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Exhibition View (#2)

"The World is Mine" #2

@Hiromi Yoshii FIve
'05 01/07-02/05
泉太郎/奥村雄樹/しみづ賛

☆企画者/出品者・奥村による、展示風景の紹介です☆



六本木駅を出る。
アマンドの横の小道、芋洗坂を下りていくと、
右手に、現代美術の画廊が集まっている、
「Complexビル」が見える(MAP→ココ)。

その左側、1FにHiromi Yoshiiがあるビルの4~5Fに、
会場である「Hiromi Yoshii Five」がある。
2Fの「TARO NASU GALLERY」、
3Fの「Gallery Min Min」を越え、
階段を上っていく。

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なにやら、こんな文字が。
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そして、その左上に、
この展覧会がここから始まることを告げる、
一枚の額装された小さな写真。

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ちょっと写りが悪いんだけども..。
男性が写っている。
でも顔のところが円く白い。
…ってしらじらしい説明はやめといて、これ、
奥村自身の作品。
証明写真用のブースに、円い鏡を持って入り、
フラッシュを反射させるように顔の前に鏡を掲げて、
撮影ボタンを押したのだ。
その人であることを証明するはずの写真の、
その人であることを証明するはずのその人の顔の部分が
ホワイトアウトしちゃってる。
見ようによっては円く光ってるし、
見ようによっては、顔の真ん中に円い穴が開いていて、
背景の白が見えているようでもある。
個人的には、キン肉マンに出てきた、
顔に穴があいてる超人「ブラックホール」を思い出したりする。

それはさておき、
この写真を背に、階段を上っていく。

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進行方向に部屋が見える
(#1のときはこの部屋は使っていなかったのだけど)。
そこに入ろうとする直前、おや、右側に
テレビがあるぞ。

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バシッ、バシッと光が現れては真ん中に収斂して消える。
その繰り返し。ひとつのバシッが0.1秒ほどか。

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これまた奥村の作品で、
スイッチが消える瞬間のテレビ画面をデジタルビデオカメラで
何十回も撮影し、それをひたすら続けたもの。
終わりなき「終わり」の連鎖。
終わりそうで終わらない、「終わり」。
いつまでたっても新たな始まりは訪れない。
バシッ、バシッというフラッシュのたび、
私たちは前方につんのめりつつ、
また巻き上げられる。
これを見ていると、単純にトランス状態に陥る。快楽的。

そして部屋に入ると...

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さきほどの映像から抜いた静止画が印画紙にプリントされ、
写真として提示されている。
映像では速すぎて捉え切れなかった、
収縮する過程の光の姿。

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反対の壁にも一枚。

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これは、テレビ画面が消えてから2、3秒すると、
まれにボワッと現れる「虹」の姿。

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ちなみに、もちろん、僕のテレビは液晶ではなく
ブラウン管です。

この部屋を出て、
5Fへ向かう階段の手前には...

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火災報知器の赤い○の横に、
なにやら換気扇らしきものが。

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ファンの部分と、その奥が黒く塗られている。
これまた奥村の作品で、タイトルを言うと脱力するが、
「Black Hole」。
換気扇は風を吸い込むばかりで吐き出さないのだ。
とはいえ、これはもちろん「見立て」に過ぎないし、
展示用の壁にとりつけたのだから、向こうに穴が開いていて
外に空気が運ばれるわけでもない。
吸い込まれた空気は圧縮され、溜まり、澱み、鬱積する。

これも、シャレは置いておいて、
真っ黒な回転と対峙し、見つめることが大切。
そのときあなたの脳に何がおこるかが大切。

さて、前方を見よう。

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グリーンやピンク、白や赤、
ポップな色に彩られた、
ガラクタやおもちゃ、モーターとファン、
電球とコード、彫刻的造形物が有機的に接合し、
連動する、しみづ賛による立体作品だ。

全体として、秋葉原の一角のネオンのように
点滅し、乱舞している。

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写りが悪くて申し訳ない...。
洗剤「トップ」の箱を基盤とした、
機械的でありつつ有機的な集合体。
トップの電球はめらめらと点滅し、
右上のファンはモーターで回っている
(ちなみに、さきほどの換気扇同様、
黒いファンであり、そこに奥村の作品との
連動感を感じる...人もいる)。

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正面の壁の高い位置....
リッチな方の家では鹿の頭部の剥製が来るところには...

