2010/09/16(木)22:06
今日の読売新聞に
柳田理科雄さんの『理科雄は本名です』という本の広告が載っていました
こんなコラムが150本載っています
曾祖母とヤマモモ
仕事場からの帰り道、ヤマモモの実がたくさん落ちていた。子供の頃、その赤紫の実
は初夏のまたとないおやつだった。
小学1年のとき、家に曾祖母が遊びに来た。お土産は袋いっぱいのヤマモモである。跳
び上がって喜んだ。僕の喜びようがよほど嬉しかったのか、曾祖母は袋から一掴み取って、
母が皿を持ってくるのも待ちきれず、手近な紙にバラッと広げた。
ところがそれは、やり終えたばかりの国語の宿題だった。一面に紫色の斑点がついた。
僕は泣いて怒った。おぼろげな記憶だが「字を覚えるのは大事なのに」と叫んだ気がする。
曾祖母は、ごめんね、ごめんねと何度も謝りながら帰っていった。
あとで母が言った。「ひいばあちゃんは学校に行かなかったから、字が読めないのよ」。
あれだけのヤマモモを集めるのに、曾祖母はどれほど苦労したのだろう。日に何本もな
いバスを、あれから何時間待ったのか。ヤマモモの季節が来るたびに、この記憶がよみが
える。思い出し続ければ、曾祖母はゆるしてくれるだろうか。
~~~2010年9月16日読売新聞掲載~~~
今日はとても秋らしい涼しい一日でした
どうしてでしょう秋って涙もろくなります
理科雄は本名です価格:500円(税込、送料別)