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☆陰陽師 小箱☆

物 語1

龍笛花  『陰陽師』    蜜虫アイコン

俺は・・・・ お前だけは失いたくないのだ・・


物  語
(晴明サマを主体に書いてます。途中飛んでる場面ありかも)

文中に数々の[呪(しゅ)]が登場します。呪は赤文字で記載しています。
また、私の陰陽師仲間の“あめみこ様”がHPで呪講座のコンテンツをお持ちです。
そちらにジャンプ出来るようにいたしましたので、是非ご覧になって下さい。

〔あめみこ様HP 陰陽師を百倍楽しめる講座【呪(しゅ)】へジャンプ〕

   

桓武天皇が弟・早良親王の祟りを恐れ、長岡京を捨て平安京に遷都したのは今より約1200年前。
平安遷都から150年の歳月が経過したが、平安に都は魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する魔の都と化していた。

鬼、妖怪、怨霊。それらを鎮め闇と光を調和させる。それが陰陽師と呼ばれるものたちであった。
安倍晴明はその中でも方術の力がひときわ目立っていた。

   〔晴明登場〕
今日は内裏で陰陽師による奏聞(そうもん)の儀が行われいた。しかし晴明は出席せず、綾子更衣の相談にのっている。
奏聞の儀が終わった後、陰陽師達に出席しなかった事を攻められる晴明。
そこに右大弁:源忠正と左大弁:小野清麻呂、そして右近衛府中将:源博雅がやって来た。
忠正は飛んで来た蝶を「手を触れずにあの蝶の命を奪ってみよ」と晴明に告げる。晴明は「罪な事を仰られます」と言いながら、木の葉っぱを一枚取り、蝶に向かって飛ばした。「入式神見幻夢(にゅうしきしんけんげんむ)」と呪を唱えると蝶は真っ二つに・・・
その場に居合わせた人々は一様に驚いた!同僚の陰陽師達までも。

しかし、陰陽頭(おんみょうのかみ):道尊だけは晴明の呪を見抜き不敵な笑みを浮かべていた。
互いの視線が絡み、火花散る。

   〔博雅、晴明邸を訪れる〕
昨夜、鬼に出おうた中納言 藤原兼家の屋敷では松の木に瓜がなり、兼家は博雅に安倍晴明を呼ぶように頼む。
博雅は気乗りしまいまま晴明邸へと赴き、一条戻り橋の上で「何故、私が行かねばならぬのだ?」とつぶやく。
晴明邸に着いた博雅が門を開けようとすると、手も触れていないのに勝手に開く門!出ばなから怪しい雰囲気の屋敷。。。
女に囲まれた晴明が「これはこれは博雅様」と博雅を迎えた。まだ名乗りをしていない博雅は驚き、「何故、私の名を?私がここに来る事を一体誰から聞かれた?」と聞くと、「一条戻り橋の向こうから、何やらブツブツと呟いておられましたなぁ。何故、私が行かねばならぬのだ・・と」と、女たちと笑う晴明。
「き、聞こえたと言うのか・・・」と絶句する博雅。「それほど私の顔はキツネに似ておりますかな?」と見上げる晴明。
気を悪くした博雅が二人で話がしたいと言い、人払いを願い出た。素直に従う晴明。
そして、胸の前で指を重ね、「現成真姿(げんせいしんし)」と呪を唱えて手を払うと、最前の女達は一つの花や、人の形に切った人形(ひとかた)へと姿を変えた。
何が起こったかと驚く博雅。そんな博雅に「式神と申しまして、身の周りの世話をさせるには便利なものでございます。」と教える。
そこに、花を摘む一人の女が庭に現れた。博雅が「あれもその式神とやらか?」と訪ねると晴明は「あぁ、あれなら博雅様は既にお会いになっております」と答えた。
博雅に覚えはない。晴明が女に「蜜虫」と声を掛けると、女は両手を広げ、見る見るうちに蝶へと変化した。この蝶は確か内裏で晴明が命を奪ったのではなかったか?
「殺めたのではなかったのか!」と喜ぶ博雅。「その昔、空海和尚が長安より連れ帰ったとされる尊き蝶にござりまする。殺めるなどは畏れ多きこと」と話しながら「まずは一献いかがですか?」と酒を勧める晴明。
博雅は喜んで受けるが頼み事があったのを思い出し、「私は酒を飲みに来たのではない。おぬしに話があって参ったのだ」と言うと晴明は「承知しております」と言い、盃に手を伸ばすのであった。どこまでも人を喰った晴明なのでした。

