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映画

2011.11.30
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カテゴリ:映画
  ケン・ローチ監督ははじめて。
さいきん手に取った本のコラムに、ダニー・ボイルが『トレインスポッティング』で英国労働者映画のプチブームを生んで、このジャンルの大御所ケン・ローチの人気を結果的に底上げした――というのがあった。
社会派の向きある作品を撮りつづけているローチ作品は、『麦の穂をゆらす風』が好きになれたら、ほかにもいろいろ観てみたいなとおもう。

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 (あらすじ) 職業紹介所を突然クビにされたシングルマザーのアンジーは、ルームメイトを誘って、自ら職業斡旋のビジネスに乗り出した。一人息子のジェイミーを両親に預け、朝から晩まで働きづめの彼女だったが、必死さゆえに次第にモラルを踏み外していく―――。

アンジーという女性像は、おなじ女として相当痛々しいものがある。大切なものを見失って、野心に燃えて、空回りして傷ついて、それでもなお変われない。変わろうとしない。
ロンドンの不法移民問題や労働者問題を背景に、犯罪に片足を突っ込んだシングルマザーの、虚しい生き様を垣間見るのは哀しかった。
向けられた目はごく小さな範囲で、移民や低所得者しか登場せず、少ない製作費、短い上映時間であるのに、目を逸らすことができなくなった。暗い気持ちになりながらも、最後までアンジーの常軌を逸して行く姿を見届けてしまう。

いつか観たマイク・リー監督の『人生は、時々晴れ』も舞台はロンドンだっけ。荒んだ日常にある虚無や侘しさや貧しさゆえのダラしのなさは、もっとも嵌まりたくないものだった。
移民たちがこの国に逃れてきた理由とおなじように、低所得者階級に暮らす人々にも、なんらかの理由があるのだろうか。それは簡単には解決できない、なにか大きな社会の仕組みのせいなのだろうか。それとも嵌まらないにはまったく自己の問題なのだろうか。愛する人に必要とされ続けたい、切にそう思った。


監督  ケン・ローチ
脚本  ポール・ラヴァーティ
撮影  ナイジェル・ウィロウビー
音楽  ジョージ・フェントン
出演  カーストン・ウェアリング  ジュリエット・エリス

(96min/イギリス=イタリア=ドイツ=スペイン)







Last updated  2014.10.05 21:40:16
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2011.09.27
カテゴリ:映画
ベルギー発、陰惨な異色ホラー2本立て。
DVDに特典映像として収録されていた『A WONDERFUL LOVE』は、ヴェルツ監督のデビュー作。
どちらも面白かった。
『変態村』をはじめユーロ・スリラーが4作品ほど入ったDVDボックス『変態箱』が、ちょっと気になる。



【変態村】

 イベントやお祝いの席で歌い生計を立てているキャバレー・シンガーのマイクが、突如として怪しすぎる村人たちの餌食となっていく恐怖を描く。

巡業先の老人施設で一仕事終えたマイクは、移動中、バンの故障で立ち往生してしまう。
近くの古びたペンションに身を寄せたのだったが、初老のオーナー、バルテルの様子はどうもヘンだ、、、。
徐々に狂気を露わにするバルテルは、自分を捨てて出ていった妻とマルクを混同し始めていて、まず車を破壊して逃げ足を絶つと、彼を半殺しにして虜にする。
絶体絶命のマルクの運命は・・・・異常な村全体によって、さらに絶望へと突き進む――。


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いい意味で、まともな要素は欠片もない。マイクの絶妙にヘンテコな歌を皮切りに、いかれた世界にまっしぐら。悪夢のような出来事が諸手を広げて待っている。
痛々しい血みどろホラーではなく、とことんキチガイじみたすべてのシーンに、ちょっとした滑稽やキッチュさのあるホラー。ユーロ・ホラーの表現は独特で好き。

昏倒したマイクは、すっかり妻の身代わりに女装させられてしまうし、村人は豚と交合するし、たしかにエゲツナイ場面もあるけれど、絶妙なラインで憎めない稀有な作品となっている。
ピアノの即興曲で村人たちが踊るダンスなんか、最高にシュールだ。


