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ポーランド映画

2011.05.03
XML
カテゴリ:ポーランド映画
334374_01_02_02.jpg

 ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキの名前は、この作品ではじめて聞いた。
1991年の『Ferdydurke』以来、じつに17年ぶりの新作。過去のタイトルを眺めて
みると、見ておきたいタイトルがいろいろある。

 物語の舞台はポーランドの田舎町。病院の火葬場で働くレオンは、数年前にレイ
プ事件を偶然目撃してしまい、不運にも濡れ衣を着せられ逮捕されてしまった過去
を持つ。
出所後、レオンは、ずっと一緒に暮らした祖母の家に戻るが、その時の被害者アン
ナに心奪われ、いつしか自宅の窓から、彼女の部屋を覗くことが日課となるのだっ
た――。
 
 孤独で愚直な中年男の、一途すぎるがゆえの行動が、じつに奇妙で気味悪くて、
愛おしい。
不器用な純粋さが裏返って、<覗く>という変態行為にはしってしまう主人公の映
画には、『愛に関する短いフィルム』『仕立て屋の恋』などがあるけれども、どの作品
も、嫌悪感を過ぎたところに愛おしさを感じるから好きだ。
きっとたいていの方がそうだから、一連の作品は人気がある。

はじめは覗くだけだったのに、、。ある日、ずっと一緒に暮らした祖母が死んでひとり
ぼっちになってから、レオンはすこしだけ変わる。
なにかから解き放たれたように、祖母の思い出の品を燃やし、自宅の窓を改築して、
アンナを覗くことを生きがいとするのだった。
やがて、覗くだけで満足できなくなったレオンは、彼女の留守中部屋に忍び込み、砂
糖に睡眠薬を混ぜて、夜な夜な、深く眠った彼女の部屋に忍び込むようになる・・・・。

長いながいお話のようでいて、タイトルからもわかるように、それはたった4夜限りの
出来事。
ただ彼女のそばにいて、布団をかけて、爪にマネキュア塗って、お片づけして、取れ
そうなボタンつけて・・・そんなふうにして過ごしていた4日間。無防備に目の前で眠る
彼女を前に、究極のプラトニックを貫く。

334374_01_06_02.jpg334374_01_04_02.jpg
アンナの身になれば、それは強烈に気味悪いことだけれど、第三者感情としてはレオ
ンの恋が実ることを願っていたりする。不器用でマジメな彼が、愛を表現するにはこの
方法しかなかったのだから。
しかし、アンナが彼の行為を好意的に捉えるはずもなく、、再び法廷へ引きずり出され
たレオンの恋は儚く散ってしまう。。
でもそれをだれが笑えるというのだろう。
悲恋の先になにが待つのか、静かな悲しみの余韻が残って消えた。
 

ポーランド映画は、主人公がたいてい美男美女でないところに魅力があると思う。アン
ナもレオンも例外でなく、ふつうの男と女だからまた深い味わいが出る。
<覗く>純愛の物語――まだほかにも数作あれば、ジャンルとして確立できるね、きっと。

†   †   †

監督・製作/ イエジー・スコリモフスキ
脚本/ イエジー・スコリモフスキ  エヴァ・ピャスコフスカ 
音楽/ ミハウ・ロレンツ 
出演/ アルトゥール・ステランコ  キンガ・プレイス  イエジー・フェドロヴィチ 
(カラー/94min/ポーランド=フランス合作)






Last updated  2011.05.08 22:18:00
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2010.03.30
カテゴリ:ポーランド映画

 蠍座では、今日から来月12日まで、タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』と並行して、<ナチス強制収容所の記憶>と題し、『パサジェルカ』『夜と霧』の二作品を放映している。
初日の今日はお休みで、さっそく蠍座へ足を運んでみた。


 アウシュビッツ強制収容所を舞台に、女看守リザ(シュロンスカ)と彼女が同性愛的な感情を抱く女囚マルタ(チェピェレフスカ)との精神的な闘いを描いた異色作。
手なづけ屈服させようとする看守に対して毅然とした態度をとる女囚、それによって看守は精神的に追いつめられていく―――。



