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お空のあいちゃん

お空のあいちゃん

おさんぽ

着替えが終わると、私と主人は中庭で待っているようにと言われました。“簡単な処置をして、あいちゃんを連れて行きますから。” と先生はいいました。 私と主人は中庭であいちゃんが来るのを待ちました。 先生に抱かれて、あの男性の看護師さんに付き添われて、あいちゃんは中庭に来ました。 機械は1つもつけていませんでした。 足に1個所、薬をいれるための管がついているだけでした、口からはあのずっとついていたチューブもとられていました。

あいちゃんはしゃっくりをしていました。 かわいい声をだしながら、しゃっくりをしました。先生は“これはよくある事で、苦しいわけではないので、心配しないでくださいね。”といって主人にあいちゃんをわたしました。 中庭には看護師さんだけのこりました。15分に1回、あいちゃんの心音を確認するためでした。私と主人は交代で、あいちゃんを抱っこしながら、写真をとりました。

もう、外は真っ暗になっていました。サンディエゴ冬は暖かいといっても夜はひんやりしていました。 主人はあいちゃんを抱きながら、一生懸命話し掛けていました。“あいちゃん、あれが、お星様だよ。 きれいだね。それから、あのまあるいのがお月様だよ。” “ほら、これがお花だよ。いろんないろがあるよ。かわいいね。” 私はそんな主人の姿をベンチにすわって眺めていました。となりには看護師さんが座っていてくれました。 ぼーっと主人の姿をみている私に看護師さんは、“1つ、覚えておいてほしいのは、あの子が亡くなるのは、あなたたちのせいではないということです。ぜったいに自分をせめたりしないですださく。” と言いました。 私は、うなずきながら“ありがとう”と言う事しかできませんでした。

主人が中庭を一周すると、今度は私があいちゃんを抱っこして歩きました。 私はあいちゃんのほっぺに、噴水の水をつけました。 “あいちゃん、お水だよ。つめたいでしょ? お水はね、つめたいんだよ。” それから、子守り歌を歌ってあげようと思ったけれど、どうしても声が途切れてしまって、最後まで歌う事はできませんでした。

小さな男の子が、お母さんとお父さんにつれられて、中庭を通りました。男の子は無邪気に笑って、“ママ、パパ、あかちゃんだよ。かわいいね”とあいちゃんをみて言いました。

あいちゃんはお空に行く前の数時間を星空の下ですごしました。いつまでも、この時間が続けばいいのに、と私は思っていました。




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