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    監督  ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
    脚本  ファブリス・ドゥ・ヴェルツ  ロマン・プロタ
    音楽  ヴァンサン・カエイ
    出演  ローラン・リュカ  ジャッキー・ベロワイエ  フィリップ・ナオン

    (カラー/94min/ベルギー=フランス=ルクセンブルク)




【A WONDERFUL LOVE】


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 ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督衝撃のデビュー作。
内容は『変態村』の原型を感じさせる、見るからにネクラな中年女が、自分のバースデイ・パーティに若い歌手を自宅に招き、そのまま殺して恋人ごっこを続ける・・・・という超陰惨なホラー。

この女優さんがまた、もろにイッてしまっておられて、もうリアルすぎる狂った世界よ。
自分でもどうかと思うけれど『変態村』より好きだった。
とにかくどのシーンも画がインパクトあって、登場人物みんなヘン。女に恋している肉屋の青年とか、丸ごとソテーされた牛タンとか・・・・ヤバくてグロイんだけれどおもしろい。


  (21min)






Last updated  2018.10.09 22:31:56
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2011.08.25
カテゴリ:映画

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 『ある愛の風景』『アフター・ウェディング』の女流監督スザンネ・ビアによる最新作。本年度の

アカデミー賞外国語映画賞を受賞しています。

 デンマークで母親と暮らす少年エリアスは、学校で執拗なイジメにあっている。両親は別居中、

医師である父アントンはアフリカの難民キャンプでボランティア活動に奮闘する日々だ。

ある日、転校生のクリスチャンがエリアスを助け、ふたりは急速に仲良くなる。おなじ頃、アン

トンは一時帰宅し、息子たちとクリスチャンを連れて遊びに出た際、町の無法者にいきなり殴

られるハプニングにあう。その時、無抵抗を貫いたアントンの姿に煮え切らないものを抱いた

クリスチャンは、エリアスを巻きこみ男を懲らしめる計画を密かに企てるのだが・・・・・。

 

舞台はデンマーク郊外とアフリカの難民キャンプ。まったくかけ離れた世界に暴力は変わらず

に存在している。

暴力によって暴力は解決できない。それを痛いほどわかっているアントンが子どもたちに教え

てやれることは大きい。けれどもそんな彼さえ、アフリカの土地で極悪人を前に見捨てるという

行為に及んでしまうやるせなさ、不条理、、。

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2組の父子にとっても、アフリカの難民にとっても、イジメも大人も子どもも、抱えた問題に大き

いも小さいもない。わずかなムダさえないドラマのなかに、監督が訴えたい、未来を生きる子ど

もたちに与えたい暴力のない報復のない世界への希望を垣間見ることができる、すばらしい

作品だった。この監督、ほんとうにすごい。

しかも、ビア監督の描く男たちはじつにステキだ。クリスチャンの未熟な父親を演じたウルリク・

トムセンは『ある愛の風景』『ザ・バンク 堕ちた巨像』が記憶にあたらしい。アントン役のミカエ

ル・パーシュブラントは初めてみる俳優さんだったけれど、ものすごくいい存在感を出していた。

        †          

監督/ スサンネ・ビア

原案/ スサンネ・ビア  アナス・トマス・イェンセン

脚本/ アナス・トマス・イェンセン

出演/ ミカエル・パーシュブラント  ウルリク・トムセン

(カラー/118min/デンマーク=スウェーデン合作) 

 







Last updated  2016.07.17 08:23:24
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2011.08.02
カテゴリ:映画
 『ゲド戦記』から5年ぶりとなる宮崎吾朗監督最新作。
前作は壮大な児童書の映画化でこけたけれど、「コクリコ坂」はうそのようにおもしろかった。
脚本は父、宮崎駿。
脚本の良さだとしても、高齢化の進むスタジオジブリの継承者がたしかに育っているんだなーとうれしかった。
オリジナリティー溢れるアニメーションの灯を消してほしくないと願うから。

原作は、1980年に『なかよし』に連載された同名コミック。

1963年、横浜。
港の見える丘に建つ古い洋館“コクリコ荘”に暮らす16歳の少女・海は、大学教授の母に代わって、この下宿屋を切り盛りしている。
毎朝、いまは亡き船乗りの父に教わった信号旗を掲げるのが日課だ。
海の通う高校では、歴史ある文化部部室“カルチェラタン”の取り壊しを巡って学生たちによる反対運動が続いている。
ひょんなことから彼らの騒動に巻き込まれた海は、反対メンバーの一人、風間俊と出会いしだいに惹かれ合っていくのだが―――。