 映画完成前に、ムンク監督は交通事故で亡くなっている。友人たちが遺志を継ぎ、遺されたスチルを繋いで完成させたのが本作。
戦後、新婚旅行に出た女看守が船内で、かつて囚人だったマルタにそっくりな女に出会うところから、物語は始まる。
スチルに解説がつき、語りが入り、1時間の映画としての体裁を得ているけれど、そのおかげでかえって描かれない部分を想像して、深みが出たという評価も多いようだ。

ガス室も、処刑も、時代背景のなかに普通にあった。怖ろしく描こうとする意図的なものはなくて、リザとマルタの精神的な闘いが前面にある。
近年作られたホロコーストものは幾つも観ているけれど、趣の違いを感じるなぁ。当然だけれど。
『夜と霧』もきっと観ておこうと思った。

リザが、告白という形で、初めて夫に語る過去。
女看守だったころの、マルタという美しい憂いと気高さを持つ、ひとりの囚人の話。
マルタと恋人のつかの間の逢瀬に目をつむり、病に倒れた彼女を献身的に介抱し、無言のなかで交わされた数々の駆け引き、、、。

手元にある本の解説には、“ 同性愛的な感情 ”とあるので、あらすじにはそう書かせてもらったけれど、未完ゆえの曖昧さのなかに半分隠れていた。
リザが最初に告白する内容、それからさらに、彼女の心に飛来する回想、回想が二度繰り返されることで、告白できなかった真実が明らかにされていく展開がよかった。


先日、『朗読者』でも思ったけれど、戦争中、看守側にいた人間が、戦後自ら行った行為について、どう思い、どういう態度をとるべきなのだろう。
ユダヤの人々の苦しみはよく描かれても、看守側にいた者や、ユダヤ人を突き出した人々の苦しみについては、ほとんど考えたことがなかった。
再会したのがマルタなのかどうかは別として、再会という形にすることで、そのどちらの立場からも物語を見つめることができる作品になっていた。

とはいえ、わたしは時々うつらうつらしてしまって、、そんな自分が信じられない気持で帰ってきたのだった、、。
スチルの繋ぎはどう見ても違和感たっぷりであるし、はじめは未完だったのだから、作品としてどうにか成立させた感というのは、残っていて仕方がないのだ。
素晴らしい完成度とは言い難い。それがムリのない正直な感想だと思う。


この映画、いまだソフト化がされていないのだそう。今回フィルムが日本にあるのも、あとわずからしく、「蠍座通信」(蠍座の館主さんが毎月書かれている上映作品の解説やコラムの冊子)で「貴重な機会ですよ」と書かれてあるのを見て、絶対に足を運ぼうと思っていた。
ちなみに『夜と霧』も『パサジェルカ』も、「死ぬまでに観たい映画1001本」に選ばれています。


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監督/ アンジェイ・ムンク
脚本/ ゾフィア・ポスミシュ  アンジェイ・ムンク
撮影/ クシシュトフ・ウイニエウィッチ
音楽/ タデウシュ・バイルド
出演/ アレクサンドラ・シュロンスカ  アンナ・チェピェレフスカ  ヤン・クレチマル

(モノクロ/61分)






Last updated  2010.03.30 23:13:10
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2010.01.18
カテゴリ:ポーランド映画

 『デカローグ』シリーズの概要はこちら。

 ワルシャワ郊外の住宅地を舞台に、旧約聖書の十戒をモチーフに様々な人間模様を綴った、キェシロフスキの連作集。
元々はTVのミニ・シリーズ用に製作された10篇が、後にその質の高さから劇場公開された。


 ついに、シリーズ最後の第9話・第10話。
『トリコロール/赤の愛』のように、みんな勢揃いしたりして・・・と何気に期待していたら、そんなことにはならなかった。
ただ、第10話の郵便局のシーンでは、第6話のトメクがさりげなく登場して、うれしいラストとなった。


第9話『ある孤独に関する物語』 ―隣人の妻を欲するなかれ―

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 友人の医者に性的不能を言い渡された夫と、浮気を続ける妻。ふたりの間の深い孤独を描く―――。


 性的不能という設定は、『トリコロール/白の愛』でも使われていたっけ。
とはいえ、ユーモアを交えていた『白の愛』に比べて、本編はいたってシリアス。
男として妻を悦ばせることができなくなり、離婚を申し出た夫に、妻は「それでも構わない、離婚はしない」と優しく応える。しかし、その最愛の妻の浮気を知ったとき、男は嫉妬に苛まれ、電話の盗聴や情事現場の覘きにまで走ってしまう・・・。

