カテゴリ:短歌
2月22日『NHK短歌』 題「帰る」または自由 選者 川野 里子 特選三首の中から、私が注目した歌にコメント。 折ると祈る同じに見える眼鏡かけこれから歩む晩年がある同じに見えそうな字はいろいろありそうだが、折ると祈るを選んだところがお見事。私としては挫折という言葉がすぐに連想されたが、一般に、年をとればきっと生きていくのに骨が折れるだろうし、また、そんな苦労の中で祈りが大きな比重を占めてくるかもしれない。老人には老人特有のものの見え方がある。 燕帰りて妻としみじみ巣を仰ぐ高きにしばし思いははせる燕がいなくなった巣を見上げているのだろうと思う。そして、巣立っていった子供たちのことも重ねて暗示しているのではないかとも思える。きっと社会の中で高く高く羽ばたいているのだろう。 半年にいちど帰るか帰らぬか「ただいま」と子は子のふりをするたぶん子は忙しくて親のことなど気にしてはいられない。はっきりいっていい大人が子なんてやっていられないが、親のために敢えて子のふりをする。 では、自作。 「新帰元・・・」いったいいずこへ帰るやら 不信心者の立派な戒名今回はちょっと皮肉な歌にしてみた。「・・・」は、いぶかしく思う気持ちを表現した私の新たな試み。新帰元とは、「新たに浄土に赴いた者」「新しき死者」という意味で、白木位牌の冒頭部分に書かれる。仏教なんか信じていなければその人の帰るべきあの世はなさそうだし、かといって即物的に考えて死んですべてがバラバラになって元素に帰っていくのならば、主体はもはや存在しない。にもかかわらずその人の主体を暗示する立派な戒名がその後に続くとはね・・・。 《『NHK短歌』のホームページ》 人気blogランキング ↑この記事が面白かった方、またはこのブログを応援してくれる方は、是非こちらをクリックしてください。 「p(^o^) 和の空間」の Window Shopping |
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