行きかふ人も又

2009/10/23(金)19:46

【昼下りの情事(LOVE IN THE AFTERNOON)】 1957年 ビバ!ワイルダー 不朽の名作

アメリカ映画(144)

 ビリー・ワイルダー監督は大好きです。 ワイルダー作品を観るたび、そのユーモアと、巧みな脚本に感心してしまう! パリを舞台に描くロマンチックなラブコメディは、満足度120パーセント。久々に私的5つ星映画となりました。  男手ひとつで育てられたアリアーヌ(ヘプバーン)は、父親(シュヴァリエ)が私立探偵という変わった環境で育ちます。大人になって、好奇心から、父の資料を覗くこと度々。 ある日、プレイボーイで名高いフラナガン(クーパー)と、最愛の妻が不倫していることを知った依頼人が、ピストルを持って事務所を飛び出していくところを目撃したアリアーヌ。 居てもたってもいられず、彼女は不倫現場のホテルへと押しかけ、フラナガンの危機を救うところから、物語は始まるのでした―――。 ぺプバーンは、ちょっと変わった女の子を演じるのが上手い。今回も、まさに不倫の熟練(!)経験豊富なフラナガンを魅了する、ステキな役を演じています。 これがまた、ほんとに可愛い! 精一杯見栄を張っているアリアーヌは、名前さえ明かさず、完璧に彼を騙し続けながら、昼下りの逢瀬を重ねるのです。 しかし、彼がパリに滞在する日はすぐに終わりを迎え・・・。二人はお互いに本気になりそうでならないまま、後腐れなき別れを告げ合うのでした。 すっかり彼の虜となったアリアーヌの、恋焦がれる描写などは、機微に富む素晴らしさ。 台詞や仕草やちょっとした小道具、伏線の数々が、観る者の胸をほっこり温かく、幸せな気分にしてくれる。 ワイルダー作品にしかない魅力がたしかにあります。 偶然の再会を果たす一年後。 昼下りの逢瀬は再びはじまり、ここからの本気になっていく恋愛模様が、たまらなく甘美です。 再会したとき、フラナガンはしっかり女性同伴で、アリアーヌを見てもすぐには誰だか思いだせない―――そんな演出までもが上手い。いかに遊び人かがわかるってもんです。 そんな彼が、再会してから、本気で嫉妬して、本気で彼女を愛していく姿がとても良いのでした。 しかし、本気の恋に悩んだフラナガンが、アリアーヌの身辺調査を依頼したのは・・・私立探偵である彼女の父親だった・・・! なんともいえない絶妙な展開が最高。 最後に忘れてならないのが、父親の魅力―――。 男手ひとつで育ててきた、父親の心の機微が秀逸。目に入れても痛くない、愛する娘が恋をしたら・・・。 その寂しさや、心配や喜びを演じきった、モーリス・シュヴァリエの演技が素晴らしい。 はじめはコミカルな人物像がはまり役でしたが、最後で、愛する娘を、その幸せの為に手放す、切ない表情が感動的で忘れられません。 ロマンチックなラストシーンまで、すべてが文句の付けどころなし。 映画史に燦然と輝く名画は、期待した通りの傑作でした。 ●   ●   ●   ● 製作/ 監督: ビリー・ワイルダー 原作/ クロード・アネ 脚本/ ビリー・ワイルダー  I・A・L・ダイアモンド 撮影/ ウィリアム・C・メラー 音楽/ フランツ・ワックスマン 出演/ オードリー・ヘプバーン  ゲイリー・クーパー  モーリス・シュヴァリエ (カラー/134分)

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