一番辛いのはもちろん夫だし、妻の行動はヒドイ。けれど、罪悪感を抱えたまま、若い男との実りない情事を続けている妻の苦悩もよくわかってしまう。
愛は心にこそ宿る――そうはいっても満たされない妻と、不甲斐なさに耐えることのできない夫の孤独は、ただただ痛々しく悲しい。
さんざん傷ついた後で、互いにまだ愛し合っていているとわかるラストが救いだった。



第10話『ある希望に関する物語』 ―隣人の財産を欲するなかれ―

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 疎遠となっていた父親の訃報で、久しぶりに再会した兄弟。生前、切手の蒐集で家族を崩壊させた父親が遺した膨大な遺産が、思いがけず兄弟の運命を翻弄する―――。


 父親の遺した切手が高価なものであることを知った時から、性格も仕事もまったく違う兄弟に協力関係が生まれた。儚くも夢見心地な、疑心暗鬼と、希望のはじまりだ。
マンションも高級車も買えると知った二人が、思い描く夢のような未来。しかし、濡れ手で粟はほんの一時ばかり・・・。
騙し騙され、ふたりに残るのはただ、相手を疑ったことへの心苦しさと虚無心なのだった。

最終話にして、これもとってもおもしろい一篇だった。思いがけない富を得た人間の、卑しくも滑稽な姿が微笑ましい。
目まぐるしく変わる「運命」、キェシロフスキ節全開の、最後を飾るに相応しい作品だった。
最後の最後にトメクを出演させる演出がニクイ。


ここまでほぼ、どの作品の主人公も魅力的で、大満足の『デカローグ』シリーズ。
私的なお気に入りは、第4話「ある父と娘に関する物語」第6話「ある愛に関する物語」でしょうか。
なんだか、改めて『トリコロール』シリーズが再見したくなってきた。キェシロフスキ作品を観漁った今は、より楽しめるに違いない。



●   ●   ●   ●



監督  クシシュトフ・キェシロフスキ
製作  リシャルト・フルコフスキ
脚本  クシシュトフ・キェシロフスキ  クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影  アンジェイ・ヤロシェヴィチ
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル

(カラー/567分/DECALOGUE)










Last updated  2010.01.21 08:41:31
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2009.12.16
カテゴリ:ポーランド映画

 キェシロフスキの『デカローグ』シリーズ、DVD4枚目に収録されているのは、第7話・第8話目。
作品の概要については、こちらからどうぞ。


 第7話『ある告白に関する物語』 

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 ワルシャワ郊外の住宅地、とあるアパートのとある家族。
娘は高校を退学して、パスポートをとり、なにかの準備をしているらしい。5歳になる妹は、毎晩怖い夢をみてうなされて泣くが、彼女があやすと、母親は「あなたには無理よ」とキツクしかる。
所在なげに泣く娘、、、。
いったい、この家族になにが起こっているのか、見ていくうちクリアになってくる。

じつは、妹と思っていた少女は、娘の実の子どもで、母親はそれを認めずに我が子のようにして育てているのだった。赤ん坊の父親は、当時母が学校長だった高校の元教師。
出産をもみ消し、自分の子どもとして赤ちゃんを育てた母を、娘は強く憎み、二人の関係には軋轢が生まれ、今にも崩壊しそうな関係が危うく描かれていく―――。

キェシロフスキが巧いのは、たった1時間弱の物語のなかで、主人公のこれまでの人生と、これからの人生を観客に無限に想像させてしまうこと。
彼女の堪えきれない苦しみを、無鉄砲な行動から感じ取り、危うい言動からは幼さを感じる。

子どもを抱え、誘拐同然に母の元から逃げる娘は、4・5年ぶりの再会となる父親である元教師の元に転がりこむ。
ふたりに愛などないのは、救いなのか否か、、。
責任を感じて彼女たち母娘を保護しようとする彼にも、無鉄砲を留まらせることはできず・・・あるのは切ない別れが、ただあるのみ。
22歳と言ってた娘の、これからの孤独な人生を思うと、胸がギュッとなる物語。まだ若いから、なんとかなるのかもしれないけれど、特異なシチュエーションとはいえ辛い選択だった。



 aab9a2dc9a4b0b00.jpg  第8話『ある過去に関する物語』

 ポーランドの監督にしては珍しく、といっていいのかわからないけれど、キェシロフスキはナチス侵攻下のポーランドをほとんど描かなかった。
敬愛するワイダは、最新作 『カティンの森』 でも、まだあの辛い時代をテーマにしている。この違い、どちらが良いということなく、わたしはどちらもそれぞれに好き。

