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海洋冒険小説の家

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(13)問答の要「方座第四の妙」

    (13)

 「ひとつ、お尋ねいたしますが、問答の最後の方で、方座第四の妙の一字を捨てるか捨てざるか、と浄土側が質問して、法華側が答えられず、法華側が負けた言うことになっています。この方座第四の妙とは、どんな意味ですか?」
 「それは私も知りません」
 「えっ、知らない?」
 「はい、私がいままで読んだ八宗の経巻、また注釈書などに、そのような言葉はありません。結局、この言葉が命取りになって、法華の側が浄土側を追い詰めてしまいました。日淵殿が[法華宗は法華の妙より立て、そのほかの余法を悉く捨つ、汝戯言を申すか]と言い放ち、日光殿も、[これは法華の妙ばかりにして、余技は真実ならず]と、留めをさしました。このときに、玉念殿が、七兵衛殿の合図で急に立ち上がったのです」 
 そうだったのか、本当に後味の悪い幕切れだったのだ。

「このことは、私の生涯を通して、私自身を責め続けることでしょうが、しかしまた、私の心の弱さの現れとして、修行に励む所存です。風日庵様より助左衛門殿のことは聞き及んでおりましたが、本当に心の真っ直ぐのお方だと、感服いたしました。目に曇りがない。京の最後の日にお会いできて、本当によろしゅうございました」
 そしてまもなく、因果居士は帰って行った。助左衛門は、何か、ほっとするような、心地がして、しばらく無言でいたが、海賊のことを、思い出し、権大納言に言った。
                    (続く)

 



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