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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第31主日

《A年》
74 神よあなたの顔の光を
【解説】
 詩編131は、117に続いて、短い詩編(他に、133、134など)です。神の前にへりくだり、おさなごが、母親の胸
の中で、母親を信頼しきって眠るように、神の前に憩うことが、歌われます。
 答唱句は、詩編唱と同じように、各小節最後の四分音符以外は、すべて八分音符で歌ってゆきます。旋律は第三
音のEs(ミ♭)から始まり、主音に降り、神が穏やかにその顔の光を照らしてくださる様子が表されています。旋律も
その他の声部も動きが少なく、特にバスは他で歌われているすべての詩編に共通する、神への信頼を表すように、
主音に留まります。
 詩編唱も基本的にドミナントから段階的に下降しますが、各小節とも終止音は持続音より2度上昇しており、この反
復が詩編唱に緊張感と安らぎを与えています。4小節目の終止の部分は、答唱句の終止の部分と同様に終わって
います。
【祈りの注意】
 答唱句の最初は、mp で始め、1小節目の終わりで、いったん rit. と dim. しますが、2小節目の冒頭で元に戻
し、最後は、さらに rit. と dim. を豊かにして終わります。特に、最後の答唱句は、最初からp あるいは、pp で始
め、早さも、一段とゆっくりします。とはいえ、祈りのこころ・精神は、一段と深く、強くしなければなりません。
 解説でも書いたように、答唱句は各小節の最後の四分音符以外、すべて八分音符で歌ってゆきます。楽譜を入れ
ることができませんので、ことばだけで書きますが、「ー」は八分音符一拍分延ばすところを、太字は自由リズムの
「1」にあたる拍節を、*は八分休符を、赤字は音が変わった最初の音を、それぞれ表しています。
 かみよあなたのかおのひかりをー*|わたしたちのうえにてらしてくださーぃ
 となります。
 よく聞く歌い方で気になるのは

  1小節目=かみよーあなたのかおのひかりをー 
  2小節目=わたしたちのうえにーてらしてくださいー

というように「かみよー 」と「うえにー」さらに「さいー」を延ばすものです。「かみよ」の「よ」の後で間があく場合もあり
ます。しかし、延ばしたり、間をあけるのでのであれば、楽譜にきちんとこのように書いてあるはずです(たとえば367
「賛美の賛歌」参照)。「かみよー」ではなく「かみよ」、「うえにー」ではなく「うえに」となっていますから、この「よ」と
「に」は、八分音符で歌い、すぐに、「あなたの」と「てらして」に続けなければなりません。特に、「うえに」は、その後
の「あなた」の「あ」と字間があいているので、あけるしるしと勘違いされることがありますが、ここで、字間があいてい
るのは、楽譜を作る上での技術的な限界から来るもので、決して延ばしたり、間をあけたりするしるしではありませ
ん。実際に、歌い比べてみると、延ばさないほうがはるかに深い祈りとなるはずです。
 2小節目の最後の「ください」も「くださいー」としてしまうと、品がない歌い方になります。「くださーぃ」と、「さ」を延ば
し「い」を最後に添えるようにすると、品位ある祈りになります。
 第一朗読では、イスラエルを救われ、祝福される、只一人の父への全幅の信頼が述べられ、福音朗読では、神の
前でのへりくだりが、求められています。わたしたちは、本当に心から、すべてを神にゆだね、神に信頼して、安心し
きっているでしょうか。どこかに、不安を抱きながら、何か、他のものに頼ってしまうことはないでしょうか。それは、な
かなか難しいかもしれません。しかし、このような不安を抱かず、神に完全に信頼し、完全に自らを神にゆだね、神の
前にへりくだって生きた方が、おられることをわたしたちは、忘れてはならないでしょう。
【オルガン】
 答唱句の祈りのことば、音楽性からも、やはり、おだやかなフルート系のストップが求められます。まず、8’+4’で
はじめましょう。最後の答唱句は、8’だけにすると祈りも深まります。主鍵盤の8’だけで弱いようなら、Swell の8’を
コッペルする方法をとります。最後だけコッペルをかけるのが難しそうなら、最初からかけておいてもよいでしょう。人
数の少ないミサなら、最初からコッペルして、最後は主鍵盤だけにして弾くこともできますし、あるいは、最後は、詩
編唱の続きのまま、Swell で弾いて、Swell Box で音の強さを調整してもよいかもしれません。Swell Box で音の強さ
を調整することは、主鍵盤で弾いているときにも応用できます。