そんなキェシロフスキが珍しく、ポーランドのあの暗い過去の歴史をテーマに描いた一篇。
静かに暮らす老教授の前に、ある日アメリカから、ひとりのジャーナリストが訪れる。
彼女の著作に興味があると話すその女は、大学の講義に顔を出し、思いがけない過去の出来事を聴衆の面前で話し始める―――。

それはナチス侵攻下のポーランド、当時身寄りのなくまだ幼なかった自分を、屋根裏に匿うことを拒否した人物との、苦い思い出だ。
その拒否した人物こそ、若き日の教授で、彼女はあの時の出来事を忘れていない。何十年の時を経て、ふたりは過去と向き合うことになる。

とてもストイックに映る教授は、過去の判断を悔いて生きてきた。救う者救われる者の間に、いったい何があるのか、女はただ本人の口から教えてもらいたくてここまで来た。
それぞれの人生には月日による重みが増していて、本心から過去を語り合える関係が持たれていく様を、冷静な視点で描いたいい一編だった。
神を信じなくとも、その先に空虚感はない―――主人公を通して、神の不用を物語るシーンが印象的。





監督/ クシシュトフ・キエシロフスキ
脚本/ クシシュトフ・キエシロフスキ   クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽/ ズビグニエフ・プレイスネル
出演/ クリスティナ・ヤンダ  ダニエル・オルブリフスキー  ズビグニエフ・ザマホフスキー

(カラー/567分/DECALOGUE)






Last updated  2009.12.18 06:40:20
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2009.11.18
カテゴリ:ポーランド映画

 映画演劇技術学校で学び、衣装係の仕立屋となった少年ロメクが味わう、芸術の理想と現実。ヴロツワフのオペラ座に、映画大学生も加わって撮影された、自伝的作品。


 34歳のキェシロフスキが、ドキュメンタリーからドラマへと移行する時期に撮った短編作品。
オペラ座を舞台に、衣裳係として職に就いた青年ロメクの目を通して、芸術の理想と現実をシビアに見つめています。
ロメクは監督自身の投影で、彼が感じる新しい仕事への期待や、やがて知る失望や焦燥が、等身大の姿で描かれていく――。

衣裳係の先輩と、偉そうに振る舞う役者が、言い合いをするシーンが印象に残ります。
二人になったあと、ロメクに先輩がこぼす言葉。

「彼らよりも俺たちの方が、ずっと芸術がなんなのかを考えている!」

若きキェシロフスキも、そう思った時代があったのかもしれないなぁ。
けれども、後に大女優たちから「是非私を撮ってほしい」と懇願されるまでになった。
同じような悔しさを、バネにした時代もあったのだろうか、、。


物語はシビアで、未来への選択を迫られるラスト。
すでに、運命の分かれ道的な終わりをしているのが、後の作品群を思うと、とても興味深かった。

撮影は苦手(キライ?)として、もっぱらカメラマンに一任していたというキェシロフスキ。映像の手ブレが激しいのは、いかにも初期の低予算ぽいです。
まだ未熟さも当然残り、面白いとは言い難いけれど、貴重な作品を劇場で鑑賞することができて、本当にうれしい。



●  ●  ●  ●


監督・脚本/ クシシュトフ・キエシロフスキ
撮影/ ウィトールド・ストック
出演/ ジュリアス・マチュルスキ   ミハウ・タルコフスキ

(カラー/67分)







Last updated  2009.11.20 18:27:35
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2009.11.16
カテゴリ:ポーランド映画

 シアターキノにて、一週間上映されている『キェシロフスキ・プリズム』

キノでは、7作品のなかから、順次日替わりで2~3作品上映しています。20日(金)まで。
今回上映された日本初公開の作品群は、権利関係上DVD発売が出来ない、上映自体が貴重なもの。
できることならすべて観たかった・・・!
月曜日、仕事あと、『スティル・アライヴ』と『スタッフ』を鑑賞してきました。 


