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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:多国合作映画
ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督作品は、他に並ぶもののない詩情豊かな映像美がいっぱい。 痛切なまでにストイックで静かな姉弟の旅は、母のいる家を捨ててはじまる、ふたりぼっちの汽車の旅。顔さえ知らないままに、父がいるはずのドイツへと向かう。 子どもたちが出会う大人は、旅一座であったり、長距離トラックの運転手であったり。いいことばかりではけしてない、厳しいことの度かさなり。12歳のヴーラと5歳のアレクサンドロスは、どんな時でも寄り添いあって、偽善と親切の入り混じる異国の旅路をくぐりぬけていく。 小さな体でけんめいに旅をするアレクサンドロスがいたいけ。そんな弟のしらないことろで、姉ヴーラは、ヒッチハイクの男に手籠にされて傷つき、旅芸人の青年に恋をして小さな胸を痛めていた、、。そんなまだ幼ない彼女が、ずっと気がかりでしかたなかった。 旅先はいつもグレーの空。冷たい雨に凍えそうになりながら、遠いドイツまでの旅はつづく。 アンゲロプロス監督の画面はどうしてこうもひとを惹きつけるのだろう。フェリーニのような象徴的なオブジェの数々、静止画のごとく静かに佇む人々、ロングショットの静謐な美しさ。情緒あるテーマ音楽が繰り返し流れる。 体を売るも同然で最後の切符を手に入れて、旅に出てはじめて座席にありついた姉弟は、汽車に揺られながら微笑みあい、穏やかなやさしい表情を浮かべる。束の間の休息。 汽車を降りて国境を渡る真っ暗な川をボートで漕ぎだした彼女たちの背後に、一発の銃声が響き渡る・・・・。 翌朝、目覚めたふたりは夢にまで見たドイツの大地に辿りついていたのだろうか。だんだん霧が晴れて、むこうには一本の大木。それはふたりを待っていてくれた、顔も知らない、存在さえ不確かなお父さんのように、姉弟を包み込む。 監督・脚本 テオ・アンゲロプロス 脚本 テオ・アンゲロプロス トニーノ・グエッラ タナシス・ヴァルニティノス 音楽 エレニ・カラインドロウ 出演 ミカリス・ゼーナ タニア・パライオログウ ストラトス・ジョルジョグロウ (125min/ギリシャ=フランス=イタリア) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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平成3年、映画館で150本の映画を観てた一番熱い時期の1本でした。
予告編での、あの感動の対策と思わせるシチュエーションとは違い、この監督独自のくどいくらいの繰り返しに場内からも失笑が漏れていたのを思い出します。 この監督にしては、でも、時間も短いし、わかりやすい映画ではあったけど。 でもコスタ・ガブラスにしてもそうだけど、ギリシャの監督のカラーが序実に出ている作品ではありますね。 生活感のない詩情、股間から血を流す非情、繰りかえされる旋律とは裏腹にやりきれなさばかりが立ち上る、私にはそう感じられました。 彼の作品としては、やはり代表作にはなりえないな。 20年前に観た時の感想ですが、未だに胸糞悪い作品として記憶に残る1本です。 (2011.11.26 19:43:37)
アンゲロプロス監督の作品をみるのは、これで3作目ですが
やりきれなさは絶対ですね。 でもわたしには、この辛さも、寒々とした灰色の情景も、素直にこころに響くのでした。 >やはり代表作にはなりえないな。 >20年前に観た時の感想ですが、未だに胸糞悪い作品として記憶に残る1本です。 Atsushiさんはどのあたりがおすすめですか。胸が悪くならないのは、やはり初期の作品でしょうか。 わたしはつぎ「旅芸人の記録」が気になっています。 (2011.11.27 15:17:47)
どれも長いですね。全部観たわけじゃないし、偉そうなことも言えませんが、「こうのとり、たちずさんで」はいいかも。
それともう読んでおられるかもしれませんが、キネマ旬報社の「知っておきたい映画監督100 外国映画編」。ちょっとしたガイドブックとしてはいい参考書になります。 これもまた活用なさるといいと思います。 (2011.11.29 20:50:55)
どれも長いし、観るまえにモチベーション万全で臨みたい監督ですね。
>「こうのとり、たちずさんで」 これも、ずっと観たいリストに載っています。 レンタル店になく、テレビやリバイバル上映もされないから、なかなか観られませんが。買った方が早いのですね。。 >「知っておきたい映画監督100 外国映画編」 読んでいませんよー。 アマゾンで見つけたのでポチリ、しました。 おもしろそう。おすすめありがとうございます^^ (2011.11.30 10:52:16) |