『ローマ人の物語』を読んだ感想
塩野七生著の『ローマ人の物語』を1~7巻まで読んだ。古代ローマ社会では、貴族、平民、奴隷の3階級がある。奴隷というと聞こえが悪いが、征服国の民であり、市民権がないだけで、能力のある人は平民より遙かに高給取りであったりするらしい。平民階級であっても戦場で活躍すれば、元老院に列せられて貴族階級に入ることも可能である。ただ、社会が成熟すると身分が固定化し、さらに身分格差が広がる。その格差が広がると社会の不安定さを増し、とうとう崩壊する・・後半部分はまだ出版されていないが、歴史の事実はそれを物語っている。これを読んでいて、ふと、我が社のことを思った。古代社会も近現代社会も社会のしくみには大差が無いように思えてならない。我が社も設立当初、某官庁の偉いさんが役員として組織を立ち上げた。彼らはその後、人が変わったとしても、仲間が今も天下りの理事として、組織に君臨している。一般職員、いわゆる正職員が組織の成長と共に採用されて増えた。ローマ社会で平民階級に当たる層である。平民階級間での給与差は当初、ほとんど無かった(同一年齢同一賃金)が、最近、能力給だ、年俸制だとしきりに格差を付けたがっている。最後に、奴隷階級に相当するのが、派遣職員である。彼らは、仕事の内容に応じて派遣会社から派遣されてくるのだか、人事権をはじめ、仕事の計画に対する決定権を一切持っていない。その上、成果を生み出したとしてもそれはその派遣職員に指示を出した一般職員の成果として扱われる。雇用期間が6ヶ月の更新で、使用者が気に食わないと簡単に契約を打ち切る。労働基準法の枠外だから言葉が悪いが首のすげ替えも問題にならない。僕の妹は、30歳前後で正社員をやめて派遣社員として8年近く働いたが、40歳を前にして給料は安いが、やっぱり正社員に復帰した。やはり長く働くためには、それなりの身分を確保した方が正解のようだ。