第8シリーズ第9話「さらば鬼平犯科帖」
久し振りの再開で、いきなりの「さらば」はないだろう、というご意見もあるでしょう。 このDVDは自分用に入手したもので、僕自身久し振りに観ました。 いくつかの昔話を密偵たちが思い思い語る話ですが、その中から今日は一つ。 「むかしの男」 この話は、平蔵の妻、久枝の話です。 久枝の昔の男は悪になっていて、悪事の末、平蔵に捕まります。 土蔵の中で語り合う、昔の男と平蔵。その会話が見事です。 「久枝を女にしたのは、この俺だ」 高笑いする男。 外でその会話を盗み聞きする久枝だ。 男のその言葉を聞いても、たじろぐ様子のない平蔵。返した言葉が惚れ惚れする! 「そんなこたあ百も承知だ。承知の上で俺は久枝をもらったんだよ」 「久枝を本当の女にしたのはこの俺だ。惚れ抜いていなければわからんことだ」 「このことを知っているのは、俺と、久枝だけだよ」 「惚れ抜かなければわからんものよ」 この当時、処女を無くした女性は、「傷物」と呼ばれていた(蔑称ではありませぬ。念のため)。平蔵も遊んで遊んで、その末に自分の行き方を見つけた男だ。だからこそ、遊ばれ捨てられた久枝の心情が痛いほど分かるのだろう。分かるからこそ、久枝を嫁にした。 男の本当の強さと優しさを見た思いがします。 格好だけの優しさは、言葉も行動も軽くなる。反省しきり… このDVDは、鬼平の魅力だけではなく、男の生き様を学ぶにはいい話がつまっています。 これからも頑張って書いていきますので、引き続きごひいきに!