サンダーマスクが2段変身する理由
「サンダー2段変身」はサンダーマスクが一度等身大に変身してそれから再び巨大化する、という変身方法である。 二段階の変身というと『イナズマン』のサナギマン→イナズマンのような姿かたちが異なるものが思い浮かぶが等身大と40mへの2段階の変身というのは何故設定されたのであろうか。 当時の『TVガイド』に掲載された日本テレビ側の森田義一プロデューサーの発言を読むとその理由がよくわかる。 『サンダーマスク』が企画された当時は第二期怪獣ブームのまっ只中にあった。『スペクトルマン』、『帰ってきたウルトラマン』に始まった怪獣ブームは『仮面ライダー』の登場によって等身大ヒーローを中心とした「変身ブーム」へと変質しつつある。 森田の言葉によると「アッと驚くような奇抜なアイディア、奇妙奇天烈な怪獣、高等化した変身を考え出さなければしょぼくれた番組になってしまう」とある。 『サンダーマスク』の企画そのものは72年の3月に始まっている。「亜流でないこと」を合言葉にアイディアが練られ、例えば高速道路にタイヤを転がすという発想から奇抜なフォルムを持つタイヤーマが生まれるなどの試行錯誤が繰り返された。 二段変身は当時の特撮番組が巨大ヒーローから等身大ヒーローへのシフトしつつある状況から生まれたものである。 等身大ヒーローと巨大ヒーローの問題点を森田は以下のように分析している。 1.「等身大だとスピード感はあるが迫力に欠ける」2.「巨大化すると迫力はあってもスピード感に乏しい」 『仮面ライダー』には路線変更でライダーが巨大化する話があったというのを聞いたことがあるがこの企画の時点で『仮面ライダー』は丁度2号編の終わりであり劇場版『仮面ライダー対ショッカー』がヒットしている時期にあたる。 サンダーマスクは二段階の変身をすることで等身大のスピードあるアクションと巨大ヒーローの迫力を両立させようとした試行錯誤の中で生まれたものなのである。 そのような思惑からうまれた2段変身だが劇中では効果的に使われたのだろうか? 魔王デカンダという等身大の幹部やその分身を出すことで等身大→巨大化の流れは一応あったもののサンダーマスクはやはり巨大ヒーローの印象が強い(現在見られない話数ではどうなのだろう。第11話「魔獣たちの待ち伏せだ」などは等身大の魔獣が登場するので見せ場も多いようだが・・)。しかしながらこの二段変身の段階を追った流れは最終回のトカゲラス・デカンダ(と分身)→鉄人13号・ベムキングの後半Bパートだけで等身大怪人・巨大怪獣を合わせて4体倒す展開まで貫徹されているようにも見受けられる。 後半、デカンダの分身が戦闘員よろしく登場するのもこの設定を強化するためだったと思われる。 この2段変身の発想は間違っていたか、いなかったか。それは『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』を経て『スパイダーマン』を挟みつつ『バトルフィーバーJ』に始まる戦隊シリーズがその着眼点が正しかったことを証明しているのではないだろうか。スーパー戦隊シリーズが作品と玩具の商品展開において成功を収め2011年で35周年を迎える国内最大にして最長の特撮シリーズになったのは「等身大→巨大ロボ戦」という等身大特撮と巨大特撮の融合なしでは成立しなかった。『サンダーマスク』の目論みが早すぎた挑戦だったと思われて残念でならない。何故か大量に販売されたサンダーマスクの大小様々なパチモノソフビやグッズ展開、それに反して秀逸なデザインでありながら一切発売されなかった魔獣たちのソフビ、という商品展開も含めて。