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古くから日本人に愛された望郷歌、若々しい匂いやかな恋歌、機才・頓智が人気の歌、四季の風趣を愛で静かな情感をたたえた歌ーー。 王朝びとの風流と和歌のみやびを心ゆくまで堪能できる百人一首。 私たち、現代人にも通じる感懐をうまくすくいあげ、千年を歌い継がれてきた魅力の本質を、ユーモラスに、そしてユニークに抽出した、楽しい百人一首入門。 岡田嘉夫の斬新なイラストが美しい、一大歌絵巻、保存版! 高校時代の古典の副読本を手元に置いて、(しかも2冊)時々、読んでいるので、 「百人一首」は、よく知っているつもりだった。 しかし、知らないことだらけだった。 改めて、田辺聖子の知識のすごさに感心した。 ■田辺聖子の小倉百人一首(続)■を読んで、知ったことを★箇条書きに。 ★三船の才 ある時、藤原道長が大堰川で遊んだとき、漢詩の船、音楽の船、和歌の船と分けて、それぞれの道にすぐれた人を乗せた。 大納言公任(だいなごんきんとう)は、どれにもすぐれていたので、道長は 「どの船にお乗りになられるか」と聞いたという。 そう聞かれるだけでも身の栄誉であろう。 公任は、 「では、和歌の船にしますかな」といってそこで歌を詠んだ。 みんなが褒めると、 「いや~、漢詩の船にすればよかった、そしてこのくらいの詩を作っていれば、名声がいっそう上がったろうに。 惜しいことをした」と言ったという。 また、紫式部の勤める御殿で 「このあたりに若紫はいらっしゃいませんか」と声をかけられたと 紫式部が日記に書いている。 「あんたの小説、読ませてもらってまっせ」的なおべっかの匂う言い方だ。 紫式部は、 「光源氏の君もいないのに、紫の上がいるわけがないじゃないの」と思ったという。 ●55番 滝の音は たえて久しくなりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ 大納言公任(だいなごん きんとう) ●71番 夕されば 門田(かどた)の稲葉おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く 大納言経信(だいなごんつねのぶ) この人も、「三船の才」と言われた。 船が岸を離れてから、やってきて、 「どの船に乗りますか」と聞かれたいがために、船の時間に遅れてきたと皮肉っている。 ★「源氏物語」の影響。 ●78番 淡路島 かよふ千鳥の なく声に 幾夜寝ざめぬ 須磨の関守 源野兼昌(みなもとのかねまさ) 「源氏物語 須磨の巻」で光源氏は口ずさむ。 「友千鳥 もろ声に鳴く 暁は ひとり寝ざめの 床もたのしも」 群れをなして飛ぶ千鳥が、声を合わせて鳴く。 それを聞けば、夜あけひとり目覚めた私も心丈夫に思われる。 兼昌は、こういう背景を得て、「淡路島」の歌を作ったのであろう。 ●64番 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木(あじろぎ) 権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより) この歌はたぶん「源氏物語」の宇治十帖の世界を暗示しているのであろう。 この人の父親は、55番の公任で、 「このあたりに若紫はいらっしゃいませんか」と声をかけた人。 ならば、子どもの定頼も「源氏物語」を読んでいたはずだ。 ★藤原定家の父 ●83番 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる 皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうだいぶしゅんぜい) 定家は、父の歌の中から、これを選んだ。 定家の父は、王朝末期歌壇の大御所。 定家、寂蓮(じゃくれん)、良経(よしつね)、式子内親王といった新古今調の旗手たちを指導育成した。 ★歌の順番 ●1番 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ 天智天皇 ●2番 春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 持統天皇 ●99番 人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は 後鳥羽院 ●100番 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり 順徳院 1番と2番、99番と100番は、共に親子。 ■意味はここ■ ■田辺聖子の小倉百人一首(上)■ にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.01.04 00:03:24
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