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聖歌は生歌

聖歌は生歌

聖母の被昇天

【聖母の被昇天の祭日】
 36 神のいつくしみを 
【解説】
 詩編45は王の婚宴での祝宴の歌です。11-12節では嫁いできた王妃に語りかける部分があり、最後は、王と
子孫の繁栄を願います。王と子孫の繁栄が、神の民の繁栄に繋がるのは、王が、神のみ旨に従って民を裁き、支配
することが前提となっています。今日、この答唱詩編が歌われるのは、この詩編をメシア的に解釈したとき、教会の
母であるマリアが、天の元后として、王であるキリストのもとに導かれるからです。このことは、詩編の7-8節が、ヘ
ブライ書の1:8-9で、キリストへの言及として引用されていることからもわかります。また、神と神の民(教会)との
婚宴のたとえは雅歌にも見られ、キリストは自らを花嫁にたとえ(マタ9:15)、 パウロはさらに、キリストと教会の婚
姻のたとえ(エフェ5:21-33)へと発展させています。
 詩編の11-12節(詩編唱では4節)ですが、古代オリエントでは、王妃が他国から嫁いでくることがまれではあり
ませんでした。イスラエルの周辺諸国から、バアルを崇拝する国の王妃が、バアルの預言者を連れて来て、王も民も
バアルを崇拝することもありました(列王16:29-18:40)。これは、十戒の第一の戒め、すなわち神との契約を破
棄することで、イスラエルの本質をゆがめることです。「おまえの民と父母の家を忘れよ」とは、単に字面どおりのこと
ではなく「おまえの民と父母の崇拝する神を忘れ、イスラエルの神を礼拝せよ」ということなのです。
この答唱句はまったく拍子が指定されていません。と言うのも、順番に、四分の三、四、五、三、四、と変わってゆく
からです。ですが、歌うと、まったくそれを感じさせず、歌詞の意味どおりに、自然に歌うことができるから不思議で
す。
 冒頭は、75「神よあなたのことばを」などと同じく、オルガンの伴奏が八分音符一拍早く始まります。「とこしえにう
たい」と「代々につげよう」では、テノールでFis(ファ♯)が用いられ、伴奏でも、ことばを意識しています。答唱句の終
止は、五の和音で、上のFis(ファ♯)が用いられているところは、五の五の和音(ドッペルドミナント)と考えることもで
きますが、旋律は、G(ソ)を中心に、上下に動いているので、教会旋法の第八旋法に近いようにも考えることができ
ます。また、最初にもあげたように、拍子が指定されず、グレゴリオ聖歌の自由リズムが生かされています。「主のま
ことを」で、旋律が最高音C(ド)となり、「を」では、和音も、ソプラノとバスが2オクターヴ+3度に広がります。
 詩編唱は、鍵となるG(ソ)を中心に動きます。
 答唱句の音域や、詩編唱の和音からは、あくまでもC-Dur(ハ長調)で、終止は半終止と考えるほうが妥当です
が、それほど単純ではなく、作曲者自身の、グレゴリオ聖歌から取り入れた独自の手法=「高田の教会旋法」と言う
ことができるでしょう。
【祈りの注意】
 冒頭、オルガンの伴奏が八分音符一拍早く始まりますが、これを良く聴き、「かみ」のアルシスを生かしましょう。前
半は一息で歌いたいところですが、息が続かない場合は、「いつくしみを」の付点四分音符のところで、一瞬で息を吸
ってください。最初は一息でいかないかもしれませんが、祈りの流れに、毎回、こころを込めると、徐々にできるように
なるのではないでしょうか。最初から「無理」とあきらめずにチャレンジしてください。
 この「を」を、付点四分音符で延ばす間、少し cresc. すると、祈りが、次の「とこしえに」へ向かって、よく流れてゆ
きます。ただし、やり過ぎないようにして、最初の、音の強さの中で、cresc. しましょう。「歌い」の後で息をします
が、祈りは続いていますから、間延びして流れを止めないようにしましょう。この後、よく耳にするのが「まことを」の四
分音符を、必要以上、二分音符ぶん位、延ばしてしまうものです。「主のまことを、代々に告げよう」は一つの文章、
一息の祈りですから、「を」は四分音符だけで次へ続けます。
 このようになるのは、おそらく、答唱句の最後で rit. することが背景にあるかもしれませんが、これは明らかにやり
すぎです。ここでは、rit. しても、四分音符は四分音符の音価として歌います。
 詩編唱、特に1節は、第一朗読を思い起こし、その黙想に直接結びつくものです。太陽を身にまとったマリアは、ま
さに、「光と輝きを身にまとう」方です。
 マリアの家系は、聖書に書かれていませんが、マタイ1:1-17における、イエス・キリストの系図によると、先祖に
は、他国から嫁いできた女性もいました(たとえば、ボアズの妻ルツ)。この人たちは、詩編のことばどおり、自分の
神を忘れ、まことの神を受け入れました。このことも、詩編を先唱する方は、心の隅に留めておくとよいかもしれませ
ん。わたしたちに先立って、教会の母として天にあげられたマリアを思い起こし、この詩編を深く味わえるように、祈り
をささげたいものです。
【オルガン】
 この日の主となるミサには、多くの方が参加すると思います。祭日の性格からも、朗読箇所の内容からも、やや、
明るめの音色がよいと思われます。また、参加する会衆の人数に見合った選択も必要です。とは言っても、答唱詩編
であることに変わりはありませんから、詩編を通しての黙想を妨げるようなものでも困ります。すべてをプリンチパル
系にするのはあまりにもかけ離れていますが、人数や音色の強さを考慮しながら、フルート系を中心に、どこかにプリ
ンチパル系を加えて、音色、強さを調整するとよいでしょう。オルガニスト自らの黙想の経験が問われる、レジストレー
ションではないでしょうか。


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