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海洋冒険小説の家

海洋冒険小説の家

(18)権大納言の剣のさえ

    (18)

 大声、呻き、「ガツン」という刀の打ち合う響き、この修羅場に助左衛門は血がたぎってきた。海賊衆は助左衛門一人に的をしぼってかかってきた。最初の一人はたたっ斬った。そして息をひとつ「ふぅ」とついた。二人目は素早く動いて胴を払った。相手は左に倒れた。それからは敵も用心して周りを囲んで手を出したので、刀を右に左に受けるだけで、精一杯で、防戦一方だった。そこえ、権大納言が助っ人でやってきて、その太った体が、驚くほどかろやかに動いて、たちまちのうちに三人を斬った。たたっきるのではなく、太刀が舞うように弧を描き、止まることなく、無駄なく動いて、次々に斬るのだ。六兵衛は右手に闘斧をつかんで、広間に飛び込んだ海賊の一人に投げた。庭から投げられた闘斧はくるくる回りながら、狙いあやまたず、背中に食い込んだ。家の中では、堺衆は槍ぶすまで、海賊たちを近づけぬようにしており、六角坊は得意の槍で敵をなぎ倒し、東風歳は鎖鎌を見事に扱って、敵を倒した。助左衛門は、周りから、助けられるようにして、結局、二人を斬っただけだった。六条の院とその一味は、形勢不利とみて倒れた十数人の者を残して、あっというまに消え去った。
                 (続く)



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