行きかふ人も又

2009/12/30(水)23:20

【わらの犬(STRAW DOGS)】 1971年 凶暴至極のバイオレンス・ムービー

アメリカ映画(144)

  平和主義者の学者である夫デビッド(ホフマン)は、妻エミー(ジョージ)の田舎があるイギリスの片田舎へ、研究と執筆に専念するため移り住んできた。 そんな彼らを、癖のある武骨な村の男たちは、しだいにいたぶり痛めつけ始める。忍耐の限界に達したデビッドが、ついに鬱屈した怒りを爆発させていく様を描く―――。 ペキンパー監督は、とにかく男気映画を撮る人だけれど、この作品はすごい。最初から最後まで、不毛で不愉快な暴力が続く。  田舎男たちの言動があまりに酷すぎるのだ・・・。イギリスの片田舎ってこんなんだっけ。 男たちがいたぶるのは、デビッドだけでなく、町の精神薄弱者ジョン(アーン)に対しても。 学者夫婦の新生活が崩壊していく物語のなかに、ジョンが引き起こしてしまう思いがけない事件も絡んで、事態は後戻りできない悲劇の結末を迎える。 いくらヒドイといっても一人くらい良心ある者が・・・なんて甘い。この作品に限っては誰も感情移入できそうな人物がいないのだ。 デビッドは平和主義者という役どころさえ疑問なほど、冷淡な男だし。キレたら怖いし。 男たちに色目を使われるエミーは、嫌がっていながら何気に思わせぶりだし。 むかし関係を持っていた男ベナーたちに暴行された時だって、彼女は本気で嫌がってはないようで・・・その反応おかしくない?! とツッコミを入れたくなったほど。 ちなみに、エミーを演じるスーザン・ジョージの表情は、始終変わらない。ずっと同じ顔をているのが、気になってしかたなかった。 ノーブラで歩いて襲われるというのも、どうかと、、。 こんな女性、実際にはいないでしょうと、再びツッコミを入れたくなるようなヒロインだったりするのだ。 ペキンパー監督が贈る男気映画。 男性的な感覚を全面に押し出して描くと、必然的にこういう作品になっていくのだろう。 評価は大きく分かれても、それが個性と知ってみれば、自ずと高評価できそう。 終盤、少女を誤って殺めてしまったジョンを匿いながら、自宅の邸に立てこもり、町の悪漢ヘッドン一家と戦闘を繰り広げていく、デビッドの豹変した姿は必見もの。 若かりし頃のダスティン・ホフマンは好きで、いろいろ観漁った時期があったけれど、本編での彼はまさにぶっとんでいる! これでもかというほどの鬼気迫る演技が素晴らしい。 バイオレンスに満ち満ちた本編は、カットバックを多用した怖い映像で溢れていて、いままで見たことのないようなタイプの、ほんとの意味での暴力映画だといえそうだ。 ●   ●   ●   ● 監督/ サム・ペキンパー 原作/ ゴードン・M・ウィリアムズ 脚本/ サム・ペキンパー  デヴィッド・Z・グッドマン 撮影/ ジョン・コキロン 音楽/ ジェリー・フィールディング 出演/ ダスティン・ホフマン  スーザン・ジョージ  ピーター・ヴォーン  ピーター・アーン (カラー/118分)

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