らかな視線に止まる生き物や自然を、詩情豊かに綴った、言葉少なな物語。 優しい女主人と根無し草の旦那さん、三人の息子たち、そして孫娘を失って以来二階にこもりっきりのお婆さん。 そんな、どこか壊れた資産家の家庭で忙しく働くムイは、それでもまっすぐな心と、優しい眼差しを絶やさない少女でした。 彼女だけが気づいている、自然界に息づく生命の神秘や、刹那の美。それらがいずれ、彼女を幸福にしていくまで―――。 丁寧に静かに、時に激しく、ベトナム様式の邸で繰り広げられる日常のドラマは、鮮やかな色彩と光がとても印象的。 ほぼ室内で繰り広げられるとはいえ、開放された空間は驚くほどの広がりを生んでいました。 建築や、室内装飾や文様が、すでに芸術といっても過言ではなく、そこに目に沁みるような自然界の美しさが加味されると、えも言われぬ美の世界が生れてくるのでしょう。 カメラドール受賞作に、なっとく。 耳には虫の声、鳥のさえずり。まるでサイゴンにいるかのような暑い臨場感。 少女時代のムイを演じたクエン・チー・タン・トゥラは、ハッとするほど魅力的で、純粋無垢な魂は、自然と対話しながら生きています。 彼女が純粋であればあるほど、幸福は近く、無欲で慎ましやかな暮らしは、彼女を確実に美しい女性へと成長させていきます。 やがて10年後、若きピアニストの使用人となっていた彼女のもとに、身分を越えた幸せが静かに突然に訪れる、、それは約束されていたことのように―――。 本編撮影後にユン監督の妻となったトラン・ヌー・イェン・ケーが、大人になったムイを演じています。 彼女は『シクロ』でもユン監督作品に登場していましたね。 美しく奔放なピアニストの婚約者が、ちっとも魅力に映らないほど、ムイという女性は素敵でした。 心の景色の違いが、ふたりの女性の運命を分けていく感じがいい。 ハッとするような映像には、奉公先一家の崩壊や、蟻を殺す残酷なシーンも含まれています。 そして何より、パパイヤを半分に割ると現れる白い種が、筆舌に尽くしがたいほど官能的なのでした。 見終えたとき、ベルトルッチの『シャンドライの恋』を思い出しました。 ピアニスト、使用人、そして寡黙さが似ています。 シャンドライはイタリアが舞台でしたが。どちらも好きな作品です。 監督・脚本 トラン・アン・ユン 撮影 ブノワ・ドゥローム 音楽 トン=ツァ・ティエ 出演 トラン・ヌー・イェン・ケー リュ・マン・サン グエン・アン・ホア クエン・チー・タン・トゥラ (カラー/104分/フランス=ベトナム合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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見たいと思ってDISCASのリストの上位にありながら、家での映画鑑賞を休止してしまったので、結局まだ未見です。確かこの監督さんは戦火を避けてベトナムを幼いときに離れ、パリで育った人でしたよね?。この作品もフランスでセットで撮られたのではなかったでしょうか?。いずれは見るつもりです。
- ベルトルッチの『シャンドライの恋』は大好きな映画です。好きなゆえにレビューをまだちゃんと書けていません。それはキンスキー氏のキャラが原因。キンスキー氏は、全然違うようだけれど、実は『ラストタンゴ・イン・パリ』のマーロン・ブランドとも似ている面があり、それは男の本性の一面で、自分の中にももちろんあって、自分でももてあましてある一面でもある。まあ男の駄目性なのだけれど、そのことに触れずにレビューを書くことは出来ないし、かと言ってキンスキー氏を批判することもあまりしたくない。それでレビューは頓挫です。 - はる*37さんは、そう言えば『シャンドライ』のレビューは書かれてましたっけ?。 - (2009.03.19 01:29:23)
いい映画だと思いました。
ご期待ください♪ >戦火を避けてベトナムを幼いときに離れ、パリで育った人 そのようですね。 だからフランス映画のようですよ。映像が。 そこにアジアンビューティーが織り込まれると、例えば『ラマン』のように魅せられてしまうわたしがいます。 >男の本性の一面、自分でももてあましてある一面 『シャンドライの恋』を観たのは、もう随分前で 『ラストタンゴ・イン・パリ』は途中で断念してしまったから そのニュアンスが伝わらなくてもどかしいです。 どんな男たちでしたっけ~。 再見したくなりました。 以前のブログにはレヴューを書いたはずですが、ここにはありません。 (2009.03.19 22:35:32)
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