昭和40年代ってすごい時代だなー。
ノルウェイの森』と同じころ。学生運動が盛んで、仲間意識が強くて、議論を楽しめる風潮があった、今はなき熱い時代。
吾朗監督が生まれたのは1967年だから、当時を知っているはずはないけれど、昭和40年代の雰囲気をみごとに感じる。

学生運動と並行して描かれる、海と風間くんの恋模様はくすぐったく切ない。
風間くんは両親と血が繋がっていなくて、本当の父親は、朝鮮戦争で戦死した海のお父さんだった・・・という。
一枚の写真から事実を知ってしまった二人は自分たちの関係にひたすら悩む。
安っぽい<出生の秘密>的なシチュエーションだけれど、そこは少女漫画。


“カルチェラタン”の造形もさることながら、海ちゃんのお勝手仕事の風景や、家具調度品の数々が懐かしくてじつに魅力的。自分がもし過去の日本を経験できるならこの時代に生きてみたいなーと憧れる時代が背景となっていた。
文化系のいかにも風変わりな学生たちは、きっと監督自身もそうであるはずの愛ある描写なんだろうなぁ。適度のユーモアが楽しい。
原作が少女漫画なので、もちろんセンチメンタルだし、ノスタルジックに傾倒しているけれど、古き良き時代を忘れたくない方はピンとくるなにかに出会えるかもしれない。
主人公たちが、ふつうの日常を大切にひた向きに、未来を見据えて生きてる姿は、ただもうそれだけで宮崎アニメを観る意味に直結していて、こころが(一瞬だけ)まっさらになる。


吾朗監督は『ゲド戦記』で父親殺しをやった――と書いているのをどこかでみたことがある。今回は、古き良きものを見つめた、歴史や伝統を守っていくことの大切さを体現してみせた作品になっていると思う。
父親の作品のオマージュかと思える数々の見慣れたシーンも、リスペクトする想いを素直に感じる。


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船‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


監督/ 宮崎吾朗
企画/ 宮崎駿
原作/ 高橋千鶴  佐山哲郎
脚本/ 宮崎駿  丹羽圭子
声/ 長澤まさみ  岡田准一

(95min)









Last updated  2014.11.11 23:06:55
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2011.06.05
カテゴリ:映画

 

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 1920年代インドのベンガル地方を舞台に、過酷な大地に生きる一家の暮らしを描いた

三部作の、第一作。

父と母、姉と弟オプーの一家四人は、学はあるけれどまともな職に就けない父のために、

極貧の生活を強いられていた。ボロボロの家、居候の伯母さん、食べるものさえままなら

ない生活のなかにあるのは、『ブッダ』ではないけれど、生・老・病・死の苦しみ、そのも

の。

切実な苦悩がインドの厳しくも美しい自然環境のなかで、独特な死生観と宗教観を生

むことに、強く納得させられる作品だ。

過酷な日々にも、健気に手をとりあって生きているオプー姉弟の、愛情と生命力あふれた

無邪気な表情を見ていると、胸がじーんとしてきた。普段、自分が大切なものをいっぱい

見過ごして暮らしていることに気づく瞬間。

 

中盤、かねてから身体の弱かった姉が、病に倒れてしまう件が悲しい。とつぜんのスコー

ルに濡れながら、楽しげに踊った翌日から、高熱にうなされる日が続く。悲嘆に暮れる母

とオプー。出稼ぎに行ったまま戻らない父親が、ようやく土産を抱えて戻った時には、時す

でに遅く、姉は死んでしまった後だった・・・。

深い悲しみに打ちひしがれるは父親は、ある決意をする。生まれ育ったベンガルを捨て、

ヴァーラーナスィーへ旅立つと。もっと良い生活が待っていると信じて――。

 

『死ぬまでに観たい映画1001本』にも選ばれている本作。モノクロが美しいたくさんの名

シーンと、正統派の感動が味わえる傑作だった。

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監督・脚本/ サタジット・レイ

原作/ ビブーティ・ブーション・バナージ

撮影/ スプラタ・ミットラ

音楽/ ラヴィ・シャンカール

出演/ サビル・バナルジー  カヌ・バナルジー  コルナ・バナルジー

(モノクロ/125min)