   〔晴明、瓜にかかった呪を解く〕
兼家邸を訪れた晴明と博雅。晴明は瓜を見て、「見事な瓜ですが、この瓜には呪がかかっております」と二人に告げる。
不思議がる二人を尻目に呪を解く準備始める晴明。
呪を書き付けた符を博雅の持っている瓜に貼り付けて、「乾坤定位(けんごんていい) 赫々煌々(かくかくこうこう) 解呪瓜(かいじゅか) 現出蛇蠱(げんしゅつじゃこ) 急々如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」と、二度唱えると瓜は怪しくうねりだした。
頃合を見計らって、晴明が瓜を小刀で真っ二つに割ると・・・中から黒い蛇が姿を現した。
一様に驚く兼家と博雅。蛇を掴み出した晴明は「これが呪の正体です。何者かが呪によって瓜に忍ばせたのです」と兼家に告げる。
兼家:「では瓜を喰ろうていたら・・・」 晴明:「この蛇が兼家様をハラワタから喰ろうていたでしょう」 博雅:「やはり鬼の仕業かぁ。兼家様、何か心当たりはありませぬか」
兼家はしきりに肩を上下させながら「馬鹿な!何故私が祟らねばならぬ」と言うと、「それはこの蛇が教えてくれましょう」と晴明。「はぁ?」と不思議そうな兼家。

   〔晴明、博雅に呪の講義〕
先ほどの蛇を先導に、朱雀大路を南に歩て行く晴明と博雅。朱雀大路は人の往来も多く、賑わっている。
歩きながら博雅は晴明に“呪”について尋ねた。「晴明殿の言う、呪とはつまり何なのだ?」
晴明:「そうですねぇ。例えばこの世で一番短い呪は“名”という事になりましょうか」
博雅:「名?晴明とか博雅という名の事か?」
晴明:「はい。呪とはようするに物や心を縛る事」
博雅:「物や心を縛る・・・」  晴明はフと立ち止まる。
晴明:「あなた様は源博雅という名で縛られておりまする。その名が無ければ・・・」
博雅:「私がいなくなってしまうという事か?」
晴明:「いいえ。名がなくても、あなた様がこの世からいなくなるという事では・・ありませぬ」
それだけ言うとサッサと蛇の後を追う晴明。博雅は暫らく晴明の言った事を考えたが「何を言ってるのか分からぬ」と晴明の後を追って歩き出した。

   〔鬼の正体〕
晴明と博雅は、とある橋の上にたどり着いた。蛇は橋の開いた穴から、下へと降りてゆく。
橋の下に来た晴明と博雅。晴明が博雅に「あれを・・・」と注意を促した。
見ると橋のたもとの柱に女の骸があり、先ほどの蛇が絡み付いている。
晴明:「恐らく、男に捨てられ自ら命を絶ったのでしょう」
    「人を恨むその心もまた、呪という事になりましょう」
博雅:「では、あれが鬼の正体と・・・」
晴明:「人は心ひとつで、鬼にも仏にもなりまする」
女の骸が哀しげにこちらを見ているようだ・・・
---兼家邸---
夕暮れ。兼家がひとり酒を楽しんでいる。それを晴明と博雅が庭から眺めている。
晴明:「あれはこの女であったか・・」
博雅:「あれとは?」
晴明:「分かりませぬか」 と言うなり、指を二本博雅の目に当て「開心眼変見鬼(かいしんげんへんけんき)」と呪を唱えた。
すると博雅の目に兼家の側に寄る女の姿が見えた。その女は次第に骸骨へと姿を変え兼家の左肩に寄り添っている。とっても幸せそうな穏やかな表情。
博雅は驚きのあまり声が出ないでいる・・・
「側にいるだけでお幸せなのです。 川の骸を弔ってやる事です。さすればあの女は消えましょう」と告げて立ち去る晴明。