 ポーランド映画界の至宝、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の没後10年を記念して作られた記録映画。
学生時代に始めたドキュメンタリー製作から、20数本に及ぶ監督作品について、キェシロフスキ自身の貴重な声や、スタッフ、友人らの証言を織り交ぜて綴る―――



 キェシロフスキが急逝したのは1996年3月。
当時、まだ氏の作品だと意識せず、遺作『トリコロール』が好きだった私は、ずっと亡くなった実感がないままでした。
このドキュメンタリーを観てはじめて、その偉大さや人となりを知り、もういないことも実感しています。
いまでは、敬愛する監督のひとりとして、大好きになっているキェシロフスキ。その息吹を感じる、出会えてうれい作品。

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寝る間も惜しんで、身を削って映画を撮り、命を縮めてしまった人。心に切り込んでくる、人間の本質に触れた素晴らしい作品は、そうして生まれた。
悩んでいたことも、突然得た名声への戸惑いも、いろんなことが初耳で感慨深いです。

本国ポーランドを見つめ続けた作品群から、誇りと深い愛が感じられるわけも、よく理解できる。
偶然、運命――多くの作品のテーマとなったそれらを描く感性が、理屈抜きで胸に沁みてくるのは、キェシロフスキ自身の魅力に他なりません。
ゆかりある人物や本人の言葉は貴重で、ファンには必見のドキュメンタリーになっています。

証言に登場するのは、アニエスカ・ホランド、イレーヌ・ジャコブ、ジュリエット・ビノシュ、作曲家ズビグニェフ・プレイスネル、ヴィム・ヴェンダース、などなど。

「内面に迫りたい」「人間の真実を描きたい」

そう願ったキェシロフスキ監督の映像世界は、たしかに人の内面を描いていたし、真実に切り込んでいた。
これからも『トリコロール』『デカローグ』シリーズは、何度でも観たくなると思う。

 


監督/ マリア・ズマシュ=コチャノヴィチ
脚本/ スタニスワフ・ザヴィシリンスキ
撮影/ アンジェイ・アダムチャク
編集/ グラジナ・グラドン
製作/ スワヴォミル・サワモン

(カラー/82分)







Last updated  2009.11.19 21:39:35
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2009.03.28
カテゴリ:ポーランド映画

 ある一人の青年が衝動殺人に至り、極刑を執行されるまでを克明に追って描いた衝撃作。


この第五話も『殺人に関する短いフィルム』として編集し直され、劇場公開されています。
犯罪を犯した青年の物語と、そして彼を弁護することになった弁護士の葛藤を描きます。

犯罪を犯すまでの経緯はなにも語らずに、ただ実行までの様子を淡々と見つめた視線は、シャープで冷酷です。
けして珍しくはない犯罪ものだけれど、他のどれとも違うのは、ストレートに死刑に対する是非を考えさせられることでしょうか。

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弁護の余地なしのであっても、極刑の判決は新たな死を生みます。
それは、青年が処刑される時。
職員たちが揃って彼を押さえつけ、首に縄をかけるシーンは殺人にしか見えません。

新米弁護士にとってそれは、身を切る様な辛さでしょう。
刑が確定してから、唯一心開かれた者として、青年を支えた弁護士の苦悩、交わされる言葉が悲痛に届きました。

法律は決まっていてどうにもならないし、たしかに非情な犯罪を犯したのは事実で、青年は罪を償わなければならない。
でも、果たしてその償い方が死刑というものであっていいのか、人の命を奪う行為を、冷めた描写で見ながら、初めて疑問に思いました。
いままでは、それで当然と思ってきたのに、、。

日本でも死刑制度問題はずっと話し合われてきて、時には、目だった動きとなって浮かび上がることもあるけれど、今のところ変わる気配はありません。
法務大臣が変わり、執行される数が明らかに増えている現状を知ると、少しは「ほんとにいいの?」という気にもなるけれど、できれば関わりたくないテーマでした。
そんな自分が、はっきりと死刑はダメな気がする、そう思うなんて驚きです。
むつかしいテーマです、、、。

『ある愛に関する物語』に並んでこちらも、シリーズの中の一作品としてあるのではもったいないくらい、良質なドラマでありました。




●  ●  ●  ●



監督  クシシュトフ・キエシロフスキ
脚本  クシシュトフ・キエシロフスキ  クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル
出演  ミロスワフ・バカ  クシシュトフ・グロビシュ

