親子で行く、日本一の自転車旅 大分編 その3
前回の続き。 自転車で100km以上走り、ついに九州最東端に到着した我々親子であったが、時刻は4時半を回り、夕暮れが迫っていた。 岬から海岸線まではジェットコースターのようにグルグル回りながら一気に駆け下りた。 そこから佐伯までは20kmある。 時速20km程度で走れば1時間だが、疲れにまかせてチンタラ走ると、日が暮れてしまう。 九州最東端に到着するまでは、終始息子を前に走らせたが、彼はもはやペースが出ない。 ここからは私が前を走って、気持ちが切れないよう抑えながらもスピードを維持していく。 幸い1時間ほどで、佐伯の手前まで戻ってきた。 大体この程度の距離になるだろうと、実はそこに旅館を予約しておいた。 去年の夏のような私一人の旅なら、行き当たりバッタリでもいいが、さすがに子どもがいては、泊まれないという事態は避けたい。 それに息子とふたりで自転車で旅することも、そう何度もないだろうから、いい思い出にしたいというのもあった。(料金は、自然の力で九重と温泉旅行に行く時とちょうど同じ) 全部で3階建てだが、客室は10部屋しかない旅館で、築年数も浅く、エレベーターもまだピカピカだ。玄関ロビーには大きな生け花がいけてある。 早速風呂に入ると、中も新しく気持ちがいいが、湯につかると日焼けした腕と足がヒリヒリする。 ゆかたに着替えて部屋でのんびりしていると「お食事の用意ができました。」と内線が入った。 指定の場所に行くと、落語の垂れ幕のように大きく「榎本様」と書いてあり、びっくりする。 食事もうち専用の別室だ。 床の間にはえらい立派な壷がある。 まず、小鉢。 小海老をあげたもの。 シャコシャコ、パリパリと滋味深く、ビールが飲めてしかたがない。 ああ、どうして1日中自転車で走った後はこんなにビールがうまいのであろうかっ! 左はモズク、酢加減がマイルドでよい。 酢の使い方がうまい料理人は、おおむね料理がうまい。期待が持てる。 右はタコのマリネ。 味のいい地ダコがうれしい。 お造りはこれ。 なんと伊勢えびのお造りなのであった!(このあたりの海では9月に伊勢海老漁が解禁になるそうだ) 甘みがのってシコシコうまい。 雲丹に天然真鯛、スルメイカ。 ああ~、鮮度のいい地モノの刺身に箸がすすむ。 左は豊後水道のアジ。佐伯は関アジで有名な佐賀関の隣であり、このアジも関アジ譲りのうまさであった。 次はアジの餡かけ。 しっかりした出汁のとろみが、パリッ揚がった滋味のあるアジに合う。 続いて、再び伊勢えび。トマトソースソテー。 ぷりぴりの伊勢えびに、程よい酸味とちょぴり辛味のトマトソースがよくあう。温野菜もソースにつけて食べるがボリューム満点。 もちろんたっぷりの海老味噌にもむしゃぶりつくべし! そして笹カレイのてんぷら。 海の貴婦人とも称される、淡白で上品な味わいは、あっさり仕上げただし汁で食べる。この写真は2、3食べた後に撮ったもの。 それにしてもすごいボリューム。 茶碗蒸し。 上の銀杏は子どもがくれたもの(笑) 中の肉厚の下味がしっかりついた椎茸がうまかった。 ちなみに大分は椎茸の日本一の産地。 この後、つみれ汁とご飯と漬物、最後のぶどうと梨のデザートとなったが、一日自転車に乗ったこの大柄な私でもご飯は食べ切れなかった。 普通こういうところに来て食べられないことはまずないのだが、旅館に電話した時に「自転車で行きます」と言ったからであろうか。 あ~ それにしても満腹になり、息子と二人で疲れ果てゆかた姿で大の字になって眠ったのであった。