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家曜日~うちようび~

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2022.02.27
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​ 実は、義父の体調が芳しくありません。

 現在義父は病院と自宅を行ったり来たりしながら闘病をしています。

 ふと、過去にここで義父のことを書いた日記があったのを思い出しました。

 この度、多少修正したものを、再投稿させていただきます。

 まあ、こちらの心情的な都合ですが、まあ、あの、よろしければ読んで下さい。





「娘さんを僕に下さい」


 娘たちが、カワイイてしゃーない。


 コロナ自粛で、けっこー家にいて、ふれあう時間が増えたからかなあ。

 あらためて、娘たちが、カワイイのである。

 長女、小学校五年生。次女、小学校一年生。

 これはちょっと、早いとこ彼女たちに反抗期を迎えてもらって、

 さっさと悪態をついてもらって、ガン無視してもらって、

 ウザっとかキモっとか吐き捨ててもらったほうが、どうやら自分の為に良いのではないか? 

 このままでは、そのうち娘たちに骨抜きにされてしまう。自分がダメになってしまう。

 我ながら、そう心配になるほど、何や知らんけどカワイイのである。

 いすれ結婚? どこぞの馬の骨にくれてやる? ないないない!

 そんなこんなで、最近ちょいちょい義父の気持ちを察するようになったのである。 
 
 義父は、僕に負けず劣らず偏屈な人間であるが、

 出会った頃、ザ・社会のクズだった僕を、何故かとても寛大に受け入れてくれた。

 もしもの話。年頃になった娘たちが、若き日の僕を、父である僕の前に連れてきたら……

 ああ、胸が痛い。なんでもいいから錠剤欲しい。瓶ごとカラカラっと飲み干したい。

 僕には、とても義父のような広い心はない。

 いまだにとても苦手な義父だが、その点で尊敬し、一生頭が上がらない。


 義父に初めて挨拶に行った時、僕はフリーターだった。

 ちなみに、僕と妻は六つ年が違う。

 妻は、高校を卒業したばかり。

「ちーっす! 娘さんと結婚を前提につきあっちゃてまあーす! ぽっくん、フリーターさんず! 

 てか、今のバイトも先輩気に入らねーから辞めましたあー! 現在、バリバリ無職どえーす!」

 てな感じで、元気いっぱい挨拶したと思う。

 その時、義父に、

「おま、いい度胸してんな。度胸だけは買ってやる。
 
 おまえに、ひとつだけ、いいことを教えてやろう。定職に就け」

 つって、言われて、

「んーだよ、定職に就かなきゃ、娘くんねーのかよ。ったく、ケチくせーオヤジだぜ」

 つって、内心思って、

 その内心が明らかに顔に出ちゃっている僕に向かって義父が、

「おい、メシ行くぞ!」

 つって、これは罰ゲームかしらんちゅうぐらい、たらふく焼肉を喰わされた。

 思えば、義父、心が広かったねえ。

 これ、僕だったら、横綱ばりのシコ踏んで、大量の塩撒いて追っ払ったと思う。

 しぶしぶ就職した僕は、それから約一年後。

「お義父さんのおっしゃる通り、定職に就きました。

 さあ、パパさん、娘さんを僕に下さい。ほら、下さい。とっとと下さい」

 つったら、義父、しばらく考え込んだ後、

「……分った」

 つったんだよ。

 いやいやいや! 甘いっつーの! 僕みたいなダメ人間に、大事な一人娘あっさりやるなっつーの!

 いやー、義父ってば、心広いよねえ。

 僕なら、戦う!
 
 鈍器のようなモノで、相手にとどめを刺す!

「で、式はいつ挙げるんだ?」

 なんつって、その後の話の流れで、僕のパピーが聞くから、

「結婚式を挙げる気はさらさらナッシングでありんす! だって、僕たち、お金ないんだもーん!」

 なんつって、ダディーに元気ハツラツと答えたら、

「なめてんのか!」

 何だか知らねーけど、先程と打って変わって、すんげー怒られちゃって。

「おまえら、結婚は、二人だけのためにするもんじゃねーぞ!」

 とか何とか、こんこんと説教されちゃって。

「えー、うそーん、まじー? まじっこマジマジー? 式って挙げにゃならんの? 

 だりー。また金貯めにゃならんがや、また働かにゃならんがや、ちょーだりー」

 つって、その内心が顔に出まくっちゃってる僕に向かって義父が、

「おい、酒呑み行くぞ!」

 つって、しこたま飲まされて、僕、べろんべろんになって。

 んで、義父が今晩泊まってけっつーから、まだ十代の妻の部屋の、妻のベッドで二人で寝て。

 いやー、義父ってば、まじ、心広いねえ。

 これ、僕だったら、一晩自分と添い寝の刑だぜ。

 さらに二年後。

 式の日程が決まったので報告に行った時。

「ちなみに、新婚旅行はどこ行くんだ?」

 ちゅうから、

「新婚旅行の予算は今はないので、式が終わって半年後ぐらいに、ディズニーランドに行こうと思っとります!」

「で、で、で、ディズニーランド?」

「はい、深夜バスの日帰り格安ツアーで!」

 つったら、義父、

「情けなくて、涙が出る。かりにも俺の娘の一生に一度の……」

 と、途中まで言いかけて、

「……まあいい。おい、Q輔、メシ喰え。酒呑め。我が息子よ、今日はとことん俺に付き合え」

 だってさ。

 そんなこんなで、今に至る。

 あの時の義父の、呆れたような、諦めたような、

 そして、どこの馬の骨とも知れぬ頼りない義理の息子候補を、どこか慈しんでくれているかのような、

 あの表情が、今も忘れられない。


 娘たちが、カワイイてしゃーない。

 長女、小学校五年生。次女、小学校一年生。

 僕も、いつか愛する娘を馬の骨にくれてやる時は、

 あの日の義父のようにこれでもかと複雑な表情を、

 せめてもの腹癒せに、

 メシと酒と共に喰らわせてやろうと思っている。





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最終更新日  2022.02.27 21:16:07
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