   〔星ふたつ〕
道尊が怪しげなアジトで夜空を見上げている。半月の傍らで星がふたつ輝いた。
するとその星がお互い惹き合うように近づき重なりあった。
ふたつの星がひとつに・・・ 道尊はそれを見てニヤっと薄笑いを浮かべた。同じ頃、晴明は一条戻り橋に差し掛かっていた。ふっと立ち止まり川面を覗くと星がふたつ重なりあって川面が揺れた。
「騒がしくなってきた・・・」そう呟いて、晴明もまた薄笑いを浮かべるのであった。
---寺門前---
博雅が龍笛(葉ふたつ)を吹いている。その傍らには女車(牛車)が止まっている。
美しい博雅の笛の音。その音が不意に止まった。牛車に乗った女が「いかがなさいました?」と声をかける。
月を見上げていた博雅が「気のせいか・・・昨日までふたつの星が並んでいたような・・・」
「もしや、片やの星の思いが通じ、ふたつの星がひとつに・・そうは思いませぬか?」と牛車に近づきながら話す。
女:「きっと、星の寿命がきてしまったのでしょう」
博雅:「それでは残された星が可哀想ではありませぬか」
女:「それにしましても、博雅様の笛の音は本当にお美しゅうございますね」
博雅:「実は今日、哀れな女の骸を見ました。今宵の笛はその弔いのつもりで吹いていたのです。」
女:「博雅様の優しい思いは必ずや伝わりましょう」
それを聞いた博雅は、意を決したように女を振り返り 「頼む!今宵こそ貴女のお名前を!」
しかし、女は帳を締め扇を閉じて合図を出し、従者と共に博雅の前から立ち去ったのでした。ひとり取り残される博雅。(可哀想~~)

   〔敦平の皇子誕生〕
雷鳴とどろく中、左大臣、師輔の屋敷では道尊はじめ、陰陽師達による安産祈願が行われていた。
師輔が落ち着きなく歩き回る中、産声が響いた! 中から女官が現れ「男皇子でございます」と師輔に告げる。敦平皇子(あつひらのみこ)の誕生である。
師輔は「そうか、そうか」と嬉しそうに笑い声をあげた。それもその筈、娘、任子(とうこ)は今を時めく帝の女御(にょうご)。
その娘が帝の皇子を産んだとなると、次期帝はこの敦平になる可能性が大なのだ。
道尊は「おめでとうござりまする」と師輔に祝いの言葉を述べた。心の中はいかがなものか・・・
その頃、更衣(こうい)祐姫(すけひめ)の部屋では、祐姫が広平親王を寝かしつけながら、扇に書かれた「望月の 時の往くまに かけぬれば・・」の歌を詠んでいた。
そこに父である右大臣、元方がやって来た。ドカッと広平の枕元に座り、「無念じゃ広平。生まれた時には、ゆくゆくはお前が帝だと言われていたのに・・・」
元方:「祐姫。師輔のところに男皇子が産まれた」
  「な~ぜ~じゃ~、祐姫。帝の寵愛を一身に受けていたのはお前ではなかったのかー!」
祐姫は先ほどの扇を見つめている。元方はその扇を覗き込んだ。「今更そのような物!」と言って元方は扇を奪い投げつけた。
必死になって拾いに行く祐姫。そして、大事そうに胸に抱いた。
元方は憤懣やる方なしで「師輔めぇぇぇ~」と唸る。その様子を道尊の式神の鴉(からす)がジッと見ていた。
祐姫の元を退出した元方は雷雨の中、庭に佇む男を見た。「誰じゃ!・・・道尊か?」
「元方様。・・あ~、よいお顔をしておられますなぁ」と言う道尊。
元方の顔は恨みの篭った、すざまじい顔になっていたのだ。

   〔呪をかけられる敦平〕
ある日、内裏で敦平皇子の誕生を祝う儀が催されていた。
敦平の外祖父に充たる師輔が帝に祝いの言葉を読み上げた後、女官が敦平皇子に近づいた時、敦平皇子の体が宙に浮き、沈んだ。悲鳴を上げる女官や任子女御。
見ると敦平は尋常ではない様子に変貌していた。帝も心配そうに様子を窺っている。
これを受けて、博雅が晴明邸を尋ねてきた。「晴明殿!晴明殿はおられるか!」
見れば晴明は女に囲まれてうたた寝をしている。その晴明に博雅は「晴明殿、頼みがある!すぐに私と来てくれぬか!」と声を掛けた。すると奥から「騒々しいですねぇ」と晴明が立ち上がった。
「うん?」と言って博雅は寝ている晴明と立ち上がった晴明を見比べた。
その内、寝そべっていた晴明が式神へと変化した。
ようやく、からかわれた事を悟った博雅。「冗談が過ぎるぞ!」と言って晴明の側にやって来て腰をおろした。
「いかがなさいました?」と晴明が聞く。
博雅:「敦平皇子の様子がおかしいのだ」
晴明:「敦平皇子には陰陽頭がついてらっしゃるではありませぬか」
博雅:「それが、一向に良くならぬのだ・・・晴明殿しか救えるものはいない!」
晴明:「何故です?」
博雅:「何故だか分からぬが・・・分かる!」
可笑しくて、笑い出す晴明。

