怪獣亭非日常

2006/07/28(金)08:34

「時をかける少女」(83)と「シナリオ時をかける少女」

映画パラダイス(12)

「時をかける少女」はジュブナイルということもありあまり原作の筒井康隆本来の特徴が出ていない短い作品です。 それでも魅力的な題材であったのでしょう。「時をかける少女」何回も繰り返し映画化されています。 NHKの少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」を経ての83年。 主演は本作が映画デビューとなる原田知世。 監督は大林宣彦で高い評価を受けた「転校生」に続く尾道三部作の二本目にあたります。 本作は薬師丸ひろ子の「探偵物語」と同時上映の角川映画。 「セーラー服と機関銃」が大ヒットした当時の薬師丸ひろ子の人気は絶大で大学受験のための休業を経ての復帰作品である「探偵物語」の方が当然のことながらメインでした。 松田優作とひろ子の空港での別れのシーンが話題になったこの作品ですが現在ではこの映画のことが語られることはほとんどないようですね。当時は「刑事権カール」の坂上美和がヌードになったことの方が衝撃だったなあ。 「時をかける少女」の方は尾道という舞台の中、特撮合成を多用した絵作り(「ねらわれた学園」は凄かった)と甘いノスタルジーが融合した映画らしい作品でした・・。ラストがまた切ない。 当時から評価の高い今も青春映画のスタンダードな作品なのですが一方で当時ほとんど新人である主演ふたりの演技が揶揄されたという点も留意すべき点だと思います。 原作者の筒井康隆による「シナリオ 時をかける少女」(映画のシナリオではない。小説である)は 現実に侵食される虚構を描いた作品で校内暴力の横行する現実の学園と映画の虚構が同時に存在する世界で、台詞棒読みの演技を続ける芳山和子(原田知世と明言されてはいない)たちが現実の不良たちににののしられ果ては暴行される様を描いています。 その最後の台詞が映画のコピーでもある「(こんな世界はもう嫌。)もうすぐ知世は未来にいきます」だったりします。今考えると全く凄い小説だなあ・・・。 「時をかける少女」は後にもテレビや映画で映像化されています。 特に印象的なのは内田有紀が主演したテレビシリーズでしょうか。かってはディレクターズカットの総集編がビデオで出ていましたが今はどうなんでしょう・・。 そして2006年アニメ版の「時をかける少女」が公開中です。 活発な主人公によるコメディ色の強い作品に仕上がっているようですが83年の映画版の持ってい たメンタリズムがうまくうけつがれているような気がします・・。

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