私は、ママのお腹から生まれたのに、
どうして、パパに似ているの?
一昨日の飯どき、小四の長女に、突如投げかけられました。
僕、オロオロこいちゃった。
赤ゃんは、どうして生まれるの?
つって、直球なら逆にね、父としてバチコーンって受け止めてやったんすけどね。
何しろ変化球だから、曲線を描き落ちるシンカーだから、
いや~、焦った焦った。
不意に、信長が豪雨のなか、奇襲しかけてきやがった。
義元たじたじ。
これぞ、性教育の、桶狭間。
父として何か言わねば、とは思うものの、
・・・お、お、お、お、お、お、お、
つって、すんげー、どもっちゃってさ。
山下清率、ちょー高め。
さっき、ごはん二杯も食べたのに、思わず、
お、お、お、おむすびが食べたいんだな。
つって、言っちゃいそうだったもん。
よ~し、こうなったら、親として、父として、愛する娘のため、
真剣に、全力で、当たり障りなく、波風立てず、この場をやり過ごそう。
そう、決心し、
とりあえず、かろうじて、歯磨き粉チューブの最後の一回のように絞り出した言葉が、
・・・トッピングしといたから。
でした。
僕) ・・・トッピングしといたから。
長女) ・・・トッピング?
僕) うん、君が生まれる時に、追加でね。パパの目鼻立ちと性格をトッピングでお願いしといた。
長女) ・・・誰に?
僕) そりゃおまえ、赤ちゃんを宅配してくれるコウノトリよ。
長女) そんな、ピザ屋みたいな!
長女の頭上に、見えるはずない「はてなマーク」が、ポンポンポンと、立て続けに三つ見えた。
・・・やっべえ。
長女が、不平、不満、不服、非難、異議を足して5で割ったような顔をしてこちらを見てやがる。
沈黙すな! 矢継ぎ早に何か言え! 何でもいい! ほら、何か言えっての!
・・・あ、あのさ、
よく「鼻からスイカ」に例えられるね。
知ってた?
赤ちゃんが生まれる時の痛み、鼻からスイカが出るぐらい痛いらしいよ。
鼻からスイカって!・・・ははは、すごいね。
てかさ、あの例え、
「鼻から赤ちゃん」でよくない? 何でスイカ?
つって、誰もが一瞬疑問に思うんだよね。
でも「鼻から赤ちゃん」を想像したところで、
何故か「鼻からスイカ」ほど、痛みのリアリティー湧かないのよね。
不思議だね、やっぱスイカが痛いよね。
んじゃあパパ、更にリアリティーを追求してみるね。
「肛門からスイカ」
想像。
い、痛ってえ。たまらなく痛てえ。
か、かなり痛みが現実味を帯びてきたぞ~。
よ、よ~し、パパ、更にリアリティーを追求してやるぞ。
「尿道からスイカ」
うおー! うおー! うおー!
・・・ちょと、何言ってるか分かんない。
安心してください。娘に突っ込まれる前に、自分で処理しときましたから。
その時、アワアワする僕を見かねた妻が、ひと言。
はい、そこの君、
そのうちママが、しっかり教えてあげっから。
みんな、今日ところは、黙ってメシを喰え。
そう、申してくれました。
長女、しぶしぶ、は~い、なんつって返事して。
た、た、た、たしゅかったぁ~。
ママ、かっけー!
やっぱアレだな、二回も「鼻からスイカ」を経験しとる人は、貫禄が違うな。
それから、自分の不甲斐なさに、打ちひしがれた僕は、
いつも見慣れた古女房の背後に、神々しい後光すら感じながら、
妻君のおっしゃる通り、
ひたすら黙ってメシを喰い続けたのさ。
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