 







Last updated  2013.12.15 10:34:17
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2011.03.24
カテゴリ:映画
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 趣味のある人生はいい。
何気なくやってきことが、追い追い生きがいになったりすることを思うと、なるべくたくさん
持っていたいものだと思う。
わたしは趣味と呼べるもの、映画と雑貨と読書しかないけれど、、老後ははたして大丈夫
だろうか(笑)
 本編は、スイスの小さな村、夫を亡くした悲しみからなかなか立ち直れずにいたおばあ
ちゃんマルタが、若い頃の夢を叶え、ランジェリーショップをオープンするまでの物語――。
シルクやレースをたっぷりあしらった下着は、ほんとうに可愛らしい。すべて手作り、
手縫いの刺繍がステキだった。
しかし、保守的な村では、破廉恥極まりないと責められるばかり。心ない噂や嫌がらせで、
なかなか思うように売れない。
内緒にしていた息子に店のことがばれると、強制的にランジェリーはゴミ捨て場へと抹殺さ
れてしまう・・・。
とはいえ、村の牧師である息子だって、隠れて不倫を続けているただの人間くさい男。村の
誰もが同じように描かれているから、なにげに微笑ましい。
アメリカ帰りの親友リージと共に、めげずに店を守り続けるマルタに、それぞれ家庭の事情
を抱える友人たちも賛同して、いつしかおばあちゃんパワー全開の様相となる。
ランジェリーショップは、抑圧して生きてきた彼女たちの、遅れてきた青春、希望の星なのだ
った。
バイタリティに感嘆して、女の長生きに納得してしまうこと請け合い。やっぱり女性は強い!
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パソコン教室でネットショップを開くと、とんとん拍子で商品は売れ始めて、マルタの手が足り
なくなり、村の老人施設にある刺繍クラブのお年寄りたちまで駆り出されて、なんちゃって村
おこしのような展開になっていくのも、愉快爽快だった。


ヨーロッパでは、お年寄りを主人公にした、ほのぼのとユーモアある作品が多く作られている
ような気がする。(または第二の人生を歩む物語)
ここで書いたうちでも、『ホルテンさんのはじめての冒険』『人生に乾杯!』、ドキュメンタリーの
アニエスの浜辺』、『ヴィーナス』などもそうだった。
お年寄りが幸せに、こころ豊かに暮らしていける社会が、ヨーロッパには浸透しているというこ
となんだろう。
日本はといえば、そんな作品は数が少ないように思われて、寂しげ。
80歳になるマルタをはじめ、お年寄りのすごく輝いている心温まる小品だった。
監督は長編2作目となるスイスの新鋭女流監督、ベティナ・オベルリ。ちなみに、このブログで
スイス映画を書くのは初めて。

†   †   †


原案・監督  ベティナ・オベルリ
脚本  ザビーヌ・ポッホハンマー
撮影  ステファン・クティ
音楽  リュク・ツィマーマン
出演  シュテファニー・グラーザー  ハイジ・マリア・グレスナー
アンネマリー・デューリンガー  モニカ・グブザー

(カラー/89分)






Last updated  2014.10.12 11:56:07
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2010.12.17
カテゴリ:映画
 純粋青年の初恋と、彼が起した奇跡の物語。監督は、本編が初の長編となる青森出身の横浜聡子。
全編とおしパワフルで、そして津軽弁。ゆえに、字幕ありを余儀なくされるでしょう。

 青森で野菜を作りながら一人暮らしをしている青年、水木陽人(松山)。ある日、野菜を売りにいった幼稚園で、東京から来た新任保育士の町子先生(麻生)と出会う。一目で恋に落ちた彼は、彼女の気持ちも考えず、ただひたすら猛烈アタックを開始する。
一方、町子には、事故で死んだ彼氏がいて、彼の吹っ飛んだ首がいまだ見つからない、、という過去の苦悩を抱えていた――。

障害をもった陽人は、単純すぎるほど純真で、町子先生はうんざりと戸惑いを隠せない。ずっとハイテンションのやかましい彼にイライラしてくる頃、ある事件が起こる。
近所の少年と畑に埋まって遊んでいたら、頭から農薬を散布されてしまい、翌日から体調が芳しくないのだ。そのせいでいつもより少し大人しくなった陽人に、町子先生の一言・・・・。

