はんこの話
印鑑の書体は主に筆書き清書の楷書、少し続けた行書、しっかり続けた草書
実印や会社印でおなじみの篆書、隷書
認め印に多い古印体などがありますが、実は他にもたくさんあります。

筆書き書体でも行楷書、行草書、日本独特の仮名（草書に通ず）
竹筆書体の篆書でも小篆、印篆、篆書古印などのほかはんこや独特の
印章新体、近年はやりの吉相体などです。

今回は認め印によく使われ、比較的なじみ深い古印体について記します

そもそも古印体とは石碑などに彫刻された文字が永年の歳月に風化した文字
が寂びて味わい深い物に変化した文字を印章に再現したものです。
従って、書体はすべての書体の古印風が存在する訳ですが事実上はんこやが
言う古印体は隷書の古印風を古印体と呼んでいます。

古印体は特に崩し方や線の出し方に決まりはなく、あくまで自然の風合いを
印鑑の文字に持たせることから、彫刻する職人の感性によりその姿形が決
まってきます。

このため、文字によっては間違いではないかと思われる彫刻の仕方も実際に
存在しますが、これは間違いではなく、あくまで文字の意匠であります。

古印体の意匠にこだわることは特に完全手彫りの印鑑に限ったことではなく、
近年主流の機械彫刻でも良心のある店では当たり前に職人が変化を持たせて
彫刻しています。

通常、コンピューターにある文字をそのまま印鑑にするような事は、はんこや
と名乗る以上やってはならないことであります。

また、完全手彫りの印鑑の場合大変高価になることから、どうしても篆書等の
書体をおすすめする事が多くなりますが、職人の感性に大きく依存する古印体
は実際大変味わい深い印鑑になることも多々あります。

事実上、職人の腕を見るなら古印体か小篆かとも思います。

高価な実印を職人任せの古印体で注文するのはちょっと度胸がいりますが、
仕上がりの良い古印体の実印は芸術品とも言える風格が感じられます。

もっとも、私には無理ですけれど、当店でお願いしている職人さんは素晴らし
い物を供給してくれます。