家曜日~うちようび~

2019/09/11(水)08:56

「IKEAの物干しラック」と「大人になりたい!」

Q輔とU子と「置いてある物」(34)

ちっす、Q輔っす。 え~っと、突然ですが、 僕ねえ。 「童心に返る」とか、 「子供のままの大人として」とか 「子供心を忘れたくない」とか、 この手のフレーズを見聞きすると、昔っから妙な違和感を禁じ得ないのよね。 自転車乗ってたらヤブ蚊が目に入って、 慌てて水道で洗い流したけど、まぶたの裏、まだ何かゴロっとしてる。 みたいな。 心にそんな、ゴロッとした、妙な違和感。 思えば、僕達は子供の頃、「早く大人になりたい!」と思い続けていた筈ではないかい? 少なくとも僕は、毎日、毎晩、「一刻も早く大人になりたい!」と思っていた。 思春期の頃なんか「一分でも早く、いや一秒でも早く大人になりたい!」と願っていた。 大人になれば、好きな物を買って、好きな物を食べて、好きなことが何だって出来る。 大人になれば、もう大人に叱られることはない。大人になれば、もう大人に頭を下げなくていい。 大人になりさえすれば、大人が勝手に決めた理不尽なルールーに縛られなくていい。 大人になっちまえば、こっちのもんよ! 大人になれば、きっと世界が変わる!  と、中学校の薄汚い机にうっ伏しながら、日々妄想を、はちきれんばかりに膨らませていた。 だって、当時の僕等の学校生活は、教師たちの理不尽な行動に、満ち満ちていたのだから。 これは、IKEAの物干しラック。僕の妻の、雨の日のお洗濯の必需品ざます。 イケア イエル IKEA JALL 物干しラック 室内/屋外用 ホワイト 002.428.91 【メール便不可】 価格:1129円(税込、送料別) (2019/9/8時点) 晴天の日は、洗濯機と壁とのデッドスペースに、すっぽり収納してありんす。 中学に入学したての頃、 まだチンチクリンの学ランを着て学生帽を深々とかぶり、僕が意気揚々と登校していると、 正門のところで、ある教師にすれ違いざま学生帽のつばを掴まれ、頭をぐいっと乱暴に引き寄せられた。 「お前、○○の弟か?」 教師は姉の名前を出した。二歳年上の僕の姉は、当時地元で有名な札付きの不良だった。 「・・・はい。」 僕がそう答えると、しばらく教師は僕をじっと睨み据えていたが、次の瞬間突然僕をビンタした。 もう何がなんだか、突然の出来事に状況が把握出来ず、僕がただ頬をおさえ立ち尽くしていると、 教師はおもむろに一言、「邪魔だ!行け!」と言った。 ある朝、僕の親友のかっちゃんが、 昇降口のプランターに水を撒いていた教師の、その水道のホースを、うっかり踏んでしまったことがあった。 ただそれだけのことであったが、その教師は壊れてしまったかのように憤怒し、 登校する大勢の生徒が何ごとかと足を止めるほどの大声で、かっちゃんを猛烈に罵った。 興奮した教師は、手にしたホースの水が、かっちゃんの靴にかかっていることには、気づいていなかった。 雨の日、うちは浴室乾燥機を使って洗濯物を乾燥させまーす。 そん時、浴槽の中で、このように開くでやんす。 僕は幼少の頃、髪の毛の色素が薄く、生えてくる髪の毛が栗毛色で、ところどころ金髪も混じっていた。 だから頭髪検査の時、「脱色してるんだろ?正直言え!」といつも疑われた。 生活指導の教師からは「そのうち白髪染めで真っ黒にしてやるからな。」と、信じられないことを言われた。 いい加減腹が立ったので、自ら白髪染めで真っ黒に染めて、その教師のところへ見せに行った。 「おっしゃる通り染めてきました。先生、今後僕の頭皮から栗毛が生えてくるのを一緒に確認してください。」 教師は鳩が豆鉄砲を食ったように驚き、ずっと無言だった。 「あ、しまった! 