《C年》
18 いのちあるすべてのものに 
【解説】
 この答唱句は、詩編から直接取られたものではありませんが、詩編145全体の要約と言うことができます。この、
詩編145は、詩編に7つあるアルファベットの詩編(他に、9,25,34,37,111,112,119。 詩編の各節あるい
は数節ごとの冒頭が、ヘブライ語のアルファベットの順番になっている)の最後のものです。表題には「ダビデの賛美
(歌)」とありますが、この「賛美」を複数形にしたのもが「詩編」(ヘブライ語でテヒリーム)とですから、詩編はとりもな
おさず「賛美の歌集」と言うことになり、詩編はまさしく歌うことで本来の祈りとなるのです。
 旋律は、ミサの式次第の旋法の5つの音+司祭の音からできています。同じ主題による123「主はわれらの牧者」
がミサの式次第の旋法の5つの音だけだったのに対し、ここでは司祭の音であるB(シ♭)が加わりますが、ミサとの
結びつきと言う点での基本的なところは変わりません。それは、この二つの答唱詩編で詩編唱の音が全く同じである
ことからも分かると思います。冒頭の「いのちある」では旋律で、最低音のD(レ)が用いられ、バスは、最終小節以外
は順次進行が用いられることで、すべての被造物に生きるための糧=恵みが与えられる(申命記8:3参照)ことが
表されています。終止部分では、バスで最低音が用いられて、それが顕著になると同時に、ことばも深められます。
一方、「主は」に最高音C(ド)を用いることで、この恵みを与えられる主である神を意識させています。この「主」の前
の八分音符は、この「主」のアルシスを生かすと同時に、「すべてのものに」の助詞をも生かすもので、この間の、旋
律の動きはもちろん、精神も持続していますから、緊張感を持った八分音符ということができます。なお、「ものに」の
「に」は、その前の「の」にそっとつけるように歌い、「にー」と伸ばすことのないようにしましょう。
 詩編唱は、4小節目で、最低音になり、低音で歌うことで、会衆の意識を集中する効果も持っています。
【祈りの注意】
 答唱句は、旋律の動きはもちろん、歌われることばからも、雄大に歌うようにします。いろいろなところで、聞いたり
指導したりして感じるのは、

答唱句が早すぎる
のっぺらぼうのように歌う

の二点です。指定された速度、四分音符=60は、最初の速度と考えてみましょう。二番目の「のっぺらぼうのよう
に歌う」ことのないようにするには、「すべてのものに」を冒頭より、やや早めに歌うようにします。また「いのちある」を
付点四分音符で延ばす間、その強さの中で cresc. ことも、ことばを生かし、祈りを深める助けとなります。
 後半の冒頭「主は」で、元のテンポに戻りますが、だんだんと、分からないように rit. して、答唱句をおさめます。な
お、最後の答唱句は「食物を」の後で、ブレス(息継ぎ)をして、さらに、ゆったり、ていねいにおさめるようにします。こ
の場合「食物」くらいから、rit.を始めることと、答唱句全体のテンポを、少しゆっくり目にすることで、全体の祈りを深
めることができるでしょう。
 第一朗読の「知恵の書」は、味わい深いものです。もし、「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった」と呟いた
人々が、この「知恵の書」をもっと理解していたら、このような呟きはしなかったかもしれません。すべてのものの造り
主である方は、造られたものを愛され、とりわけ、ご自分のいのちの息吹=霊を吹き込まれた人間を、いとおしまれ
ます。それゆえに、神は、わたしたち、人類一人ひとりが、神に立ち返ることを待っておられるのです。キリストを見た
ザアカイは、すぐさま、自分のところに迎え、神に立ち返ることを誓います。今日の詩編によって、わたしたちが神に
立ち返ることができた恵みを心に刻み、その喜びを多くの人が味わうことができるように祈りたいものです。
【オルガン】
 答唱句は、「主はわれらの牧者」と同様に、フルート系のストップ、8’+4’が良いでしょう。祈りの注意でも指摘し
たように、答唱句が早くならないように、また、のっぺらぼうのようにならないようにするためには、オルガンの前奏
が、重要になります。ここで、指摘したことは、すべて、ことばを生かし、祈りを深めるためのものであることを、忘れな
いようにしていただきたいと思います。会衆が答唱句を歌って、祈っているときにも、漠然と弾くのではなく、祈りが深
まるためには、どのようにして、オルガンで支えるのがふさわしいかを、問い続けてゆきたいものです。



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