「今のほうがいい」

彼は、「農薬を浴びる=町子先生に好かれる」と信じ、日々納屋にこもっては農薬のシャワーを浴びることとなる。

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子どもみたいに無垢だから、町子先生がほしいとなったら欲しいし、ぜったいに結婚したい。けれども、ひとりで暮らす陽人の生活は危なっかしくいびつ。これが恋をして、もっといびつになってしまう。
壁のスケジュールボードに明日の予定を貼り付けて、たくさんの目覚まし時計をセットして、決められた規則でやっと正しく生活できていた陽人なのに、町子先生のことしか考えられなくなってからは、約束をすっぽかし予定変更ばかり。
しかも、農薬は確実に彼の身体を蝕みつづけていく。

たくさんの人に見守られながら暮らしている陽人の変化に気づいたのは、近くに暮らす祖母や、幼いころから彼を看てきた町のドクターだった。度重なる頭痛と吐き気に襲われて、病院に担ぎ込まれたときには、すでに手遅れで、陽人の心音は停止し夭折してしまうのだ――。

と、こんなところで終わっては、ウルトラミラクルなラブストーリーとはいえない。奇蹟が起こるのはここからだ。
なんと心臓が止まったはずの陽人が生き返る! 脈が止まったままなのに、、!!
ゾンビにも幽霊にもならず、瑞々しい肉体そのままに、家に戻った彼の元には、少しだけ変化が現れる。猛アピールにうんざりしていた町子先生が、彼の家に住み込んで、生ける標本となった彼を毎日丁寧に観察して、助けてくれるようになったのだ。

生前となんら変わりないけれど、食欲だけは消えている。なんにも食べなくなったので便意はないが、でも生きている。普通の会話を交わしながら、山の散歩道を歩くのがふたりの日課で、先生を想う無垢な恋心も健在だ。農薬シャワーだってこっそり続けている。(そのうち町子先生が見つけて驚愕するけど、、)


ありえないことの連続も、幻想と現実を結んだひとつのエピソードで、妙な説得力を放つ。
心音の弱まっていく陽人は、夢のなかで、町子先生の死んだカレシと出会う。首のない、けど洗練された彼。彼は陽人に、自分の履いている靴をくれる。息を吹き返したとき、陽人の足にはちゃんとその靴が光っているのだった。
恋人の見慣れた靴を履いて生還した陽人に、気づいて驚いたのは、当然町子先生だけなのだけれど。

子どものような彼がどんな末路を歩むかは、ごらんになってのお楽しみ。その時は、意外に早く訪れてしまう――。
無垢な愛をたっぷり注いだ町子先生に、ほっくりとした思い出と脳みそを遺し、第二の人生を終えた彼。やかましく思っていたはずなのに、この世からいなくなってしまうと、すごく寂しい。
そしてそんな気持ちにさせるのは、松山ケンイチの演技あってこそだったのかもしれない。
精神に障害のある主人公でなく、破滅的に生きるシャイな男の子、、というほがもっと好きになれたかも。

(カラー/120分)






Last updated  2016.01.28 15:51:37
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2010.11.17
カテゴリ:映画
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 敬愛する名匠アンジェイ・ワイダのひさしぶりの監督作は、ぜひ観ておきたかった。
ワイダ作品とのはじめての出会いは、十代のころの『灰とダイヤモンド』だった。独特なポーランド映画の雰囲気が気にいって以来ずっと好きだ。
80の大台に乗ったワイダの、人生の集大成ともいえる本作は、祖国ポーランドを見つめ続けてきたからこその重みを湛えている。

 カティンの森事件。この事件をわたしは知らなかった。
1939年、ナチスドイツとソ連に分割占領されていたポーランドでは、一万人以上の将校が捕虜となり収容所へと送られた。生きて戻らなかった彼らは、ずっと消息不明となっていたが、1943年にドイツ軍がソ連領で多数のポーランド人将校の遺体を発見したことから、この事件が発覚する。
本編では、将校の夫を持つ妻アンナを主人公に据えて、女性からの視点で事件の歴史的事実を描いている。娘のニカとともに、犠牲者リストに名前の載らなかった夫の無事を信じ、待ち続ける残された女たちの苦悩――。

