佐藤竹善のオフィシャルブログ『OKRAの軍艦巻き』

2007/09/28(金)10:33

目からウロコ、の下にウロコ

disillusion(30)

20年以上のレコーディング生活の中で、それなりに自由な、時には非常識な手法は何度と試してきたつもりでいたし、このビートルズからもたくさんのものを学びながらトライしてきたつもりだったが、ま~~だ甘かったわああ <挑戦と失敗と結果> ポールは「ヴィブラートは一切なしだ! ヴィブラートは一切やらせるな!」と言い張った。いいヴァイオリン奏者にとってヴィブラートなしで演奏させるのはひどく困難なことだ・・・結果的に彼らはそんなことはできなかった。 でもあれでよかったんだと、ポールもあとになって気づいたようだった。・・・ジョージマーティン <常識と音へのこだわり> シタールの録音にひどく苦労した。ピークがあまりにまちまちだし、波形が複雑なので録音がとても難しい。・・・リミッターを使えばよかったんだが、そうすると音に響きがなくなってしまうからね。・・・ノーマンスミス <かくし味> Girlで聴かれるtit tit tit....というコーラスはTit(おっぱい)という言葉の繰り返し。 <常識の打破の連続にある一背景> ノーマンのあと、1stエンジニアに若干20歳のエマリックが採用された理由は業界きっての鋭い耳と新鮮なアイディアでいっぱいの頭を持っていた上に、既成の、あるいは固定概念にもとづいたテクニックをなんら持ち合わせなかった。 <挑戦と成功と結果> エリナーリグビーにおいて、ここで再びヴィブラートの問題が持ち上がり、ジョージマーティンが今度はヴィブラートをかけずに演奏できるかと訊ねている(テープに現存)。 ・・・今度のプレイヤーたちはそれができたし、この曲に関してはそちらを好んだ。  ポールとエマリックは蓄音機が発明されて以来、誰も録ったことのないようなサウンドを作りたがった。 秘密はマイキングテクニックにある。「エリナーリグビーでは、弦のすぐそばにマイクをセッティングしたんだ。弦に触れるくらい近くにね。あんなことは誰もしたことがなかっただろう。 ミュージシャンはビクビクしていたよ。」 Got to get you into my lifeでは、ブラスセクションにこれが試されることになる。 ホーンの出口何インチのところにマイキングされ、リミーターを目一杯かけた。 <非常識> 「For no oneで、彼らが録音したテープを聴かされて、音楽スタイルとしては褒められたもんじゃないと思った。 BフラットでもBマイナーでもなく、どっちつかずでね。(当時、ビートルズはテープの回転数を様々に変速させて歌や各楽器の演奏の独創的インパクトをさがした。録音、再生時、様々な状況においてである) ポールは「ここになにか入れたいんです。うまく合うようなものを吹いてもらえますか?」(とてもアマチュアチックだ)と言ったが、彼らがどんなものをはっきり求めているのかわからなかったので、中音域のバロックスタイルのソロを作ったんだ。」・・・アランシヴィル(当時、フィルハーモニー管弦楽団の首席ホルン奏者) ・・・他多々多々・・・ ・・・・・ ともすれば、現在でも見識の狭い(あえて見識と呼びたい)アレンジャー、ミュージシャン、エンジニア、プロデューサーなどならば、ついつい嘲笑してしまうような行動からあれだけの作品とサウンドは生まれているのである。 また彼らの時には幼稚ともいえる発想や行動にぴたりと追随していったジョージマーティンやエンジニアたちのスタンスも彼らには欠かせなかったようである。 この本を読んで、若き時の「知らない」ということの自由さと「知る」ことの怖さと、そして「より知る」ことがいかに「知らない自由さ」に昇華されるかを学んだ。 ビートルズは音楽的才能集団のみならず、創ること自体にも全くの自由人だったのである。

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