2008/08/25(月)16:17
[6]運命はヒトを置き去りにして。
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。
※ストーリー上、伊達政宗の性格が酷いです。
政宗ファンの方はご注意ください。
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※死にネタ注意
※暴力表現あり
【時の迷い人】 ~6~
菜香は、いつも自分が山菜をとりにきている辺りにいた。
この辺は、色々な種類の山菜が自生しており、菜香のお気に入りの場所だった。
山菜を入れるようの籠を抱え、ちょっと鼻歌交じりに草を分けて山菜を探していた菜香だったが、聞きなれない音を耳にし、ハッと顔を上げた。
それほど遠くない場所で、「パンッ」と、何かが破裂するような音が鳴った。
「……なに?」
ざわざわと、胸が騒ぐ。
鳥たちが、われ先に、飛び立っていくのが見える。
そして、ザザッと、草をかき分ける音がしたと思ったら、鹿が菜香のすぐ近くを走り去っていった。
その視界に捉えた、「赤」。
菜香の近くを逃げていった鹿は、怪我をしていた。
一瞬、カゴ吉が狙った獲物に逃げられたのか?と思ったが、その場合、矢傷でなければおかしい。
だが、鹿の傷は、それほどしっかりと見たわけではないが、矢傷とは何かが違う気がした。
心臓が、うるさくはねる。
(ここにいてはいけない。)
何かが菜香に訴えかける。
菜香は慌てて籠を抱えなおすと、鹿が逃げてきた方向を避けながら、村へ戻るために足を動かした。
だが――。
「へぇ……。獲物を追いかけてきてみれば、女がいたぜ。」
いやな響きの声だった。
聞いたこともない声だった。
後ろを振り返る余裕もなく、菜香は駆け出した。
「へえ、追いかけっこか!?」
「せいぜい、逃げてみな!」
複数の男の声がする。
菜香を追いかける足音がする。
いくら、森になれているとはいえ、所詮女の足だ。
必死に逃げたにも関わらず、菜香は男たちにつかまった。
「……あ……、あ……。」
無理やり腕をねじられて、あごをつかまれた。
目の前には、醜く笑う男の顔。
男は4人いて、ばらばらではあるが全員が武装していた。
(のぶせり――!!)
『やつらは、容赦がない。女と見れば襲い、子供からでも金品を奪おうとする。――見つかる前に逃げろ。』
カゴ吉の声が聞こえる。
共に暮らした数年の間に、何度聞かされたかわからない。
――つかまった!
つかまってしまった!!
ガクガクと、体が震える。
この男たちが、自分をどういう目で見ているのか、カゴ吉の言葉が無かったとしても、気付かずにはいられなかっただろう。
「――っ!! は、離して――!!」
恐怖をこらえて、出せる限りの声で叫ぶ。
おびえる菜香に、男たちは、心底楽しそうだというような顔で笑う。
「――へえ、こんな山ん中にはもったいないくらいの、別嬪じゃねえか。」
ニヤリと笑う男の黄色い歯が汚くて、息がくさくて、菜香は顔をそむけようとしたが、あごを強くつかまれていて、顔を動かせない。
泣きそうになりながらも、気丈に男たちを睨みつける菜香に、また、男たちは気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「気の強ええ女は、好きだぜ。――泣き喚くまで、いたぶるのが楽しいからな。」
下卑た顔で吐き気がするようなことを言う。
無理だとわかっていても、菜香は、諦めたくなかった。
必死で男たちの拘束から逃れようと暴れる。
その瞬間、パンっと、頬に痛みが走った。
痛みに一瞬動きをとめた菜香を、男たちが土の上へと押し倒す。
腐葉土が積み重なった、湿り気のある柔らかい、菜香には馴染みのある土だが、今は、それが顔の横にあるのが、押さえつけられた腕が少し埋まるのが、尋常でない状況を菜香に知らしめるようで、怖かった。
がむしゃらに手足をばたつかせようとする菜香を、男たちは2度、3度と殴りつけてくる。
痛くて、怖くて、涙が流れる。
それでもおとなしくしようとしない菜香に、今度は男が腹部辺りをなぐりつけてきた。
「っ! ……かはっ!!」
一瞬、菜香の体が反射的に跳ね上がり、目の前が真っ暗になる。
「いいかげん、無駄な抵抗はやめとけ。」
「そうそう。したら、いい目、見させてやるからよ~。」
男たちの声が、不快で怖くて、仕方が無かった。
頬を何度もたたかれて、視界がくらくらした上に、おなかを殴られて目の前が真っ暗になり、呆然とどこを見るとも無しに涙を流している菜香に、弱いものをいたぶるに高揚感を感じているらしい男たちは、本当に楽しそうにわらった。
――それがまた、怖くて仕方がなかった。
ようやく菜香が抵抗を諦めたと見た男たちは、菜香の着物を遠慮なく暴いていく。
襟を無理やり広げ、菜香の胸元をさらす。
「――やあっ!!」
外気にさらされた胸元を隠そうとするが、手を押さえつけられていては、何もできない。
男たちは続けて、着物のすそを開き、手を菜香の足に触れようとした――。
その瞬間、ザシュッ!と――重い、何かを振り下ろした音が聞こえた。
そして、何か生暖かい雫のようなものが、菜香の顔に、そして胸元に飛び散った。
――一瞬遅れてそれが赤い色をしていて、いつかどこかで嗅いだことのある匂いをしていることを理解する。
