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聖歌は生歌

聖歌は生歌

洗礼者聖ヨハネの誕生

【洗礼者聖ヨハネの誕生の祭日】
 53 神のはからいは
【解説】
 この答唱句で歌う詩編は二つありますが、答唱句自体は、ここで歌われる詩編139:18に基づいています。今日
の詩編139は、神がいつもともにいること、神がともにあることを熱心に呼びかけます。前半では、神の全知全能(1
-6)、神の遍在(7-12)が語られますが、それは、人間を十把一絡げにとらえるものではありません。すなわち、
後半では、一人ひとりを造り心にかけてくださる神をたたえている(13-18)ことからも明らかです。全詩編の中で
も、最も優雅な詩編ですが、最後は敵の中での救いを求める嘆願で終わっています。
 答唱句の前半、旋律は、E(ミ)を中心にしてほとんど動きが見られません。後半、旋律は一転して主音のA(ラ)か
ら4度上のD(レ)へと一気に上昇します。旋律では「そのなかに」で、テノールでも、やはり「なかに生きる」で、最高
音のD(レ)が用いられ、限りない神のはからいをたたえるこころと、そこに生きる決然とした信仰告白が力強く表明さ
れます。前率と同じように、バスとテノールも前半はA(ラ)を持続し、さらに、テノールは後半「その」まで、A(ラ)に留
まり、神のはからいの限りない様子と、その中に生きる決意が表されています。最後は、導音を用いずに終止し、旋
法和声によって歌い終わります。
 主音から始まり、主音で終わる詩編唱は、最低音がD(レ)〔3小節目〕、最高音がC(ド)〔4小節目〕と、続く小節
で、7度の開きを持ち、劇的に歌われます。1小節目と2小節目はA(ラ)を中心にシンメトリーになっています。これ
は、下の、祈りの注意にも書きましたが、1小節目と2小節目の内容が基本的に起→結という関係になっていること
にもよります。また、3小節目が、1小節目と4小節目の両方とやはり、シンメトリーになっていまが、これも、やはり、
3小節目と4小節目が同じく起→結であるのに加え、1小節目+2小節目が起、3小節目と4小節目が結、という内
容にもなっていることによります。
【祈りの注意】
 答唱句は、p で、しかし、強い精神で歌い始めます。最初の「かみ」の「K」を強く発音するようにしましょう。これは
「限りなく」の「か」も同様です。後半、「わたしは~」からは、だんだんと、cresc. して、力強さを増してゆきますが、
決して乱暴な歌い方にならないように注意しましょう。答唱句の息継ぎは、原則として、「限りなく」の後、一回です
が、最後答唱句は、終止の rit. を豊かにするために、「その中に」の後でも、息継ぎをするとよいでしょう。ただし、息
継ぎが長すぎて、「に」の四分音符の基本的な音価が、崩れないようにしてください。また、同じく、最後の答唱句
は、冒頭 pp で始め、最後は、力強く終わると、この答唱句の持つ、豊かな味わいが、より、深く表現できるのでは
ないかと思います。
 詩編唱は、冒頭、mf から始めるとよいでしょうか。基本的に、1小節目と2小節目が起→結、3小節目と4小節目
が同じく起→結であるのに加え、1小節目+2小節目が起、3小節目と4小節目が結、という内容にもなっていますの
で、この対比をよく味わえるような、強弱法や、速緩法を用いるようにしましょう。
 この日のことばの典礼では「母の胎」ということばが一つのキーワードになっています。洗礼者聖ヨハネが母の胎に
宿ったとき、天使のお告げを受けたザカリアは、そのことばを信じることができず、口がきけなくなります。息子が誕生
し、天使に言われたとおり「ヨハネ」と言う名を付けると、再びしゃべることができるようになりました。母の胎に子ども
が宿るのも、子どもに名前をつけるのも、単なる偶然や人間の考えだけではありません。これらのことは、まさに、神
の創造のわざに参与していることです。この神の不思議なわざに参与できることを、心からたたえて、この詩編を味
わいたいものです。
【オルガン】
 この、答唱詩編の性格から言っても、フルート系のストップのみで音色を構成するのがよいでしょう。ここが、一番大
切ですが、答唱句は同じ音で八分音符が連続しますから、実際に、歌うように前奏しないと、言い換えれば、メトロノ
ームで測ったようなのっぺらぼうのような前奏では、会衆の答唱も、歌にはなっても祈りにはならない、答唱句になっ
てしまいます。前奏の仕方で、普段、オルガニストが、この、答唱句をどのように祈っているかが問われます。
 詩編唱は、劇的に歌われますが、だからと言って、強すぎるストップ、高いピッチのストップを用いることは、かえっ
て、祈りを妨げると思います。もし、強いストップを用いるとすれば、Swell Box をうまく開閉して、音の量を調整すると
よいでしょう。これは、また、先唱者の声量とも関係してきます。練習のときに、詩編先唱者とバランスをとりながら、
どのようなレジストレーションを用いるかも重要なポイントではないでしょうか。



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