知覚過敏(歯が凍みる)
群馬県前橋市 大野歯科医院の大野純一です。歯科医師をしていて、今でも不思議に思うことがあります。それは「冷たい水に凍みる」と訴えて来院される患者さんは、いつも似たような時期に集中してお越しになるということです。歯科医師仲間に訊いても、同じような印象を持つようです。水道の水の変化とか、ビールを良く飲む季節になったとか、そういうものが関係しているとも思いますが、いまいち明確な理由がわかりません。原因はさまざま知覚過敏、といっても原因はさまざまです。私の医院は歯周病の患者さんが多くお越しになるので、歯周ポケットから細菌を取る治療の後に、水に凍みたりするケースが多いです。歯の表面を特殊な道具で擦るため、また歯ぐき(歯肉)の腫れが引いて、隠れていた歯の根元の部分が露出して、一時的に凍みるからです。そのような場合には、特別何もしなくとも、数週間の単位で徐々に消えていきます。その間、それが日常生活の中で気になって仕方がない、という方には、該当部位に刺激をブロックする薬を塗ります。これらは「知覚過敏症」という病名がつきます。もう一つは、虫歯(カリエス)などが原因で、似たような症状が出ます。この場合は「知覚過敏」という症状の名前で、正確には「XX(例えば虫歯など)による知覚過敏」と表現されます。 大きな虫歯であったり、修復物が外れていたりしたら、患者さんにもすぐに判ります。しかし劣化はしているが、修復物が外れていない場合などは、自分では原因がわかりずらでしょう。主治医の先生の診察が必要になります。いずれにせよ、その場合は刺激の原因になっている状態を改善すれば、症状はなくなるはずです。歯磨き粉で治る? 「知覚過敏症」と単なる「知覚過敏」の違いをお話しましたが、知覚過敏用の歯磨き粉というものを使って効果がないので、来院される患者さんもいらっしゃいます。 そのような製品には有効成分が入っているはずですが、私の経験上、なぜかそれを使って悪化した患者さんばかりとお会いする機会が多いようです。もっとも、効果があれば歯科医院には来ないでしょうけど。原因不明の場合もいずれにせよ、凍みる原因は何か?を突き止めて、それに対する処置を行うことが大切なのですが、実際に診療に当たっていると、原因不明のケースにも出会います。そのような場合には、私は経過を観察してみます。多くの患者さんはやがて症状が落ち着き、少数の患者さんは後で原因がわかる状態になり、それに対する処置を行っています。それらは「日常生活で特に不自由しない」ことが前提で、もしそのために日常生活が送れないような場合は、歯の神経の炎症を疑うべきでしょう。幸い私の経験では痛みではなく、単なる知覚過敏が原因で歯の神経の治療をしたことは、今のところ一件もありません。