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垂れ下がった二本のコードのうち、
グリーンの方のスイッチを押すと、
一番上の、おそらくは外装を剥ぎ取られた
マーチングベアのおもちゃが動き出す。

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そしてその左下に佇むのがこれ。

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タイトルの「グリーンマン かっぱ」が示すとおり、
緑色のひょろひょろとした人間のような姿のヤツが、
黒いサングラスをかけ、
みうらじゅんのような長髪をたらし、
口から電話の受話器と本体をつなぐクルンクルンの
コードが出て、弧を描いている。

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彼を背に、さらに階段を進むと...

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泉太郎の作品がひしめく、
まるで部屋のような踊り場だ。

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正面の映像は、ちゃんと撮影できなくて残念なんだけども、
ヘルメットとゴーグルをはめ、
かぎりなく安っぽい「スペース・パイロット」的なヴィジュアルを
身にまとった、ジャージ姿の泉太郎が、
ゴミや雑誌で埋まった彼の部屋の一角で、
そこらにあるビデオカメラやポータブルCDプレイヤーや携帯電話を、
おそらく宇宙船に見立てつつ動かし、
「ボフゥー」「ドシューッ」「バフォッ」「ジャーン」「シュー」
などと効果音を発している。

誰もが子供の頃、おもちゃを使ってこれに近いことをやってたと思う。
マジンガーZの超合金を持ち、ロケットパンチを手ではずして
前方に移動させつつ、「ドシュ~~~~ン」と口走ったりとか
しませんでしたか?

この映像においては、
CDプレイヤーのふたは「グゥゥゥゥオオォーーーーン」と開き、
中からCDが「ボフゥーーーーッ」と発射されたUFOのように飛び出る
(もちろん泉氏が指で持って動かしてる)。

泉氏が持つビデオカメラの画面には、
カメラの中に入っているテープが再生されているのであろう、
戦闘機のコックピットのような情景が写っている。
といってもそれは、ゴミ部屋で、
そこらにあるものを寄せ集めて作ったジョイスティックの
ようなハンドルを両手で掴み、
それを左右に揺らす泉氏なのだが。
ビデオカメラはその動きにあわせて、
「ドシーン」「ドシーン」と左右に足(?)を
踏み出していく。どうやらロボットにトランスフォームしたようだ。

ちなみに、僕にはよくわからなかったが、
この映像にはヤマトやスターウォーズのパロディ的な
情景も含まれているようだ。

さて、もうひとつテレビがある。

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こちらに写っているのは、
ピンクの「リモコン」を握り、スティックを傾ける手前の人と、
画面前方にてくてく歩いていく後ろ姿のオバチャン。

泉氏によれば、まったく見知らぬオバチャンを
ストーカーよろしくつけまわし、
まるでコントロールしているかのように
その歩く方向や歩調に合わせて、
自作のおんぼろリモコンのスティックを傾けたり、
ボタンを押したりしているのだ。

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"泉は「他者」を単なる「動いている図形」として取り込み、
勝手に「支配」してしまう。そのとき、他者との「関係」が
常に孕む暴力性は剥き出され、ナンセンスな笑いへと転化
させられる"

と僕はカタログに書いている。
とにもかくにも、どちらの映像も、
ひきつった笑いをほとんど強制的にひきおこす。
どうやらそれは国や人種を問わないようで、
外国からのお客さんがよくゲラゲラ笑っているのに
遭遇した。

このリモコン作品がうつるテレビの左上には、
いくつかの写真が、
ティルマンスを思わせる手つきで(笑)掲示されている。

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雑誌のグラビアなどにうつるアイドルたちを
斜めから撮影したもののようだ。
撮影する角度によってさまざまに歪んだ
美少女たち。

こんな風にされてたりもする。

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他にも、紹介しきれないほどの
写真、ドローイング、ペインティング、オブジェ、
その他いろいろ。

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#1の横谷奈歩の映像インスタレーション
とはまた違った方向から、
泉太郎もこの特異な空間の閉鎖性、鬱積感を利用して、
ジメジメとしつつも、同時にどこかカラッとした
「屋根裏部屋」を現出させたと言えるだろう。

そしてまた私たちは階段を下りていく。

<了>

#1展示風景→コチラ


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