レッセフェールの終焉
90年代後半にアジアを襲った通貨危機や、00年代前半のITバブル崩壊による経済危機は、いわいる規制緩和、グローバリゼーションによる資本と商品の流通の地球規模での自由化によって乗り切った、というのが定説になっています。途上国は新興市場になり、ローコストな労働力を提供する工場となり、先進国は金融工学と銘打ったピンハネに励みました。その幻想というかバケの皮がはがれたのがリーマンショックです。アメリカ共和党の、向こう見ずな市場第一主義が世界経済とモラルを破壊したなれの果てだったのです。本来であればそこで、市場は万能でないことに気がついてG20の枠組みで、根本的な対策を打つべきだったのかもしれません。しかし、つかの間の好景気をもたらしたものがすべて規制緩和のおかげであり、市場介入は社会主義である、という事実誤認がまかり通ったために現在のような世界恐慌一歩手前の状態にいるのではないかと思うのです。ハイエクの理論「市場は万能である」というのは完全な間違いですし、その一方でケインズの理論「公共投資による乗数効果」も正しいわけではありません(日本が好例)。しかし、現在の局面では、介入と調整、国際協調を旨とするケインジアンの方が止血効果は高いように思えてなりません。ある程度の体力が回復しなければ、市場万能主義だけを振りかざすのは危険と言わざるおえないでしょう。