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テーマ:ワイン大好き!(32372)
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私にはアルザス出身の友人がいる。
正確には、「いた」。 長身・金髪・ブルーアイズで、独仏英日の4ヶ国語を話す色男。 アジアにおけるマイノリティーと政治について学ぶ為に日本に来ていた彼は 尊大で、なのに繊細で、なぜか昔の私と妙に馬が合った。 何時ものように飲んでいたある日、 4ヶ国語を話せるということは凄いことだよな、と呟いた私に彼は、 少なくともバイリンガルであることは、彼の地とスイスの一部では普通なのだ、と云った。 それまで余り見たことのなかった彼の寂しそうな横顔を、今も覚えている。 私はアルザスの歴史を、その決して幸せとは云えない歴史を、よく知らなかった。 その後EUの講義で少し学んで、やっとその存在を知ったくらいだった。 私には故郷というものがないから、彼の気持ちは解らないけれど あの時の私の発言と彼の寂しそうな表情を思い出すと、何か遣り切れない気持ちになる。 アルザスのワインは、ボトルの形状から品種まで その複雑な歴史を反映しているといって良いだろう。 今日のワインは、そんなアルザスのワインの中でも現代的な一本。 ・Albert Man / Alsace Pinot Noir 2000 ![]() エッジに海老茶が入りかけ、熟成を伝える。 香はパカレに極めて近い。 クリーンだが特徴的な、清楚な花と赤系果実の香。 味わいは非常にレベルが高く、赤系果実と酸の綺麗な構造。 こちらもパカレのワインによく似ている。 最後に甘みが残るが、酸と少しの苦味が締めてくれるので気にはならない。 惜しむらくは、12.7%というアルコール度数より 少々高く感じるアルコール味。 但し温度が上がると、03年のブルゴーニュに近い 少しくどい甘みがでるので(香に焦げ臭は無い)、 低めのワインで楽しむべき1本だと感じた。 ![]() 私が大学を卒業すると同時に、彼は国に帰ってしまい それから暫くの間続けていたメール交換も、 些細な行き違いから途絶えてしまった。 今思い出してみると、彼とは居酒屋の安ワインしか酌み交わしたことは無い。 精々が、私の居た祇園のバーでシャンパンを飲んだくらいだろう。 そしてそのバーも、今はもう無い。 今の私と彼がまだ友人だったら、そして一緒に飲むことができたら 何処かの店で、こんなワインを共にすることもあるのだろうか。 そして、どんな話をするのだろうか。 正直に云えば、彼のことを思い出したことなど殆ど無かった。 きっと彼もそうだろう。 昔、酒を飲みながら、彼と何を話していたのか。 それすらももう、思い出せない。 そんな私に、彼との再会を願う資格はない。 多分、彼にも。 ワインの最後の1杯は、それを教えるかのように、少し苦い味がした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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