(カラー/567分)






Last updated  2009.03.29 15:13:58
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2009.03.27
カテゴリ:ポーランド映画

 キエシロフシキ監督『デカローグ』の第6話。
劇場用に編集して公開された『愛に関する短いフィルム』を先に鑑賞。
あらためて、今回はオリジナルのほうを観ました。
以前書いた感想はこちら。

『愛に関する短いフィルム』


 『デカローグ』のなかの一遍と、単独で公開となった「愛に関する短いフィルム」
さすがにラストは違っていますが、この物語もキエシロフスキ監督も好きだと実感しました。
胸騒ぎがするように、物語に引き込まれます。


再見して改めて感じるのは、孤独の深さ。
孤児のトメクにしても、一人暮らしのマグダにしても、根深い孤独がありました。
始まりはどうあれ、向かいのマンションに住んでいるという偶然から生まれたふたりの関係は、良い方へと向うのでしょう。
偶然の産物。それは監督が描きたいことでもあったと思います。

20近くも歳の離れたマグダを、なぜトメクは愛したか―――。
始めは下心をもって覗いていたけれど、ある時、ふと自室でしか見せない彼女の深い孤独の存在に気付いてしまったのでしょう。
自分と同じものを抱えた女(ひと)に惹かれていったトメクの思いは、純粋です。
それゆえ、受け入れてもらえない絶望は大きく、手首を切るまでにいたるのです。


覗く行為の純粋さは、やはり感じます。
マグダの場合、嫌ならカーテンを吊るしたら?、、なんて思うのは、自分が隠す文化の日本人だからでしょうが(笑)
しかし彼女は隠さない。見られてもなお堂々たるマグダは、けしてトメクとの繋がりを切ろうとしなかったし、いなくなれば後を追います。
その辺に浮かんでくる弱さが、痛くもあり愛しくもあり。

こちらにはない、『愛に関する短いフィルム』のラスト、再びトメクの部屋に足を踏み入れたマグダが、望遠鏡を通して自らの生活を眺める(客観視する)場面が印象的でしたが、こちらの終わり方も見事でした。



●  ●  ●  ●



監督  クシシュトフ・キエシロフスキ
脚本  クシシュトフ・キエシロフスキ  クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル
出演  オルフ・ルバシェンク  グラジナ・シャポロフスカ  ステファニア・イバンスカ

(カラー/567分)






Last updated  2009.03.29 22:14:21
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2008.10.29
カテゴリ:ポーランド映画

 (あらすじ) 43年ごろのナチス・ドイツ占領下のワルシャワ近郊を舞台に、仲間同士の遊びにスリルを味わっていた少年たちが、次第に状況に目覚め、抵抗運動に加わっていく姿を描く―――。


 ワイダの代表作である初期の『世代』『地下水道』『灰とダイヤモンド』は抵抗三部作と言われるそう。
長編デビュー作であるこちらにもすでに、若者たちの青春と抵抗、挫折と可能性という、3作共通のテーマがしっかり描かれている。どの作品も好き。

ドイツ軍の貨物列車から石炭を盗もうとしたスタフは、失敗して友人を亡くす。
逃げ出して辿り着いたある居酒屋で、木工所で働く職人に出会った彼は、見習工として工場に雇われることになる。
夜間通うようになったカトリック学校で、スタフは初めて抵抗運動に関するアジテーション演説を聞き、演説していた少女・ドロタに惹かれて地下組織へと入るのだったが・・・。

ポーランドの地下活動もの映画の魅力は、緊迫感はもちろんのこと、状況を自分たちの手で変えようとする、強力なエネルギーに溢れているところにある。
敵はあまりに大きく、あまりに強く、残酷だというのに、立ち上がって戦う強靭な力。
この時代この国に生きて、命を懸けて時代と戦った人々の勇気には敬服するばかり。
  
 1016.jpg
ポーランド映画馴染みの役者さんがたくさん出演している。一番後ろの少年はポランスキー



若者らしい無鉄砲と、異性への憧れと、使命感と。精一杯にいまを生きる主人公たちの生が眩しい。
時代背景が怖ろしいからこそ輝く命の灯火は、ワイダの三部作のなかに燦然と輝いて描かれている。
本作ではより未来に希望の余韻を残した最後だ。
指導者として尊敬し、同志として親しみ、ひとりの女性として愛していたドロタとの、悲劇的な別れがやってきたとしても、悲しみで立ち止まってなどいられない。
時代の荒波にのまれて、抵抗せずにいることなど、もうスタフにはできない・・・。