   〔青音との再会〕
夕暮れ時、将軍塚に佇む晴明と博雅。晴明は焦る博雅に評判の笛を所望した。
笛を吹き始めた博雅。美しい夕暮れに博雅の澄んだ笛の音が響き渡る。
竹林の奥から、蝶の蜜虫に誘われてひとりの女がしずしずと歩いてくる。
辺りは何時しか帳(とばり)が降りて来た。博雅の笛の音に聴き入っている晴明。「美しい響きです」
気配に気付き「来られたようです」と立ち上がる晴明。博雅も笛を止めた。
先ほどの女が「お久しぶりでございます。晴明様」と挨拶した。
晴明:「はっ。・・三十年振りでしょうか?」 
それを聞いた博雅は解せぬ様子で「三十年・・・?」と言いつつ、女の顔を見つめた。
謎の女は「笛の音が聴こえてまいりましたが・・・」と晴明に聞いた。
「こちらの源博雅様が。・・・ こちらは青音殿」と二人に互いを紹介した。
青音:「博雅様、まことに美しい調べでございました」 
博雅:「ありがとうございます」
晴明が「では、参りましょうか?」と青音に言い、青音も「ええ、参りましょう」とふたりでサッサと行ってしまった。ここでも取り残される博雅。

   〔晴明、敦平皇子の呪を解く〕
晴明、博雅、青音の三人は敦平皇子の元を訪れた。左大臣師輔を始め、任子女御、女官達が見守る中、晴明が敦平皇子の様子を調べ始めた。
晴明:「敦平皇子は強い呪をかけられております」
顔を見合す博雅達。 「筆の用意をしていただけませぬか」と言う晴明。
その頃、道尊はアジトで敦平皇子に向けて呪詛を行っていた。胸の前で印を結び「ゴンゴロゾウギョウミン ダンニヤコウボウ レンヨウケントン アンダラタウン」と唱えている。
筆をとった晴明は、敦平皇子の体に呪の梵字とセーマン(五芒星)を書き、立ち上がり「あめつちに きゆらかす さゆらかす かみのみいぶき あめのみあらし つちのまくしき きゆらかす」と扇で風を送りながら、敦平皇子の周りを歩きだした。
敦平皇子の傍らには青音が横たわっている。
すると、敦平皇子の口から怪しげな黒い煙が立ち上って来た。気味悪がる女官達。
その時、道尊は何物かが呪詛を阻止するのを感じ、印を組みなおして、より強力な呪に変えた。
「ゴンゴロゾウギョウミン ミタマガリ オンサワラ アンダラタウンン」というもの。“オンサワラ” 早良親王の恨みの力を借りようというのだ。
そうすると、敦平皇子の黒い煙がまた口の中に戻って行く。
その様子を見て晴明も呪を変えた。開いていた扇を閉じ、口元に当て「風蹴魔 陽邪歴 討昇花(ふうしゅうま ようじゃくれき とうしょうか)」と何度も唱えた。
晴明vs道尊の激しい呪の応戦! 
晴明は呪の最後に「風魔天帰(ふうまてんき)」と唱え、扇を敦平皇子に向けた。
その瞬間、道尊の印は外れ、呪は解けた。
敦平皇子の口からはすざまじい、光と共に何かが飛び出し、部屋の中を荒れ狂った。
晴明は青音に「青音殿!」と声を掛け、「あめつちに~」の呪を繰り返した。
部屋の几帳などをなぎ倒しながら、光は青音の口の中へと吸い込まれていった。
青音が目を大きく見開き、胸元の鈴に手をやった。その様子を見た晴明は何か解せぬものを感じた。
師輔が「もう済んだのか?」と晴明に聞いた。敦平皇子は普通の赤子に戻っている。
「いいえ、まだやる事が残っております。・・・青音殿を我が屋敷に・・」と青音を見つめながら言う晴明。
青音は鈴を握り締め、目じりには涙が流れていた。