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抑えられた色調で、淡々とすすんでいくドラマにはリアリティ。色調とともに音も抑えられている。時おり当時の映像を挟んで、より重い歴史の真実が告げられる。誰もがまだ、未来に、ソ連軍による大量虐殺が待ち受けていることを知らない。
ただ、アンナの夫アンジェイは、捕虜になってから、事細かに起る出来事を手帳に書き留めていく。いつか遺書になってしまう予感を感じたのだろう・・・・・・そのことは観客にも十分わかるから胸が苦しい。

デビュー作『世代』からはじまる抵抗三部作は、とくに好きな作品だった。その悲劇の若きレジスタンスたちを彷彿とさせる青年が登場していたのは、きっと過去へのオマージュ。
中盤の人間模様から若干道が逸れ、パーフェクトとは言いきれない作品かもしれないけれども、祖国の暗い歴史を、今またもう一度、見つめ直そうとするワイダ監督の屈強な精神には頭が下がる思い。
85歳となったワイダにとって最後となるかもしれない監督作品ゆえ、ファンにとっては特別だ。

 
   †


監督/ アンジェイ・ワイダ
原作/ アンジェイ・ムラルチク 『カティンの森』
脚本/ アンジェイ・ワイダ  ヴワディスワフ・パシコフスキ  プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
撮影/ パヴェル・エデルマン
音楽/ クシシュトフ・ペンデレツキ
出演/ マヤ・オスタシェフスカ  アルトゥル・ジミイェフスキ  マヤ・コモロフスカ

(カラー/122分/KATYN)







Last updated  2016.10.02 09:35:48
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2010.08.29
テーマ:読書(3020)
カテゴリ:映画
 はじめてのいしいしんじ作品。
すごく、おもしろかった。
曖昧で、やさしくて、滑稽で、あったかい。
人生の真実が背筋を伸ばしてちゃんとあり、あらゆる音に満たされている。

音楽家を目指した少年が経験する、デタラメだけれど温かい、人生賛歌の成長物語。
数学教師の父と、ティンパニストの祖父と、3人で暮らすぼく。
みんなは祖父の真似をして、ぼくのことをねこと呼ぶ。

おじいちゃんが束ねる街の音楽隊、港町をおそった災難、用務員さんの事故死、「ねずみ男」の最期・・・・・
ゆっくりと時間軸が前後して、さまざまなことが起こる。
つらいことも、嬉しいことも、とびきりおかしなことも、愛おしい出来事も。
出会った人々や事件をとおして、ぼくは成長していく。




 普段、当たり前のように感受している、音や色を、無性に愛おしくなる本だった。
人ごみの喧しさも、色の氾濫も、うちゃっておくにはもったいないほど大切なものに思えて、読んでいる間じゅう、いつもより五感を研いでいた気がする。

登場人物は、みんなが魅力的な変人で、しかもなにかしらビョーキ。
背骨の湾曲したひと、盲目のひと、‘ねこ’は体の大きくなりすぎるビョーキだし、数学者の父は心の病だったと思う。
だれもがビョーキ持ちなんだけれど、それぞれの歴史が滲む人生は、誰ひとりとして捨てておけないいいものなのだった。おかしすぎる言動もこころをくすぐる。

私的に好きだったのは、チェロの先生と、その娘のみどり色と、ボクサーのおじさん。
茶色いもやもやのつなぎを着たチェロの先生に、ぼくがはじめて弟子入りした日。初対面の先生の台詞がいい。

「さあ、やれよ」
「部屋をかたづけてくれよ」
「床もふけよな」
「そうだな」
「それはすごいな」

一読すると・・・ものすごく可笑しなメチャクチャ会話なのに、そのうち潔いこの人の生き様に打たれてしまう。そういったことの繰り返し。だれもが魅力的なのだ。
みどり色という名の女の子とぼくは、ゆくゆく恋人同士になるのだろう。ふたりの関係もまたたのしい。
清々しく潔く生きる、浪漫がいっぱいに広がる。



ぼくにしかきこえない、かわいたクーツェの声。あれは、いったいなんだったのだろう。麦ふみの音は。
無表情なそれは、もしかしたら、父と同じように心を病んでいた、ぼくの幻聴だったのかもしれない。
出会いと成長と共に、ぼくは治って、たしかな幸せのを聴いた。
読後感の爽やかな幸福さが、とてもいい。