目の前の男は力なく菜香の隣に崩れ落ちた。
――その向こう側に、全身から怒りの感情が吹き出ているような、それでいて、いつもは無口でも岩のようにどっしり重みがあり、頼りがいがある優しさを感じられるカゴ吉さんが、一切の感情を捨て去ったような冷たい、氷のような目をして、鉈を握り締めた格好で立っていた。
何が起こったのか分からない。
――いや、起こったことはおおよそわかるのだが、頭が理解することを拒否していた。
* * *
乱れた着物のまま着物を直そうとも、顔に掛かった血をぬぐおうともせず、呆然と自分を見上げてくる菜香に、心の中で苦い笑みが浮かぶ。
おそらく、怖いのだろう、カゴ吉が。
……理解しているつもりだ。
自分が、今、どういう顔をしているのか――。
だが……。
(菜香が無事であればそれでいい。)
嫌われようと、怖がられようと、菜香が元気で生きていてくれれば、カゴ吉には、それ以外はどうでもよいことだった。
そして、残った3人の男たちに向き直る。
仲間の1人の頭を、不意打ちに鉈で叩き割られたのだと理解した男たちは、憤怒の形相でカゴ吉を睨みつけてきた。
「てめえ――! 覚悟は出来てんだろうな!?」
言いながら、腰に下げていた剣を抜き、カゴ吉に飛び掛ってくる。
今はのぶせりとは言え、一応戦の訓練をしていたらしい男たちと、ただの猟師のカゴ吉では、どちらに分があるかは決まりきっていた……はずだった。
事実、次の男が倒れたときには、カゴ吉もまた血まみれの状態だった。
息は荒く、傷からは鮮血が流れ落ちている。
それでも、カゴ吉は止まらなかった。
仲間が倒れるのに気を取られたらしい男のスキを見逃さず、3人目の男をも地に叩きつけた。
残りは1人――。
が――。
4人目の男は、3人目の男が倒れたのとほぼ同時に、カゴ吉の腹部を持っていた銃で打ち抜いていた。
「がはっ!!」
カゴ吉の口から、大量の血が吐き出される。
「――!!!!!」
目の前がかすむ。
それでもカゴ吉は、その4人目の男を地べたに叩きつけるまで、止まることはなかった。
最後の男が倒れた後、カゴ吉は、菜香の方を振り向いた……ようだった。
が、それは適わず、ドシンと、重い音を立て、カゴ吉はその場に崩れ落ちた。
それまで、ただ呆然と、目を開いて目の前の出来事を見ているだけだった菜香が、ようやく我に返り、無意識にカゴ吉の下へと駆け寄った。
――先ほど、自分は確かにカゴ吉に対して少なからず恐怖を感じたはずだった。
だが――。
倒れたカゴ吉に駆け寄るのに、何の躊躇もすることはなかった。
「――カゴ吉さん!! カゴ吉さん!!!!」
必死に呼びかける菜香の声に、カゴ吉は、ふっと閉じていた目を開け、菜香を見てくれた。
「……っ! カゴ吉……さん!!」
涙が溢れる。
どうしたらいいのか分からない。
血が、止まらない。
必死で傷口を抑えるけど、そんなことは何の益にもなっていないことは、菜香にもよくわかっていた。
いやだ、いやだ、いやだ、いやだ――。
止まって、お願い! 血、止まってよ――!!!!!
ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。
泣きたくないのに。
「――す……まんな。」
かすれるような、力の無いカゴ吉の声が聞こえて、傷口を見ていた菜香は視線をカゴ吉の顔にうつす。
カゴ吉は、「なぜ?」と問い掛けたくなるくらい、穏やかに笑っていた。
「……もう……頭を、撫ぜて……やれん。」
すでに、手を動かす気力さえないのだろう。
菜香はさらに涙が溢れた。
ぶんぶんと頭を振って、そんなのいい!と菜香は叫ぶ。
「……っ、死なないで――。」
無理な願いだとわかっているのに、言わずにいられなかった。
「……すまん――。」
謝ったかと思うと、カゴ吉は息を吐いて、ゆっくりと目を閉じた。
「目、閉じないで!!」
菜香言葉に、カゴ吉は笑ったようだった。
「――おまえが……無事で、よかった……。」
そう言った後、カゴ吉の全身から力が抜けるのが分かった。
「カゴ吉さん! カゴ吉――、お父さん!!!!」
目を開いて欲しくて。
いなくなってしまうなんて、信じたくなくて。
――殆ど無意識にこぼれた言葉――。
『お父さん』
いつか、カゴ吉さんのことをそう呼びたくて、でも、ちょっとした気恥ずかしさがそれを邪魔して……。
中々呼べなかったのに、するりと今、口から飛び出した。
今、呼ばなかったら、永遠にその機会を失ってしまう。
そう、無意識のうちに頭が判断したようだった。
その『お父さん』という言葉に、元々穏やかだったカゴ吉の顔が、嬉しそうに笑みを作るのがわかった。
――聞こえた。
――届いた。
「――お父さん! お父さん、お父さん!!!」
菜香は、ただ、呼びつづけた。
――おそらく、もうすでに、カゴ吉の耳には届いていないと、どこかで理解しながらも。
……それでも、「なんだ?」と、カゴ吉の、あのとても低い、けれどもとても安心できる優しい声で、菜香に語りかけてくれるのを、ただ、ただ、祈りながら……。
≪続く≫
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……すいません。
暗いです。
ハイ。
とてつもなく、暗いです。
また、バサラキャラ出てないし(^^;)