   〔晴明、呪の正体を暴く〕
屋敷に戻って来た晴明は、庭にある五芒星の上に座るように青音に指示する。
晴明は博雅には太刀を抜くように言った。 「何をするのだ?」 と聞く博雅。
「呪の正体を暴きます」 と答える晴明。
青音は上半身の衣を脱ぎ、五芒星の上に座っている。晴明は「何鬼不走(かきふそう)」と呪を唱え、針を青音の風符(首の後ろ)と命門(腰のあたり)に突き刺した。
それを見た博雅は驚き 「おい!」 と声をかける。
晴明はそんな博雅にはお構いなく、青音の背後から左手の指二本を風符の針に、右手は命門の針に沿えて、 「オン・アミリティ・ウン・クロダノウ・ウンジャク・ソワカ」 と風符の針に唇に当て呪を唱え続けた。 
何度も何度も繰り返される呪。その様子を見守る博雅と蜜虫。
青音は次第に高揚し、喘ぎ出した。エクスタシーが頂点に達した頃、青音の腕の血管が浮き上がって来た。
それを見た晴明は博雅に 「来るぞ!」 と言った。
博雅が 「はぁ?」 と言った時、青音はいきなり口から何かを吐き出した。
青音の顔は老婆のように皺だらけだ。
青音の口から出た禍々しい、煙は次第に大きくなって来る。青音は目を凝らし、何かを確かめるようにその煙を見ている。
晴明は 「今です!斬られよ」 と博雅に言うが、博雅は驚きと恐怖のあまり、首を振って何も出来ないでいる。
「早く」 と晴明は急かすが博雅は相変わらず、でくの棒のように立ったままだ。
痺れを切らした晴明は 「斬れー!博雅!」 と叫ぶ。それを聞いた博雅は「ひ、ひ、博雅!?」 と憮然となる。(晴明より博雅の方が身分が上だったからです。本当は呼び捨てなんて出来ないの)
もう一度、晴明は 「博雅!斬れー!」 と一喝した。今度は 「は、はい!」 という事を聞く博雅。
しかし、青音の口から出た呪は逆に博雅に襲い掛かって来た。 「わぁ~」 と叫びながら闇雲に太刀を振り回す博雅。
呪はそのまま、夜空の彼方へ飛んで行ってしまった。倒れ込む博雅。 
博雅は 「晴明、今のが呪か?」 と晴明に聞いた。晴明は 「ああ。」 と答え、 「青音殿、呪の正体、分かりましたか?」 と青音に尋ねた。
「いいえ」 と答える青音。その顔は美しく若々しい顔に戻っていた。
「そうですか。・・どうぞ体を休めて下され」 と晴明は言った。青音は何かを隠している様子に見える。 
その一部始終を道尊の式神が闇夜から見つめていた。
---内裏の中---
道尊と元方が話している。
元方:「道尊。どうするのだ。敦平皇子は生きておるのだぞ。」
道尊:「さぁて、この邪魔者をどういたしましょうなぁ~」
元方:「晴明か!」 「晴明めぇ~~」 と憤怒の表情・・・
道尊:「あぁ、また良いお顔になって参りましたなぁ。」

   〔月  夜〕
青音の禍蛇(かだ)を落とした晴明と博雅は縁で酒を呑んでいる。青音は奥で休んでいる。その青音の様子を見つめる晴明。
博雅は晴明に聞いた。 「なぁ、晴明。呪は人の心を縛る事もあるのか?」
晴明は博雅に顔を向け 「心を?・・・ さては愛しい方でも出来たか。」と盃を口にした。
食べている口を止める博雅。
それを見た晴明は 「図星のようだな」と、からかった。
博雅は袖で顔を隠し 「ダメだ!見るな晴明。決して俺の心を覗くな」 と言うと、後ろから蜜虫が 「出来たか?」 と言って、団子を差し出した。
「おおぅ!」と驚く博雅。それを見て笑う晴明。
「男が女を愛しいと思う。女が男を愛しいと思う。その気持ちに名を付けて縛れば恋だ」 と晴明は言う。
「そういうものなのか?」と博雅。 「そういうものだ」 と晴明。
晴明は盃を置き、「博雅。呪によって、惚れた女に天の月をくれてやる事も出来るぞ」 と身を乗り出して言った。
博雅も 「月を?どうやって?」 と身を乗り出した。
すると晴明は片手を上げ 「月を指差してこう言えばいい。 愛しい娘よ、あの月をお前にあげよう。・・娘が“はい”と頷けば、月はその娘のもの」
それを聞いた博雅は爆笑した。 「はははは!そんな恥ずかしい事が言えるか!」
晴明:「言えぬのか?」 博雅:「ああ、言えん!口が裂けても言えん」と団子を頬張る博雅。
その後、爆笑する三人。
---寺門前---
満月の夜。笛を吹く博雅。近くには以前の牛車が止まっている。
女: 「今宵もまた、美しい笛の音でございました。」
博雅: 「あのぉ」 女: 「はい」
博雅: 「空をご覧なされ。美しい月が輝いています。」
女は帳を少し開けて月を見た。博雅が 「この博雅、あなたがお元気になられるよう、今宵の月をあなたに差し上げましょう。 あの美しい月はあなたのものです!」と言った。
しかし、女は帳を戻しシクシクと泣き出した。
「如何されたのです?」と聞く博雅。
「昔、月の歌をいただいた事を・・・」と女。
「望月の 刻のゆくまに 欠けぬれば 共に道行け あけの白露」
博雅:「あなたが悲しみの中にいるのは、その歌を送ったお方を今でも忘れられぬからですか?」
「望月の君。私はあなたをその悲しみから解き放ちたい、楽しげに笑うあなたのお声が聞きたいのです!」と博雅は語りかけた。
女: 「いいえ、博雅様。私はあなた様の笛の音にどれだけ救われた事でしょう」
博雅:「ならばお忘れなされ!この私があなたを・・・ 望月の君!」
しかし、女は 「博雅様。あなた様にはもっと早くお目にかかりとうございました」と言って、扇を閉じ合図を送って博雅の前から立ち去ってしまった。
---道尊のアジト---
その頃、道尊は 「ゴンゴロゾウギョウミン ミタマガリ オンサワラ アンダラタウン」と唱えながら、六壬式盤(りくじんちょくばん)を回して式占をしていた。
その内、式盤がピタリと止まった。それを見た道尊は何やら指で方向を示し、 「星ふたつ・・・ なるほどそういう事であったか。」と鼻で笑い、胸の前で印を結び、 「君不見乙訓新鬼(きみみずや、おとくにのしんき) 血涙作海沈舊鬼(けつるいおみとなりて、きゅうきをしずむるを) 好収共我骨江潭(よし、わがほねをともにおさめよ、こうたんに) 我怨天子無絶期(われ、てんしをうらむこと、たゆるきなし)」と唱えるのであった。 

