テーマ:詩&物語の或る風景(1046)
カテゴリ:生活
神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入る事侍りしに、遥かなる苔の細道を踏み分けて、心ぼそく住みなしたる庵あり。 木の葉に埋もるる懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし。 閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに、住む人のあればなるべし。 かくてもあられけるよとあはれに見るほどに、かなたの庭に、大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、この木なからましかばと覚えしか。 <意訳> 神無月の頃に、ある山里を訪れる事があった。 その途中で栗栖野というところを通りかかると、長い苔の細道が踏み分けられその奥にはひっそりとした佇まいの庵がある。 木の葉に埋まる懸け樋の水音だけ、何の音もしない。 仏さまに供物をささげる閼伽棚には、菊や紅葉が折り散らされ供えられている。 さすがに住む人があるからなのだろう。 こんな生活もあるのだなと哀れを感じて見ていると、むこうの庭に枝もたわわに実る大きなミカンの木があった。 その木の周りをミカンを盗られまいときびしく柵で囲っている。 少し興ざめして、こんな木はない方がましかなと思った。 ・・・・・・・・・・・・ 10月10日の夜から12日まで、友人Y子と一緒に、山里に住んでいるH子を訪ねた。 クネクネとした細い地道を踏み分けた奥にH子の家はあった。 家の前には、ミズヒキソウが咲き乱れ、物音ひとつしない。 街灯もない真っ暗な闇の世界・・・。 こんな生活もあるのだなと思って感心した。 家の中に入って、がっかり。 モノがいっぱい。 モノがなければなと思った。 +++ 私たちはどこに住んでもモノから開放されないのかと思った。 でも楽しい2泊3日の旅でした。(^-^) H子、Y子、ありがとう。 ・・・・・・・・・・・・・ ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。 ★10月13日*ごめんね、母さん・・・祭のごちそう *UP お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.10.13 22:00:51
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