髪を染めるの、校則違反でしたっけ? 僕、謹慎処分になりますか?」 と僕が付け加えると、教師は「ち、いまいましい奴め」とでも言いたげな顔つきで、やはり無言で立ち去った。 僕が密かに好きだった同じクラスの女の子は、 コーラス大会の練習の時、どうしてもその娘だけ音程が外れてしまうというので、 男の音楽教師に、クラスメイトが見守るなか、一人で何度も同じフレーズを歌わされ続けていた。 音が外れるたびに、メガホンのように丸めた楽譜で、バッコーンっと頭を叩かれた。 その娘が泣き出しても、許さなかった。執拗に、何度も何度も、繰り返し歌わせた。 その娘の音程は、嗚咽で、よりひどくなるばかりだった。 もし、この歌に意思があるならば、歌は、絶対こんなふうに歌ってほしいなんて思ってねーよ! 歌に失礼だ! 歌に謝れ!  こんなの、絶対、音楽じゃねーよ! と、教師の横暴を横目に、どうすることも出来ない僕は、歯を食いしばり、心の中で思うしかなかった。 ユニットバスのランドリーパイプの下部で、併用して使うずら。 体育の授業の時、僕達男子生徒は、 いつものように先生が来る前に運動場に軍隊にように整列して、先生を待っていた。 体育教師が職員室からのっしのっしと歩いてくる、あれ、何だかご機嫌斜めのご様子? 職員室で何があったか知らないが、僕等の前に立つなり、開口一番、 「オメーら!分かってんのか!」 ??? 「おい!分かってんのか!」 は?  なにごと? 「分かってんのかって聞いてんだよ!」 三度も問われると、みんな「ハイ!」と大声で返事するようになっていた。 調教完了であろう。僕も思わず「ハイ!」と返事してしまった。 「分ってねーんだよ!」 ・・・おーーい。 「分るまでグランド走ってろ!」そう言い捨てて教師は職員室に帰って行った。 僕達は一時間、グランドを走り続けた。 僕の妻は、中学生の時、バスケット部だった。 妻のバスケット部の顧問教師は、体育館での練習中、体育館の舞台上からコーヒー片手に生徒を指導していたという。 そして練習が気に入らないと、なんとコーヒーカップを床で叩き割り、職員室に帰ってしまうのだという。 その度に部員たちはバラバラに割れた陶器を片付け、ガムテーブで破片をペタペタと掃除して、 その後、部員一同で職員室の顧問のところへ行き、その前に一列に並んで、 「先生、すみませんでした! どうか、また私たちを指導して下さい!」と謝罪をしたのだという。 ・・・気違い沙汰である。 ちょっとしたスペースの有効活用で、雨の日でも、大量の洗濯物が一度に干せちゃうなり。 早く大人になりたい! 大人になって、一刻も早く、こいつ等と戦いたい! 大人になっちまえば、こっちのもんよ!  大人になれば、きっと世界が変わる!  そして、 いつしか、僕は、大人になった。 んが、 あれれ?  世界は、何も変わらなかった。 なんかね、大人の世界も似たよーなもん。 いや、むしろ、子供の頃より、何倍も理不尽に満ちていた。 好きなことなど出来やしねーし、叱られる数も、頭を下げる数も、べらぼーに増えた。 かつて僕を苦しめた、あの「理不尽な者たち」との戦いは、 まだまだ続いているのである。 だから、僕は、大人になりたい。 今でも。 今こそ。 もっと、もっと、大人になりたい。 いっぱい、いっぱい、勉強して、 立派な大人になりたい。 「童心に返る」とか、 「子供のままの大人として」とか 「子供心を忘れたくない」とか、 すっかり大人に成り果ててしまった者が、言うのでしょう。 僕には、どーも、みょーな、違和感がある。 だって、僕は、 今もまだ、その途中だから。 にほんブログ村

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