テーマ:暮らしを楽しむ(383609)
カテゴリ:Q輔。「家」とは「ホーム」のこと。
実は、義父の体調が芳しくありません。 コロナ自粛で、けっこー家にいて、ふれあう時間が増えたからかなあ。 あらためて、娘たちが、カワイイのである。 長女、小学校五年生。次女、小学校一年生。 これはちょっと、早いとこ彼女たちに反抗期を迎えてもらって、 さっさと悪態をついてもらって、ガン無視してもらって、 ウザっとかキモっとか吐き捨ててもらったほうが、どうやら自分の為に良いのではないか? このままでは、そのうち娘たちに骨抜きにされてしまう。自分がダメになってしまう。 我ながら、そう心配になるほど、何や知らんけどカワイイのである。 いすれ結婚? どこぞの馬の骨にくれてやる? ないないない! そんなこんなで、最近ちょいちょい義父の気持ちを察するようになったのである。 義父は、僕に負けず劣らず偏屈な人間であるが、 出会った頃、ザ・社会のクズだった僕を、何故かとても寛大に受け入れてくれた。 もしもの話。年頃になった娘たちが、若き日の僕を、父である僕の前に連れてきたら…… ああ、胸が痛い。なんでもいいから錠剤欲しい。瓶ごとカラカラっと飲み干したい。 僕には、とても義父のような広い心はない。 いまだにとても苦手な義父だが、その点で尊敬し、一生頭が上がらない。 義父に初めて挨拶に行った時、僕はフリーターだった。 ちなみに、僕と妻は六つ年が違う。 妻は、高校を卒業したばかり。 「ちーっす! 娘さんと結婚を前提につきあっちゃてまあーす! ぽっくん、フリーターさんず! てか、今のバイトも先輩気に入らねーから辞めましたあー! 現在、バリバリ無職どえーす!」 てな感じで、元気いっぱい挨拶したと思う。 その時、義父に、 「おま、いい度胸してんな。度胸だけは買ってやる。 おまえに、ひとつだけ、いいことを教えてやろう。定職に就け」 つって、言われて、 「んーだよ、定職に就かなきゃ、娘くんねーのかよ。ったく、ケチくせーオヤジだぜ」 つって、内心思って、 その内心が明らかに顔に出ちゃっている僕に向かって義父が、 「おい、メシ行くぞ!」 つって、これは罰ゲームかしらんちゅうぐらい、たらふく焼肉を喰わされた。 思えば、義父、心が広かったねえ。 これ、僕だったら、横綱ばりのシコ踏んで、大量の塩撒いて追っ払ったと思う。 しぶしぶ就職した僕は、それから約一年後。 「お義父さんのおっしゃる通り、定職に就きました。 さあ、パパさん、娘さんを僕に下さい。ほら、下さい。とっとと下さい」 つったら、義父、しばらく考え込んだ後、 「……分った」 つったんだよ。 いやいやいや! 甘いっつーの! 僕みたいなダメ人間に、大事な一人娘あっさりやるなっつーの! いやー、義父ってば、心広いよねえ。 僕なら、戦う! 鈍器のようなモノで、相手にとどめを刺す! 「で、式はいつ挙げるんだ?」 なんつって、その後の話の流れで、僕のパピーが聞くから、 「結婚式を挙げる気はさらさらナッシングでありんす! だって、僕たち、お金ないんだもーん!」 なんつって、ダディーに元気ハツラツと答えたら、 「なめてんのか!」 何だか知らねーけど、先程と打って変わって、すんげー怒られちゃって。 「おまえら、結婚は、二人だけのためにするもんじゃねーぞ!」 とか何とか、こんこんと説教されちゃって。 「えー、うそーん、まじー? まじっこマジマジー? 式って挙げにゃならんの? だりー。また金貯めにゃならんがや、また働かにゃならんがや、ちょーだりー」 つって、その内心が顔に出まくっちゃってる僕に向かって義父が、 「おい、酒呑み行くぞ!」 つって、しこたま飲まされて、僕、べろんべろんになって。 んで、義父が今晩泊まってけっつーから、まだ十代の妻の部屋の、妻のベッドで二人で寝て。 いやー、義父ってば、まじ、心広いねえ。 これ、僕だったら、一晩自分と添い寝の刑だぜ。 さらに二年後。 式の日程が決まったので報告に行った時。 「ちなみに、新婚旅行はどこ行くんだ?」 ちゅうから、 「新婚旅行の予算は今はないので、式が終わって半年後ぐらいに、ディズニーランドに行こうと思っとります!」 「で、で、で、ディズニーランド?」 「はい、深夜バスの日帰り格安ツアーで!」 つったら、義父、 「情けなくて、涙が出る。かりにも俺の娘の一生に一度の……」 と、途中まで言いかけて、 「……まあいい。おい、Q輔、メシ喰え。酒呑め。我が息子よ、今日はとことん俺に付き合え」 だってさ。 そんなこんなで、今に至る。 あの時の義父の、呆れたような、諦めたような、 そして、どこの馬の骨とも知れぬ頼りない義理の息子候補を、どこか慈しんでくれているかのような、 あの表情が、今も忘れられない。 娘たちが、カワイイてしゃーない。 長女、小学校五年生。次女、小学校一年生。 僕も、いつか愛する娘を馬の骨にくれてやる時は、 あの日の義父のようにこれでもかと複雑な表情を、 せめてもの腹癒せに、 メシと酒と共に喰らわせてやろうと思っている。 にほんブログ村 ↑ポチッと一枚! にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.02.27 21:16:07
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