余韻として残った希望は、1944年を描いた『地下水道』、1945年を描いた『灰とダイヤモンド』へ継がっていく。
たくさんの苦しみを経て、いつかポーランドに平和がきたことを思うとき、そのワンシーン・ワンシーンが心に残る。やっぱり抵抗三部作は好きだ。




監督  アンジェイ・ワイダ
原作・脚本  ボフダン・チェシコ
撮影  イエジー・リップマン
音楽  アンジェイ・マルコフスキ
出演  タデウシュ・ウォムニッキ  ウルスラ・モジンスカ  ズビグニエフ・チブルスキー
ロマン・ポランスキー  タデウシュ・ヤンツァー

(モノクロ/88分)







Last updated  2009.11.19 21:51:05
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2008.08.25
カテゴリ:ポーランド映画

 裕福な知識階級の壮年の夫と、若く美しい妻のヨット遊びに、ヒッチハイクで拾った反抗的な貧しい若者が同行する。ヨット上で過ごす二日の間に起こる、それぞれの感情の揺れを鋭利な映像感覚で紡ぐ―――。

 登場人物わずか3人の、変化し続ける心理を丁寧に捉えた、スリリングなドラマ。
夫アンジェイは優越感を得るために、貧しいヒッチハイカーの青年をヨットに乗せる。奴隷のように仕事を言いつけ、無知を嘲けり笑う。
下劣だけど、そこには若さへの羨望が隠れている。人間らしい、弱さと卑怯だった。
アンジェイに対して飄々と振舞っているた青年さえ、お金持ちへの羨望がある。美しい妻を持つ男を妬んでいる。
青年の自由で、不器用で、人生をまだナイフに頼って旅している姿は、アンジェイとは対称的だ。二人は違い、そして同じように無意識にないものねだりをしてるだけ。

下劣な夫と、キケンな香りの旅人に挟まれてなお、一貫した態度を続ける若い妻クリスチナが、いい存在感だった。一日経つうちに、次第に青年を庇う立場となるけれど、彼女は現在のゆるい生活を壊す気などさらさらなくて、これからもお金持ちの生活に甘んじて生きていくのだろう。
貧しい青年だってそう。うだつが上がらなかろうが、のし上がろうが、日常に波は起きても変化は起きない。人生とは大概がそういうものなのかもしれない。
出会い、別れる。
そこになにかが起こっても、またなにもなかったように、日常へと帰っていく様がシビアで良い。

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ついに言い争いとなった終盤の危うさがたまらない。
泳げない青年を湖へ故意に突き落としてしまうアンジェイと、彼を必死に探そうとするクリスチナ、ブイに身を潜めている青年、この三者の緊張感あるシーンは見物。じっくりとじらすように、ひとつひとつの場面が展開していくのはポランスキー監督の上手さで、どうなろうとも観る側は大人しく沿うだけ。
青年を溺死させたと早とちりした夫婦は激しい言い争いとなり、夫はヨットから飛び降り、泳いで岸へ戻ってしまう。その様子を見ていた青年は、ひとり残されたクリスチナと、まんまと結ばれることになるけれど、それが果たしてハッピーエンドであるとは限らないのだ。

カメラワークの妙も楽しい。モノクロでありながら、鮮やかな水面や風に色を感じる。独特の縄の結びやヨットでの生活は、魅力ある描写だった。
週末に危険なヨットクルーズを楽しんだような感覚で観終える爽やかな後味。とにかくヨットが魅力的だった。
アンジェイ役のレオン・ニェムチックは、素晴らしかった『夜行列車』での好演も記憶に新しい。



監督  ロマン・ポランスキー
脚本  ロマン・ポランスキー、 イエジー・スコリモフスキー、 ヤクブ・ゴールドベルク
音楽  クリシトフ・コメダ
出演  レオン・ニェムチック、 ヨランタ・ウメッカ、 ジグムント・マラノウッツ

(モノクロ/94分)








Last updated  2008.08.27 13:35:19
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