   〔捕らえられる晴明〕
晴明は庭にいる青音の様子を見つめている。晴明は「青音殿、一体どうなされました?」と聞いた。
青音はそれには答えず、「博雅様は良いお人でございますね。いるだけで心が和やかになりまする。大事になさいませ。晴明様にとってはかけがえの無いお方でございます」と言った。
晴明が 「ええ」 と答えたその時、晴明と蜜虫は只ならぬ気配を感じた。晴明邸は検非違使に取り囲まれていたのだ。門が蹴破られ、中に流れ込む検非違使たち。 
---内裏の庭---
後ろ手に縛られた晴明と青音が玉砂利に座っている。周りは検非違使が取り囲み、殿上人が揃っている。その中に陰陽頭の道尊もいる。
そこに右大臣の元方が現れた。「安倍晴明!お前は陰陽寮に属する陰陽師でありながら、自が出世のため皇子、敦平親王を呪い殺そうとした」と因縁をつけた。
博雅は敦平を救っただけだと反論したが、元方は晴明が自分でかけた術を自分で解いたのだと、あくまでも晴明の仕業と決めつけた。
そして青音の事を人間ではなく、鬼の眷属と言い、青音が口から鬼を吐いたのを見たものがいるとも言った。
それを聞いた晴明は笑い、「それは一体どなたにござりましょう?」 と元方に尋ねた。
元方はちらりと道尊を見やり、黙り込んだ。
晴明は笑い 「都とは奇なるところでござりますなぁ」 と言って、バッと縄を解いた。そして青音の縄も解こうとした時、元方は検非違使の右近に「ええい!右近、斬れ」と指示を出す。
右近が斬ろうとした時、 奥から 「待て!」と声がかかった。
左大臣の師輔だ。師輔は帝の許可もないのに陰陽師を斬るのか?と元方をなじり、晴明に難儀をかけたと謝った。
博雅が晴明に駆け寄り、青音と共に去ろうとした時、道尊が何やら不審な仕草をした。
「陰鬼斬殺(おんきざんせつ)」と扇の上で小さく印をきり、隣に立つ検非違使にその印を移した。
検非違使は正気を失った様子で晴明達に近づき、太刀を貫いて斬ろうとした。
それに気付いた青音が体を差し出し、斬られて倒れた。博雅がしきりに声をかけるが青音は動かない。
晴明は道尊を見た。道尊は薄ら笑いを浮かべ、 「まこと、都とは奇なるところでござるのぉ」 と口元を動かすのであった。

