読書感想文:「できそこないの男たち」
文系の人が読むとどういう感想を持つのか、興味があります。できそこないの男たち (光文社新書)福岡伸一 著ISBN:978-4334034740▽目次プロローグ第 一 章 見えないものを見た男第 二 章 男の秘密を覗いた女第 三 章 匂いのない匂い第 四 章 誤認逮捕第 五 章 SRY遺伝子第 六 章 ミュラー博士とウォルフ博士第 七 章 アリマキ的人生第 八 章 弱きもの、汝の名は男なり第 九 章 Yの旅路第 十 章 ハーバードの星第 十一 章 余剰の起源エピローグ福岡さんはどうしてこの本を書こうと思ったんだろう。読み終わった直後の感想はこれ。科学のわかりにくいところを、広く一般にわかりやすく伝えたいと考えたとき、こういう形の本を出すことになるんだろうか。一つ一つのエピソードは興味を引くもので、それ自体悪くないと思います。でも、脚色が強すぎて、フィクションのような気がしてしまうのです。書いてある内容が科学の成果に基づくものであることに関してはあえて疑うつもりはないのですが、それ以外の部分、特に人物に関するエピソードであるとか、妙に詩的であろうとする表現になっているところが多いのです。そうすると、全体がなんとなく胡散臭い感じがしてしまうのです。内容そのものは、ワタシにとっては、特にびっくりするようなことは書いてありませんでした。もちろんこれは、読む人がこれまでにどんなことに関心を持ってきたかによって違うので、新鮮な驚きを感じる人も多いでしょう。遺伝とか、生物の進化などという分野にそれほど興味を持っていなかった人たちは、読んでみると面白いと思います。そういう意味では、新書としての役割をしっかりと果たしているのかもしれませんね。結構売れているみたいですし。ワタシ自身、第六章の胎児の発生の経過を説明してくれているところは「へ~、そうなんだ~」と思いながら読んでましたよ。ところで、この本で一番気になるのは、プロローグとエピローグです。何か古い詩のようなものを引用する体裁をとっているのですが、これが本当に引用なのか、それとも著者が創作した架空の文学からの引用なのかがよくわからないのです。なぜそう思うかというと、「引用」箇所の内容が、あまりにも本書の内容に不自然なほど一致するからなのです。プロローグで出てきた怪しげな引用のことは、呼んでいるうちに忘れてしまっていたのですが、エピローグがまた怪しげな引用で終わるので、気になってしまうのです。読後感はもやもや~っとしたものでした。なんだか本に書いてある内容全部が怪しげな感じに思えてしまい、福岡さんはどういう意図でこの本を書くことにしたのだろう?って考え込んでしまったのでした。どうも脚色の過ぎるノンフィクションは読後感がすっきりしません。そういえば、同じような読後感を持った本がありましたね。絶対音感 (新潮文庫)・・・この本は絶対音感ブームを作ってしまった罪深い本です。万物の尺度を求めて―メートル法を定めた子午線大計測・・・以前感想文を書きました。ワタシが教科書的な知識を求めすぎていて、こういう感想を持ってしまうのでしょうか。もっと単純に楽しんで読んだほうが幸せなんでしょうね~。