おるはの缶詰工場

2009/09/04(金)10:42

兎化 6

妄想天国(70)

 一人暮らしのワンルーム。逃げるところなんてたいしてない。案の定、部屋の奥のベッドがこんもりと盛り上がっていた。  ベッドサイドには一瑠の渡した薬の容器が、からっぽで倒れていた。 「やっぱりコレのせいか…」  他にあんなものが生える理由がない。  絢くんがこんな怪しげなものを持っているとは、と認識を改めることにする。が、そんなに危ないものじゃないだろうと結論付けた。  嫌がらせに看病しようと持ってきた食材や薬を台所に置き、ベッドへと近寄る。  丸まった布団の中から殺気を感じて、一瑠は思わず口元が緩む。 「電話でも言ったけど、ホントわざとじゃないから。そんなクスリだったなんて知らなかったし、絢くんもまさか青虫にそれが渡るなんて思ってなかったし。不可抗力なんだよ?」  盛上がった布団からはなんの返事もない。 「怒ってる?」  愚問だろう。こんな姿にされて喜ぶ人はちょっと特殊だ。 「当たり前だ!」という罵声が返ってくると思ったのに、揚羽からの返事がなかった。 「青虫ー…」  なんで返事しないんだよ、と非難を込めて名前を呼ぶ。 「青虫ったら~」  今度は微妙に甘えてみる。当然のごとく反応はない。  じゃぁ、こっちかな? と今日限定の呼び名を口にした。 「……うさぎさーん?」  突然布団が跳ねあがり、凶悪な目つきのうさぎが抱きかかえていた枕を投げつけてきた。一瑠は、顔面に飛んできたそれを悠々とキャッチすると、にっこりと笑った。  一瑠の余裕の笑みがしゃくに触ったのか、揚羽がとうとう口を開いた。  どんな罵声が飛び出るかと、一瑠はウキウキしながら待っていたのに、そこから漏れたのは息を吐く音だけだった。 「しゃべれないのか…」  ギロリと人を殺しそうなほどの視線で返事をされた。 「確かに、うさぎの鳴き声なんて聞いたことないな」  そこまで忠実にうさぎだとは思わなかった一瑠は、ちょっとガッカリしながらさっき買ってきたペットボトルを差し出した。 「のど乾いただろ?」  ベッドの上で荒い息をついていた揚羽が、うさんくさそうに一瑠を見上げる。 「これでも、多少責任は感じてるんだ。看病させて」  苦笑しつつそう言うと、揚羽は一瑠から目をそらしつつペットボトルを受け取った。  揚羽がゴクゴクと無心に飲み始めたのを見届けると、一瑠は台所に戻り氷枕と冷えぴたの準備をしてきた。  揚羽は、飲み終わったペットボトルを弄びながら、ベッドの上で気まずそうにしている。  その様子がなんだか不貞腐れた子供のように見えて、一瑠は珍しく素直に優しくしてあげたい気分になった。 「その状態で風邪薬飲んでいいかわからなぁ。とりあえず寝て様子みるか。なんか食べる?」  ふるふると首を振った揚羽の耳が、送れて左右に揺れる。  それが気に入らないのか、一瑠は持っていたペットボトルと放り出すと、目をつり上げて両耳を掴んだ。  強く握れば自分が痛いはずなのに、ギュッと渾身の力がこもっているんじゃないかと思うほど、耳にしわが寄っている。見ている方が痛い。 「可愛いよ」  思わずそう言ってしまった。  途端に揚羽が睨みつけてくるが、一瑠はその視線を受け止めて笑うと、もう一度「うん、可愛い」と繰り返した。  睨んでいた視線がゆっくりとそらされる。  うつむいて見えたうなじが赤いのは、熱のせいだけじゃないだろう。  照れた揚羽はぷいっとベッドに横になった。  投げられた枕の代わりに氷枕を滑り込ませると、ピクッと身体が震えたのがわかった。  こちらを意識しているとわかる揚羽の反応が可愛くてたまらない。 「はい、おでこ出して」  意外にも素直にその指示に従う揚羽のおでこに、冷えぴたを貼りつけると、一瑠はおかゆでも作ろうと台所へ移動する。  買ってきた買い物袋から必要な物を取り出していると、もぞもぞと揚羽が動いている気配がした。しかも、一向に落ち着く様子がない。  一体何が、と一瑠が部屋を覗き込むと、揚羽が耳を払いのけつつ寝返りを打っていた。  どうやら、耳の位置が気に入らなくて眠れないようだ。 「それで紐で結んでたのか」  出迎えられたときの姿を思い出して、一瑠は小さく笑う。  放り出していた紐を拾い、ベッドに近づいた。  気配を察した揚羽がビクッとこちらを振り返った。  警戒するように身構える揚羽の耳にそっと触れる。予想に違わず滑らかなその感触のそれを持ち上げると、痛くないように軽く結んであげた。  じっと一瑠を見つめていた揚羽の目が恥ずかしそうに瞬く。まるでそれが「ありがと」と言ったかのように見えて、一瑠は優しい笑みを浮かべる。 「どういたしまして」  ※ ※ ※ いつか校正するから!!と思いつつアップです…。  なんか微妙どころじゃなく文章がおかしい気がする。 勢いで読んでしまってください! そして…いいのか、一瑠そんなに甘くて!!! 軽いいじめっ子なつもりで書いていたので、祐輔さんほどサドっ子じゃないです…。 (風邪が全快したらちょっぴり縛ってもいいかと思いましたが) 真珠さんの日記で「オーダーメイド本屋さん」が紹介されていました! なんと、1冊からでも本を作ってくれるそうです ブログにこうやってお話を上げていますが、「誰か読んでるのかなぁ?」と読者0な感覚の私は、基本自己満足でお話書いてます。 だから、本にしてもらえるなんてすっごい嬉しい!! が、問題が………。 せっかく本にするなら、中身ちゃんとしたヤツの方がいいよね? 校正かぁ …………それよりも!(校正から逃げた…) どのお話がいいかなぁ? ショタカフェが一番いっぱい書いてるけど、逆にありすぎだし書き捨ててるのがあるし。 まとめるの大変そうだなぁ。 じゃ、思い出深い奴隷と女王様かな。 セットで1冊になったら楽しいだろうな でも女王様は楽風呂で一度同人誌に載せてるし。紙媒体持ってる………。 と、書きかけの女王様のお話があったことを思い出しました。 あー、アレ完成させて本にしたい!! なーんていろいろ考えてたら掴みかけていた一瑠さんが逃げて行ってしまったのです…。 ダメだー、何か書いてる時に他のお話考えると、どっちもできない!! とりあえず、兎化から完成させねば

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