   〔不老不死〕
晴明、博雅、蜜虫の三人は青音を牛車に乗せ、青音と出逢った将軍塚にやって来た。
博雅は青音を守れなかった事を晴明に謝った。
それを聞いて晴明は、さも可笑しそうに声を上げて笑った。博雅は晴明が何故笑うのか理解出来ない。
晴明は牛車の青音を見るように博雅に言った。博雅が牛車を見ると、死んだ筈の青音が目を開けて起き上がった。
博雅は夢を見ているようで晴明に 「これも呪か?」 と聞いた。
晴明は 「いや、呪ではない。青音殿は不老不死の体を持っているのだ」 と告げた。
青音がそのことについて話し出した。150年前、長岡京の折、青音は桓武天皇の命令で不老不死を得る人魚の肉を口にしたという。それは早良親王の怨霊を静める儀式であった。早良親王は謀反の罪を着せられ、不遇の死を遂げたのだ。
早良親王は怨霊と化し、帝の周りの者を次々と死に至らしめ、疫病を振りまき、天変地異を起こして都を恐怖へと陥れた。 
それによって、桓武天皇は長岡京をわずか10年で捨てる事になった。
新しい都を造るにあたって、帝は早良親王から都を守るために、ここ、将軍塚に坂上田村麻呂の像と剣を収めたのだ。
博雅は青音に 「何故、青音殿が人魚の肉を食わねばならなかったのです?」 と聞いた。
青音は 「塚を守り、もしこの塚が壊され、親王の霊が甦る事があれば・・・ 都を守れる者を見つけ出し、そのお方をお助けする。」 と答えた。
青音は 「人と出会う程辛いことはございません。出会えば必ずや、そのお方の死に目に逢わねばならぬのです。」 と言った。
「哀しい運命(さだめ)です。・・・青音殿、どなたか心に思われたお方でも?」 晴明の問いに青音は答える事はなかった。

博雅が葉ふたつを取り出して吹いている。晴明は石に腰掛け、夜空を見上げている。
青音は過去の事を思い出していた。早良親王との楽しい思い出だ。早良親王は青音に自分の首に掛けていた鈴をくれた。
良い鈴の音がする。今も青音の首に掛かっている。早良親王の形見になってしまった。
ふっと青音は晴明は博雅の方は見た。その目には真実が見えてきていた。
---祐姫の部屋ちかく---
祐姫は相変わらず、歌の書いた扇を見つめている。
道尊と元方が話している。道尊は元方が晴明を捕らえて斬ろうとした事を 「愚かな事」となじった。
元方は 「何故ワシに近づいたのじゃ?」と道尊に聞いた。
道尊は 元方の心の中に師輔に対する嫉妬、憎しみの力が渦巻いていて、それが何でも破壊する人間の最も素晴らしい力なのだと答えた。
元方は 「何が望みなのだ? 大臣の座かそれとも帝になり代わり、この世を治めるつもりか?」と聞いた。
道尊は 「帝? 帝が出来ることは、たかが知れてましょうな」と言う。
それを聞いた元方は恐ろしくなり、「ワシはもういい、もう知らん」と逃げ腰になった。
道尊は 「何をおっしゃいまする。もう次の手は打ってあるのですぞ。・・・都の守り人とやらは、早く消してしまわねばなりませぬなぁ。」と不敵に笑った。

   〔生成り(なまなり)1〕
「望月の 刻のゆくまに 欠けぬれば 共に道行け あけの白露」
博雅が晴明邸の縁で酒を前に、歌を詠みため息を付いた。
晴明は奥の部屋で蜜虫と仕事をしている。ニヤリと笑う晴明。
博雅:「なあ、晴明。俺の吹く笛は美しいと言ってくれたな。」
晴明:「ああ」 蜜虫:「博雅サマの笛は美しいぞ」
博雅:「嬉しいが、しかし所詮はそれまでの事。笛など結局は何の役にも立たぬものだ」
晴明:「お前は良い漢(おとこ)だなぁ」
はぁ~と博雅はもう一度大きなため息をついた。
その時、蜜虫が何かを感じて、晴明に来訪者が来る事を告げた。

---左大臣:藤原師輔がやって来る---
藁人形を晴明に見せ、帝と敦平皇子がまた狙われている事を話す。
女が娘の任子の所にやって来て、「その子を渡せ。敦平を渡せ。帝は決して渡さぬぞ」と言って、女の生首と藁人形を置いて行ったというのだ。
女は鬼にも人間にも見えると言う。それを聞いた晴明は「生成りだな。生きながら鬼に変わる女の事だ。」と説明する。
「どうしたらよいのじゃ?」と聞く師輔に「あの男に女を迎えていただくしかあるまい」と答える晴明。
「あの男とは?」と博雅が聞くと「決して渡さぬ。女にそう言われた男の事だ」と、事もなげに言う晴明。
博雅と師輔の顔色が変わったのは言うまでもない。