人生のでたらめな悲喜劇を、真実の音がつらぬく―――― 「BOOK」データベースより 








Last updated  2015.02.20 20:53:51
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2010.07.26
カテゴリ:映画
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  1958年のドイツ。15歳のマイケルは、学校帰り偶然出会った年上の女性ハンナに心奪われる。肉体も心も、彼女の虜となったマイケルは、いつしかベッドの上で、ハンナのために本を朗読することが日課となるのだった。しかし、ある日を境に、突然ハンナは姿を消し、8年後、法学生となったマイケルは、ナチスの戦犯として彼女と、法廷で再会することになる――――。


 原作の『朗読者』を読んだのは、今年の春のこと。すぐに読み返してみたほど、ジーンとくる奥深な物語だった。主演のケイト・ウィンスレットに期待して、でも映画には期待しすぎないようにして観た感想は、まずまずというものだった。


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 純粋でまっすぐな恋愛映画のようでいて、じつはとてもシリアスな物語。ナチスドイツの爪痕や、思春期ゆえの情欲や、(ネタバレ注意!)文盲であることの生む障壁・・・・・胸が苦しくなるような内容がつまっている。
突然、自分の前を去ったハンナの真実に、逃げずに向き合った法学生の頃のマイケルは立派だった。しかし、いつの間にか、彼は変わってしまう、、、。

反面、ハンナの苦しみは、わたしはすごく理解できる。バレれるくらいなら、裁判で無期懲役を言い渡されたほうがまし―――そう判断するほど、ひたすら隠し通した秘密。
彼女の過去も合わせて、同情してしまう、ハンナという人物像に惹かれる。
結局、彼女は悲しい最後を迎えてしまうけれど、それは孤独ゆえのものだった。その孤独を生んだのは、紛れもない文盲であることと、戦争なのだ。彼女に非はない。

ハンナはマイケルのことを、きっと愛していたに違いない。はじめは、孤独を埋めるだけの存在だったかもしれないが、いつしか弟のように、友のように、家族のように慕って頼りたい、唯一の存在になっていったんだろう。
けれど、ハンナの過去を知ったマイケルは、一緒に背負い切れずに逃げ出してしまう。その重さに慄いてしまう。
悲しい卑怯が、この物語の大事な核をなしている。


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“ 逃げた ”とはいえ、囚人となった、読み書きのできない彼女に、数年後、彼は朗読を録音したテープを送り始める。けして会わないまま、淡々と。
テープと本を照らし合わせ、独学で文字を学び始めたハンナから、ある日、初めて、たどたどしい文字で手紙を受け取った、マイケルの驚愕した場面が印象に残る。同時に、文字が読めるようになったハンナの、初めて書物に触れる喜びも、印象深い。
そんな彼女に会いに行こうとせず、手紙の返事も乞われるまで書こうとしない、一歩退いたままのマイケルが、じわじわと悲しかった。


 回想シーンで、青年期のマイケルを演じたデヴィッド・クロスは、初々しいけれどそれ以上の魅力には欠けているかもしれない。成人したマイケル役にはレイフ・ファインズだけれど、やはりこの俳優さんを魅力的だと思うことができない。
ケイト・ウィンスレットがひとりで演じたハンナは素晴らしいのだけど。

原作では、映像になると薄れてしまった、ドイツの歴史から切り離すことのできない過去と、次世代が向き合わなければいけない大きな問題が秘められている。ドイツを舞台にしていながら、言語が英語になってしまったのは残念。ぜひ原作も手にとっていただけたら、と思う。


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監督/ スティーヴン・ダルドリー
製作/ アンソニー・ミンゲラ  シドニー・ポラック  ドナ・ジグリオッティ  レッドモンド・モリス
原作/ ベルンハルト・シュリンク 『朗読者』
脚本/ デヴィッド・ヘア
音楽/ ニコ・ムーリー
出演/ ケイト・ウィンスレット  レイフ・ファインズ  デヴィッド・クロス  レナ・オリン

(カラー/124分/アメリカ=ドイツ合作)








Last updated  2015.01.17 19:01:39
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