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2007年11月01日
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カテゴリ:天皇・皇室関連
和

 万葉集の中には、天皇を指す言葉として天皇と大王の両方が出てくる。今回は、これについて簡単に書いておきたい。

 まず、私見では天皇(テンノウ)という言葉は7世紀前半の推古朝に成立したと思われる《→天皇号のはじまり》が、かりにそれが7世紀後半の天武・持統朝に成立したものであったとしても、8世紀以降は天皇号は成立していたはずである《→天皇号の成立年代》。

 さて、天皇という言葉が成立する前は、天皇は何と呼ばれていたのか。大王だろうとされている。そして、君主の称号は、王→大王→天皇と変化していったと考えられている。しかし、万葉集では8世紀の聖武天皇に対しても大王という言葉が使われている。ただしダイオウではなくオオキミという読み方をしている。(ちなみに、市販されている万葉集の本では「大君」と記されているので、必ず原文表記も参照されたい。)

 聖武天皇に関していえば「わごオオキミ(我が大王の意味)」(万葉集917,923,926など)や、「わがオオキミ」(万葉集1005,1050,1062など)の使い方があり、また「オオキミのみことかしこみ」(万葉集1453,1785,1787など)という使い方がある。これらの用法からして、大王は歌の作者との関係で特定の個人(現在の天皇)を指していると言える。聖武天皇以前に関しても同様の用法である。

 なお、この大王は天皇のみを指すのではなく、例外的にではあるが高市皇子(万葉集199)や石田 王 いわた の おおきみ(万葉集420)にも使われている。これらは亡くなった皇族に対する歌だから、とくに美化した言葉なのだろう。

 万葉集では皇族である王に関しても、王という表記でオホキミという読みが付けられる。また、キミは君や公などの読みとなっている。相手を敬って使う言葉である「あなた様」や「あの御方」や「上様」のようなニュアンスである。したがって、キミよりも一段上のオオキミは、現代でいう「殿下」や「陛下」に近いのではないかと思われる。

 キミの万葉仮名には、伎美、岐美、伎弥、枳美、吉美がある。例外的だが、万葉集4465には、伎美という言葉が代々の天皇という意味で使われている。ただしこの場合は、「天皇の 天の日継ぎと 継ぎて来る 君の御代御代 隠さはぬ 明き心を 皇辺に 極め尽くして 仕へ来る……」のようにリズムを合わせるための省略だろう。一方、オオキミの万葉仮名には、於富吉美、於保伎美、於保支見、於保吉民、憶保枳美、意保枳美がある。



 一方、天皇は漢語のように読む場合は「テンオウ」(歴史的仮名遣いでは「てんわう」)だが、そのほかにスメロキという言葉が当てられる場合もある。天智天皇(万葉集29,230)、仁徳天皇?(万葉集4360)、代々の天皇(万葉集167)を指す場合にそう読まれている。聖武天皇(万葉集973)を指してスメラと読ませる場合もある。万葉集3325では、皇を皇子の意味でスメラミコと読ませている。また、万葉集484の題詞で皇兄をスメイロセ、万葉集130の題詞では皇弟をスメイロドと読ませている。

 なお、スメロキの万葉仮名は須売呂伎であり、皇祖、皇祖神、皇神祖、皇御神、天皇寸でもスメロキと読ませる。オオキミが特定個人を指すのに対して、スメロキは「スメロキの遠き御代御代は……」(万葉集4205)のように代々の天皇という歴史的連続性のニュアンスを入れたり、「スメロキの神の……」(万葉集322,443,1047,1133,2508など)のように神と関連した使い方もしている。


 天皇が神格化されるのは天武・持統朝だろうとされている。たしかに天孫降臨の日本神話として形式が整ったのはこの時代だろうが、何もないところから突然に君主が神格化されることはないだろう。それ以前から神格化への何らかの素地があったに違いない。そこで、私としては万葉集5の長歌に注目したい。重要部分だけ引用すると、
むら肝の 心を痛み ぬえこ鳥 うらなけ居れば 玉だすき かけの宜しく 遠つ神 我が大君の 行幸の 山越す風の……

 この歌の後書きから推測するに、これは639年(舒明十一年)の冬に天皇が伊予の温泉の離宮に行幸された際に、讃岐国の安益郡の軍王の作った歌である。『新編 日本古典文学全集 万葉集1』(小学館)の26ページ頭注ではここの「遠つ神」を説明して「我が大君の枕詞。天皇を天つ神の子として遠い昔から続いた輝かしい血統の末とみていう」とあり、そこまで断定できるとしたら7世紀前半にすでに天皇の神話が形成されていたことになろう。

 私としてはもう少しシビアに解釈しておく。すると上の引用部分の意味は、「(軍王は)からだの中から心が痛んでヌエ(鳥)が胸裏で鳴いているようなので、玉(のような天皇)をたすきにかけるように言葉をかけてくださるだけでも嬉しいのに、遠い(ところに普段はいらっしゃる)神である私の大王が行幸されているというこの山を越えて来る風が……」となろう。この部分の原文は大王である。お言葉を頂けるだけでも嬉しいのに、この山の向こうをいま行幸されているのだと思って勇気づけられているのである。天皇は“心の支え”のような存在であろうか。そのような意味で神と呼ばれていると考えてよいのではないかと思う。

 天皇の臣下は、そのようにして天皇に力づけられて生きてきた。天皇の歴史性は、そのような現在の天皇のカリスマに後から付け加えられていったものとも考えられる。初期天皇の系図が後代になって創作されたのか、それとも実際にそういう血統が存在していたのかははっきりしないにしても、天皇の神格化は系図が先ではなくてカリスマが先だと考えた方がいいよう思う。ちなみに私としては、神武天皇までは男系血統として実際につながっていたと見なしている。



〔蛇足〕
 ヌエは、とらつぐみの古名。夜間「ひょうひょう」と鳴く。実際にどんな鳴き声かを知りたい人は《こちら》に音声ファイルがある。私としては「さえずり4」「さえずり5」がこの歌に近いのではないかと思う。







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最終更新日  2007年12月23日 20時30分09秒
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