   〔生成り2〕
内裏にて博雅が帝に女を迎えるように奏上している。
帝は「朕を恨むのもなど、おらぬ」と嫌がっている。
そこへ呪符を持った晴明がズカズカと帝の側近くに入って行く。
その部屋には人型大の藁人形と小さな藁人形が1体づつ置かれ、その周りは五つの御幣で囲まれている。
その藁人形に呪符を置きながら、「帝、相手は人ではございませぬ。女にはには我らの姿が見えぬように結界を張っておきまするが、お声をお出しになると術が破れ、危ういことになるやもしれませぬ。くれぐれもお声をお出しになりませぬように」と言った。
その時、帝の側近くで寝ていた敦平皇子が泣き出した。
晴明が小さな藁人形に「真神気 入迷眠(しんしんき にゅうめいみん」と呪を唱えると、ピタリと泣き声が止んだ。
それを見て帝も晴明に全てを任せる気になたのです。

----- 夜、内裏の俯瞰図 -----
晴明の呪と道尊が唱える呪が交差してゆく。

晴明:「諾々睪々 左帯三星 右帯三牢 天翻地覆 九道皆塞・・・(だくだく こうこう そたいさんせい うたいさんろう てんはんちふく きゅうどうかいそく)」と呪を次々唱えてゆく。
そこに怪しげな風吹きだし、女がやって来た。
女の姿は、緋色の着物に頭には三本のロウソクを付け、手には木槌を持っている。
帝を探している様子だ。
女は藁人形に目をやると、帝だと思い込んで近付く。部屋の中で晴明が呪を唱え、結界を張っているために他の者の姿は女には見えない。
女は日頃の恨みを藁人形にぶつけ、木槌で釘を刺してゆく。すざまじい力だ。
女は泣きながら歌を詠んだ。
「望月の 刻のゆくまに 欠けぬれば 共に道行け あけの白露」
これは博雅が密かに思いを寄せている女が詠んだ歌と一緒!
それに気付いた博雅&晴明。
その事で晴明の呪が一瞬途切れた。そこにもうひとりこの歌に気付いたのは歌を女に送った本人。帝だ。
帝は歌を反復し、相手が祐姫であるとこに気付き「祐姫か?」と声を出してしまう。

それが、結界を破るきっかけになてしまった。
祐姫は自分が釘を刺していたのは藁人形だった事に気付き、帝に襲い掛かる。
その時、晴明が博雅に「博雅!」と声を掛け、博雅が帝の前に立ちはだかった。
祐姫に止めるように諭す博雅。祐姫は一瞬立ち止まったが、「おぅ、これは源博雅!」と叫び高笑いをする。
様子がおかしい事に気付いた晴明は祐姫の背中に呪符が貼り付いているのを見た。
祐姫が博雅に襲いかかる。必死に抵抗する博雅。
そこへ晴明がやって来て、祐姫の背中の呪符を取り去った。
そうすると、祐姫の呪縛は解け、自分の姿に驚愕する。
呪符には「博雅呪殺」の呪いがかけられていた。
博雅は祐姫(望月の君)の思い人が帝だったと認識し、帝は祐姫に侘びの言葉を掛けました。

しかし、ここで道尊の恨みの呪が復活!
祐姫の恨みの心にまた灯がともり、様子がおかしくなって来た。
晴明は祐姫が「生成り」になると判断し、阻止する呪を唱えようとするが、恐れをなした帝に抱きつかれ、呪が唱えられなくなってしまう。
そうするうちに、祐姫は「鬼」に変化してしまった。
「おのれ!許さぬ!」と言って、帝達に飛び掛り、殺そうと必死になっている。
晴明は素早く立ち上がり、敦平皇子を抱きかかえると、帝を促して、部屋から脱出した。
祐姫は追いかけようとするが、博雅が祐姫を抑える。
そして、「喰らうなら、この私を喰らえ!」と言った。祐姫は博雅の腕に被りついた。
必死に絶える博雅。「望月の君。そなたに喰らわれるなら私はかまわぬ」
この言葉が祐姫を正気に戻し、博雅の脇差を抜いて、自害を図る。
博雅クンが駆け寄って抱き上げた時には祐姫は元の人間の姿に・・・
祐姫は博雅に出会えたことに感謝し、最後に笛の音が聞きたいと所望した。
祐姫を膝に抱えながら笛を吹く博雅。祐姫の命は儚く消えていった・・・

晴明は祐姫の背に貼られていた呪符を矢に括り付け「音もなく 姿も見せぬ 呪詛神 こころばかりに 負うてかえれよ」と、唱えて矢を解き放つ!
その矢は一直線に道尊のアジトに届き、道尊の式神が道尊をかばい、矢に焼き尽くされる。
道尊のアジトもまた、矢の炎で焼き尽くされた。
「おのれ!晴明!」道尊の雄たけびがこだまする。




この後、物語2に続きます。。。


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