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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イラン映画
イランの名匠キアロスタミ監督が、宿題をテーマに、教育現場の実態に迫ったドキュメンタリー。 古今東西、子どもたちに宿題をしなかった理由を聞けば、様々な理由や言い訳が返ってくるんだろう。 私自身、たまにはやらなかった。めんどくさいとか、忘れていたとか、そんな理由なんだけど、学校に着いてから焦って済ましていたっけ。 日本ではサボリがたぶん理由の一番に違いないと想像するのだけれど、なんとイランでは、「親」が宿題ができない理由のナンバーワンをしめているのだ。 両親が非識字であること、それに加えて膨大な宿題が出て、時間と場所がないことも理由になっていた。 親は親で生活するのに忙しくて、勉強のことにまで手が回らないのが実情のようだった。 監督のインタビューに答える子どもの姿を淡々と映し出しつつ、時おり朝礼の様子や、飛び入り参加のおやじが教育論を雄弁に語るシーンなど交えながら、最後にはイランにおける教育現場の問題点を浮き彫りにしていく意欲作。 アラーの存在が、ありとあらゆる形で勉強やら道徳に入り込んでいるもの、問題点にみえてくる。 それにしても、イランの親御さんはコワイ。ベルトでぶたれる子が異様に多いのだ。 ベルトはぶつためにある、、、? イラン映画には過酷な状況を自力で切り抜けていく、健気な子どもたちを描いた作品も多いけれど、それを、子どもたちの能力を大人が相当認めている証拠――と感じたのは間違いだったか。このドキュメンタリーを見ていると、なんとも複雑な思いがしてくる。 宿題ができない環境があることを思えば、ただサボれるなんて幸せなことなんだよ、子どもたち・・・。 それでも、子どもたちが一様に「アニメよりも宿題が好き!」と答える表情は、若干こわばっていたようにも見えたが、勘違いだろうか。 監督・脚本・インタビュー/ アッバス・キアロスタミ 撮影/ イラジ・サファヴィ 音楽/ モハマド=レザ・アリゴリ (カラー/86分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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アニメより宿題が好き、ですか!。タテマエを植え付けられる様子ですね。タテマエの存在こそが社会なのだし、例えば欧米的発想で自由だ人権だと叫んだところで、それ自体も一つのタテマエなのだし…。
- 買っていながらたぶん15年以上読んでいなかった阿部謹也の『西洋中世の男と女』をいま読んでいます。古代地中海世界から説き起こして、どのように中世キリスト教会が王侯から庶民までの性を律するに至ったかを論じているのですが、その過程と結果こそが西洋的「個人」を誕生させることになる。もちろん個人の成立は後の自由とか人権とかいった発想に発展するわけで、読んでいると、直接深くは触れられていないことであっても、現代の日本の状況やイスラーム世界のことも見えてきます。 - 宿題に戻って、宿題っていうのは学習内容的要素はもちろんあるけれど、義務を課してそれを履行させるという側面があって、そこに子供たちの抵抗感があるのでしょう。つまりアニメより先に宿題をしなければならないというか。ボクは子供は小学生のうちは宿題なんて出さなくて良いって考えてます。小学生のうちはあくまで子供扱い。で中学になったらガラッと変わって大人扱い。勉強もしなさい、義務も履行しなさい。嫌なら学校やめて働きなさい。ちょっと極端かな?。 (2009.04.07 09:38:58)
>アニメより宿題が好き
「んなわけないじゃん~」とツッコミをいれたくなります。 本音と建て前。 せめて子どもには本音を言ってもらいたいと思うところですが 案外子どもは答えるべき答えを知っていますよね、、。 >阿部謹也の『西洋中世の男と女』 15年ですか! racquoさんの中で熟されていそうですね。 読むべきいいタイミングだったのでしょうか。 難しそうな本ですが。 ‘個人の成立‘これにはちょっと興味あります。 >小学生のうちは宿題なんて出さなくて良い やる子と、やらない子の差が広がっていきそうです。 日本はできる子もできない子も一緒に教育するのが 不親切といいますね。 落第させるのは親切だと、なにかで読みましたが。 (2009.04.07 17:39:30) |