息子とプール(背中が痛い)
昨日私は初めて息子をプールに連れて行った。息子も幼稚園のプール以外はプールに行くのは初めてだった。入場料大人1,100円、子ども600円のプールは遠くからでも目立つスライダーがあるちょっと公営のプールにしては豪華なヤツだ。青空と夏の日差しの下、息子は大喜びだった。彼が飛ばす水しぶきがキラキラはねる。最初は流れるプールで浮き輪につかまり、楽しそうだったが、子供用のスライダーのあるプールへ行くと、もう大はしゃぎだ。少しは水に慣れさせようと、顔を水へつけてみるよう言ったのだけれど、はしゃぐ息子は水の中でも笑ってしまうため、どうにもならない。嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。何回も、何回もスライダーで遊ぶ。水が噴射される、ちょっとしたジャングルジムのような遊具も彼を惹きつけて放さない。こんなに嬉しそうな息子を初めてみた。私は普通のスピードでスライダーを滑っている息子を途中で待ち構え、脇から背中を猛烈に押してやった。息子は凄い勢いで滑っていき、プールの中へ吹っ飛んだ。少し水を飲んで、咳き込みながら、息子は這い上がってきた。そうやって少しずつ水に慣れたらいい。4歳でプールが初めてなんて、もっと親が遊びにつれていってやればいいのに、と思われるだろうと思う。まったくその通りだ。でも3歳の子どもは突発的に大変なことが起こりそうで、昨年は避けたのだ。私は物凄く慎重だ。そのくせ、子どもをスライダーからプールへ放り込むようなことをしたりする。それは自分の中では矛盾はしていない。私は子どもを逞しく、根性のある子に育てたい。努力のできる子に育てたい。明日私が死んだとしても、生き抜いていけるような子に育てたい。そう思っている。彼の命を大切に育みながら、少し乱暴なくらいに子育てをしたい。彼が夢中になって遊んでいる午後2時前くらいに私は息子に言った。「さあもう帰ろうか。」息子は顔を曇らせて「え?」と言った。私は静かに言った。「また連れてきてやる。今日はお勉強(公文)へ行く日だろう?帰らなきゃお勉強できないだろ。」こういうとき、息子は、判断がつくまでは無表情で「え?え?」という。それは彼の癖だ。昨日も何回かそれを言った後、最後に納得をして、「うん」と言ってプールから出た。とても遊ばせてやりたかったし、私もこの時間をもう少し楽しみたかったけれど、人生には楽しみもあり、やらなきゃいけないこともあり、色々あるのだということを教えておきたかったのだ。葛藤は人を育てる。人を伸ばす。駄々をこねず、息子が「うん」と言ってプールを出ようとしたとき、私はじーんと心が熱くなった。葛藤しているのは息子だけではない。帰りにクルマの中で、息子が「楽しかったなあ、お父さんも楽しかった?」と訊くので、「お父さんも楽しかったよ」と答えると、「帰ったらなあ、ぼく、お勉強すんねんで。お父さんはおしごとー?」と彼は言った。 今日は彼と一日過ごした余韻が心の中にずっと残っている。もう一つ言うとお父さんは7,8年ぶりくらいの日焼けで背中が痛いのである。